プロローグ〜『約束』〜
かなりの長編です。読んでくださったかたは、出来れば最後までお付き合いください。感想心待ちにしております。
結ばれた指
交わされた『約束』
それは遠い昔の想い出……
プロローグ〜『約束』〜
《いつか想う約束》
†
『ぜったい、ぜったいだよ!』
『あ〜もうっ!わかったよ!!』
あまりのしつこさに、根負けして首を縦に振る……フリをしていただけで、心の中ではすごく嬉しかったんだ。
『ホント?ぜったいのぜったい!?私のこと忘れないよね?ぜったい迎えにきてね……私、待ってるから。ずっと、ず〜っと……ヒック』
『なっ、泣くなよう……』
『じゃあっ……ゆびきり、しよ?破ったらはりせんぼんなんかじゃ許してあげないんだから!』
いつもは気の小さいこいつが、こんなに必死だったのは初めてだった。
ホントは喜んでくれるならそれくらいいくらでもしてあげたかった。
―だけど恥ずかしくて、素直にはなれなくて……。
『ゆっ、ゆびきりぃ〜?そんなの出来るかよっ、ガキじゃあるまいし!』
言いながら、横目でチラッと覗いてみる。
すると、案の定両の目を涙でいっぱいにして……でも泣いてはいなかった。
最後は笑顔で
こいつなりの意地のようだ。
『う゛〜っ……ヒック』
必死に堪えている……。
はぁ〜……俺は本っ当にこいつの泣き顔に弱いなぁと思いつつ……
『ホラっ!』
―『えっ……』
そっぽを向いたまま、左手をつきだしてやる。
『するんだろ?ゆびきり……』
じ〜っと突き出された左手をみつめて、次の瞬間には……
『うんっ!』
泣き顔が笑顔に変わった
ゆ〜びきりげんまん♪
うそついたら
はりせんぼんの〜ますっ♪
(ゆびきった!)
―ここから、すべてが始まったんだ……。
そして……懐かしいハズの島に帰ってきた夏、物語は再び加速し始める。
静かに、だけど確実に……。
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〜雪君島〜
7年前に俺達家族が離れた島だ。
いや、正確には離れざるを得なかったというべきか……。
雪君島という所は、は名前に反して雪なんか一切降らない年中夏のような島で、島と言うよりは一つの大きな山が大半を占めている……らしい。
らしい、と言うのは今の俺には島に居たころの記憶がすっかり抜けてしまっているからだ……。
当時島は活火山であったが、噴火の恐れなど毛ほどもなかった。
……が、俺達家族が親父仕事の関係で島から離れる前日に
― 雪君島は、噴火した
まさに寝耳に水。
何の対策も非難ルートの確保もされていなかったうえに、噴火自体も記録に残るほどの規模で、被害は凄まじいものとなった。
俺達一家は島を離れる準備をいていたため、難を逃れることが出来た。
俺と、親父だけ……
母さんと妹の夏奈は……俺と父さんの目の前で流れ来る溶岩の中に飲まれていった。
記憶を失くした今も、肝心のこの瞬間だけは消しきれていない。
薄ぼんやりと、今だにあの時の景色が夢に出てきたりする。
離島を終えたあとの俺は、それはひどいものだった……。
10歳の子共にとって、肉親が目の前で……しかも二人も死ぬと言うことはとても耐えられるものではなかった。
―記憶を誤魔化さないと、生きていけない程に。
国からの支援を受けながら、ほとんど廃人のような俺を親父は男手一つで育ててくれた。
だけど 愛する妻、娘を失ったのは親父も一緒。
そんな、肉体的にも精神的にも限界だった時、父を支えてくれたのが雪路さんだった。
その後二人は結婚して今に至る。
当時は恥ずかしくて『母さん』なんて呼べなかったけど、今ではお袋呼ばわりである。
そして、それまで光りを失っていた俺を、ここまで元気にしてくれたのは再婚と同時に出来た二つ下の妹、桐子だった……。
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