夜の鈴虫
窓を開け、網戸にする。
モトカノにもらった黒い灰皿と煙草とライターをかきあつめ、一服。
たちまちうなる空気清浄機のファンの音にノートパソコンのそれはかき消され
かすかに聞きこえる鈴虫の声。
ホットにすればよかったと、アイスコーヒーをちびちび飲みながら
あのときのほっとな気持ちを思い出す。
そして途端に悲しくなった自分の心と鈴虫の声。
「さて寝るか」
明かりを消し、布団をかぶり、目を閉じる。
相変わらずうなり続けるファンの音を鬱陶しく感じながら
明日の自分を考える。
しかし思い浮かぶのは過去の自分。
「そういえばちょうどこの頃か」
煙草の煙を吸い尽くし、おとなしくなった空気清浄機に満足し
心を無にする。
響く鈴虫の声。
私の心を波立てる。