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ゾンビは嗤う  作者: アークアリス
第1章 動き出した理不尽
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#005 人とはそういう生き物

某ポケットにモンスターを入れて使役しよう!系ゲームに登場する、常に動き回る系キャラをご存じだろうか?


やたらと警戒心が強く、そのくせモンスター除けの薬が効かないという、あいつだ。

どれほど警戒心が強いかと言うと、どれだけ離れていてもこちらが自転車に乗るだけで逃げだす。

オオクワガタもびっくりの警戒心である。


しかしながら、それらのキャラはあまり強くない。そしてすぐ逃げだす。


こういうキャラは得てしてレアなことが多く、捕獲に圧倒的な時間を要するものだ。


それに対して、常に定位置にデンっと鎮座している系モンスターも存在する。

所謂ボスだ。

食事や排せつ、その他諸々の生理現象はどう対処しているのだろうかと不思議になる、あのキャラ達のことだ。


これらは基本的に強い。

脳筋のように鍛錬に次ぐ鍛錬によって準備万端の者にとっては多少歯ごたえのある糧程度にしか思われない、あのキャラ達ではあるが、もう一度言うが基本的に強い。

敵対的に遭遇すると逃げられないのも特徴のうちの一つだ。


中には特定条件を満たした勝ち方をすると「俺との戦いは何だったんだ!」と叫びたくなる程の苛烈な攻撃で他のボスを駆逐するようなものも存在するが、そういうものの条件はかなりきつめなのが定番だ。


そして今から紹介する彼はその三種類のキャラが融合したような存在、そう、(死皇帝)である。


・やたらと動く

・裏ボス級の強さ&逃げれない

・イライラさせたら条件クリア&鉾の向きは自分


もしこのようなキャラがゲーム中に出現すればすぐさまそのゲームを叩き割る自身だけはある。


そしてそんな(死皇帝)は現在、禁忌の森(タブー・フォルスト)中央に我が物顔で鎮座している精霊王の墓石の前に立っている。


と言っても、おそらく狂った精霊王の亡霊クレイジー・キング・ファントムは無理やり出てきたようで、その墓石は斜め45度に傾いている。


墓石自体にも聖なる力が込められているようで、狂った精霊王の亡霊クレイジー・キング・ファントムが出てきたであろう穴の先からも聖なる力を感じられる。

よくこんな場所でアンデッドに成れたものだと、今は亡き狂った精霊王の亡霊クレイジー・キング・ファントムに敬意を表し、その墓石を空間魔法で作った収納空間に収納した。


敢えて言う必要もないが、現在収納空間には「ギルドカード、魔力計測オーブ、狂った精霊王の亡霊クレイジー・キング・ファントムの聖骸布、精霊王(ケーニヒ・ガイスト)の墓石、金貨の詰まった革袋×3」が収納されている。


穴の先を覘いてみるも特に何もないようなので(死皇帝)は転移魔法で禁忌の森(タブー・フォルスト)の外へ転移した。


先ほど説明した通り彼は動き回る。

して、それは何故か?

答えは各地の希少品を収集するためだ。


今回(死皇帝)禁忌の森(タブー・フォルスト)を訪れたのも、ここに精霊王(ケーニヒ・ガイスト)の墓があると聞いて、何か希少品の一つでもあるだろうと推測したからだ。


情報を集めるには人里に降りなくてはならない。魔物に聞いたところでまともな返事は期待できないからだ。

その事実に(死皇帝)は死んだ目をさらに死なせた。


(死皇帝)は静寂を好むため、人が多く騒がしい都市に合っていないことは前回の辺境訪問で身に染みていたが、しょうがない。

(死皇帝)は再び辺境の都市ヴォルステッドディアーヌ内へと転移した。


現在時刻午前2時。

先日訪れた際は朝だったため洪水のように人が溢れていたが、さすがに深夜に動き回る者は限られているようで、まばらにしか人はいなかった。


だが、(死皇帝)がここへやって来た目的は希少品の情報収集であり、それには人に聞かなければならない。

勿論そんなことはしなくても魔法で記憶を喰らえばそれで解決するかもしれないが、人の街で廃人を作るのは無粋だろうと(死皇帝)は考えていた。


情報集めの定番といえば、酒場である。

性格には、大衆酒場だ。

そこに情報が集まっているだろうこてゃ頭では分かっているが、その足は重い。

騒がしい酒場と静寂を好む(死皇帝)との相性が悪いのは自明だ。


国会終了直前の議員の牛歩同然の速度で、月明りすら村雲に隠れた常闇の中を歩いていると、とある身なりのみすぼらしい男が駆け寄ってきた。


「旦那!旦那!例の情報、持って来やした!」


おそらく誰かの使いなのだろうが、もちろん(死皇帝)に心当たりはない。

かと言って、こちらに笑顔で紙を突き出す(誰かの使い)のことを無下にすることもないだろうと、(死皇帝)は何の気負いもせずにその紙片を受け取った。


「また贔屓にしてや!おおきに!」


そう言い残すと、その男は夜目が利くのか颯爽と駆けていった。


すぐ後に急に肩に手を掛けてくる(死皇帝)そっくりの服装をしたやばい雰囲気の男がいたが、(死皇帝)の肩に触れた瞬間塵と化して風に舞った。

(死皇帝)にとってはどうでもいいことではあるが、その男は実を言うとこの世界でも指折りの暗殺者で、(その暗殺者)が所属していた組織はその消失の知らせに大いに動揺するのだが、それはまた別の話。


ともかく、使いっ走りから情報を受け取るはずだった暗殺者はその実力差を見誤り、(死皇帝)の糧となったのである。


(凄腕暗殺者)の運の悪さを嗤いながら(死皇帝)は先ほど渡された紙片を見た。


・全身黒ずくめ

・得意魔法は転移魔法

・Sランク冒険者との情報多数

・名前不明

・カルボナーラを食べていたとの証言有り


まさしく(死皇帝)である。


まさか自分のことが調査対象になっているとは思ってもみなかった(死皇帝)であったが、そういうことを陰でやるのが人間であったと、今日もゾンビは嗤う。

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