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ゾンビは嗤う  作者: アークアリス
第1章 動き出した理不尽
12/29

#011 神もまた愚かなり

とある偉人はこう言った。


『I’m fond of essence thoroughly things.That way, because most good results.』


和訳すれば『私は物事をとことん突き詰めるのが好きなんだ。そうすれば、たいてい良い結果が出るから。』と言うそうだ。


そしてここに、数千年の時を生き残るためだけに費やした存在がいる。


そう、(死之神)だ。


只のゾンビから、一段階、二段階、三段階と進化を繰り返し、ついには最上位種で到達者である死皇帝ナインゼーレ・カイザーに至り、本来なら打ち止めであるにも拘らず、神を吸収することによってさらに上位存在である死之神(アザトース)へと上り詰めた存在、それが(死之神)だ。


本来ゾンビに意思と呼べるようなものは無く、只々生者を憎むという呪いのような本能に従って彷徨う存在なのだが、基本的に魔物は上位格ほど知能が高いのが常であり、(死之神)も例に漏れず人並み以上の思考力を獲得している。


そればかりか、元が人間のゾンビであったため、死皇帝(ナインゼーレ・カイザー)になった時点で生前の記憶を朧気に思い出しており、死之神(アザトース)に至った時にはすべてを完全に思い出すこととなった。


と言っても、数千年に及ぶゾンビ生に変化を与えるほどのことでは無かったようで、人間視点の倫理観を理解するに至っても共感はできなかったようだが。


ともかく、そのような存在が現在、神に狙われている(・・・・・・・・)


理由は簡単、運命の女神(馬鹿)を吸収したためだ。


天空の上の宇宙の更に上から重々しい声で(死之神)に呼び掛け、ないし通達を行う者がいる。

運命の女神(馬鹿)と恋仲であった英雄神(ヘルトン・ゴット)だ。


基本的に天界産の神は下界に手心を加えることは無いが、今回は例外であるようで、宇宙の上に開かれた下界と天界を繋ぐ(ゲート)から仮の肉体に自身の意識を憑依させた神々が飛び出す。


運命の女神(馬鹿)が吸収されたことから神自身の肉体で相対するのは危険だという判断の下採られた策であったが、少しでも繋がりが有ればそこから遡って吸収するといった芸当も(死之神)には可能なのであまり意味は無かったりする。


「…「いざ、神罰を受けよ!!!」…」


数十人の神々による一斉攻撃が彼に降り注ぐ。

その光景は、さながら大量の流星が一か所に堕ちていく様な幻想的な雰囲気で、世界各地でその記録が撮られている。


惜しむらくはその全てが神力の塊であり、物理的攻撃が一切含まれていなかったことだ。

攻撃地点は盛大に削れ、深さ3000メートル、直径12000メートルのクレーターのように大地が変化させられるほど攻撃であったが、神々は一つ失念していたことがあった。


(死之神)の特技は吸収』であるということだ。


カモフラージュのため幾つかの攻撃は避けて大爆発を起こさせ、そのときに発生した砂煙に紛れてその他の攻性神力魔法をエナジードレインの魔法で吸収しながら神罰が終わるのを待っていた(死之神)であったが、思いのほか神罰が長く、吸収作業に飽きてしまった(死之神)は隠密魔法と転移魔法を同時行使して神々の眼差しから逃れた。


基本的に格下相手に戦うことは厭わない(死之神)ではあるが、神という同格以上の相手と暢気にやりあうほど馬鹿では無かった。


それからも数時間攻撃が続けられていたが、もう満足したのか少しづつ神の数は減っていき、最後まで攻撃を続けていた英雄神(ヘルトン・ゴット)も最後には(ゲート)から天界へ戻っていった。


