主人公
「おーい!」
「全部、分かってるんだぞ!」
大声で、叫ぶ。
周りは何もない。
真っ白だ。壁も、天井もない。
「分かっているんだ。そこに居るんだろう!?」
「おーい!」
大声で、叫ぶ。
「おーい!」
大声で、叫ぶ。
「おや、もうあのお話を”演じ終わった”のか。」
モニターを通じて、それを監視していた男がつぶやく。
「お話がないときだけ、正気に戻るってなんか哀れっすね。」
横に座って一緒に監視していた別の男が話しかける。
「ああでもしなきゃ、俺らが巻き込まれるんだ。ようやく記憶をなくさせて、ここに閉じ込めたんだから。」
「”現実を改変できる超能力者”でも、こんな状態じゃあ何も出来無いっすね。」
「無駄話は止めだ。早く、次の”お話”を入れろ。」
「分かりました。にしても良く考えたっすよね。」
「何をだ?」
「今ある”お話”には限りがある、だから”お話”を集める投稿サイトを作るなんて。」
「まあ、お偉いさんの考えなんてわからんさ。ただ、お話を全て演じきったとき、”あれ”がどうなるか見物だけどな。」
「見た目も年齢も性別も人種も、全て”お話”次第すっからね。」
「しかも”あれ”は、周りの人間も建物も好きに出せるときたもんだ。」
「とりあえず、次はこれっすかね?」
「冒険ファンタジー?お前このジャンルが好きだな。」
えへへ、と頭を掻くと、”あれ”にお話を投入する。
今日もまた彼、彼女、あるいはあれは演じ続ける。
終末の日が訪れるか、あるいは全ての”お話”を演じ終わるまで。