この時、自分たちの力を過信せず(死之王)の死体(?)を確認していれば、既に逃げ去っていると気づけたかもしれない。


仮に逃げ去ったことに気が付いても、攻撃を吸収していたことに気が付かなければ、これで多少は懲りただろうと誤認識して去っていったかもしれないが。


確かに神々の攻撃は苛烈で、普通ならば転移する余裕を相手に与えるようなものでは無いが、(死之神)も神の端くれであり、魔物(ゾンビ)生まれと侮ったのだろう。


ともかく、(死之神)は様々な天界生まれの神々からの攻撃をやり過ごし、今に至る。


で、今(死之神)が何をしているかと言うと、天界の中でも神々が住まう天上界の端に腕一本が通る程の小さな(ゲート)を開いて、自身の腕を突っ込み、天上界に存在する膨大な神力をお馴染エナジードレインの魔法で吸収していた。


下界産の神など想定されておらず、天界から(ゲート)を開くならともかく下界から(ゲート)を開かれることなどつゆにも思っていない神々は、急に減り出した神力についてあれやこれやと悩んでいたが、ついに自身の持つ神力と、天上界中央に聳え立つ巨樹から生産される神力を除いて、一切に神力が天界から姿を消した。


魔物から進化して神となった(死之神)は例え神力を失ったとしても魔力さえあれば存在を維持できるが、天界産の神々は神力を失うとその存在も失うこととなる。

また、神は存在することにも神力((死之神)の場合は魔力で代用可)を用いるため、徐々にその身に内包する神力も無くなりつつあった。


自身の消失に危機感を覚えた神々は次々と下界へ降りて来た。

人間の信仰を得ると神力を体内で生産することが出来るようになり、信仰の規模が拡大すればするほど多くの神力を生産できる。


下界へ降りても信仰を得る算段が付かない者は神力を生み出す巨樹に張り付いて生活を始めた。


優雅に暮らしていたかつての面影はすっかり鳴りを潜め、誰もが生きるのに必死だった。


だから、気づかなかった。


天界の下層部から段々と死の香りが漂ってきたことに。


天上界中央の巨樹に張り付いて生活していた神々がその異常に気が付いた時にはすでに手遅れで、もはや彼ら(巨樹に張り付く神)以外に生ある者は天界にただ一人、(死之神)だけであった。


「きっ、貴様は!なぜここにいる!!」

「神罰を受けて消滅したはずだろう!!!」

「お、おい!下層の気配がないぞ!!貴様何をした!」


巨樹に張り付き顔だけを向けて罵る神々は(死之神)には滑稽に映った。


攻撃に使えるほどの神力を持つ神は既にここには存在せず、(死之神)にとって脅威となり得る存在は既に天上界にはいなかった。


神の存在は知っていても天界、および天上界の存在までは知らない(死之神)であったが、愚かにも攻撃を仕掛けたことによりその存在を知る運びとなり、不毛の地と変わるのに1か月と掛からなかった。


藪をつついて蛇を出すとはまさにこう言うことである。


残らず分解され、巨樹さえ失われた(収拾された)天界にもはや神を生み出す余裕など有るはずもなく、残りの神は(死之神)と地上で信仰を得た神のみとなった。


『吸収』というゾンビの特性を存分に活かし、天界に存在した膨大な神力を残らず吸い尽くした(死之神)は、その存在を更に昇華させ、死理神(アザトース)となり、崩理の権能(理を崩す力)を得て、もはや単体で(死理神)と渡り合えるものはこの世界からは消え失せてしまった。


権能が増えたということで今までに得た権能と一緒に少し説明を。


・嫉妬の権能―嫉妬した対象種族からの全攻性干渉無効化(同格以下に有効・同時複数種

       族指定不可)

・運命の権能―任意の対象に運命を与える(イメージが強固なほど効果大)

・生死の権能―生ある者から生を奪い、生無き者に生を与える(生奪は同格以下に有効)

・崩理の権能―理を崩し、生死・運命の権能との同時行使により理の創造・覆滅・復元

       が可能(New!)


常に死んだ目ながらも満足げな表情で、(死理神)はフラフラとこの世界を彷徨う。


神すら弱肉強食からは逃れられない殺伐としたこの世界で、今日もゾンビは嗤う。

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