Raison d'etre
乾いた大地の上に、私は立っている。
あの人が愛した景色の面影はもう無いのだと分かる此処に、私は帰ってきたのだ。
目の前に立つのは、乾いた大地で唯一命を育めるであろうオアシスを独占するように建てられた白い塔。
中にいるのは、何も知らない無垢な王。
わかってる。
あの人が愛した大地を枯らしたのは、王でないことくらい。
あの王は、無垢すぎて周囲の言葉を素直に信じてしまっているだけ。
だけど……
無知は言い訳にならない
失われた命は多すぎて
帰りたいと願って落とされた涙が多すぎて
祈りに捧げられた時間は長すぎて
後戻りはもうできない
この身一つで何ができると問われれば、きっと無いに等しいだろう。
これは、きっと蛮行だろう。
それでも……
私はこの道を選んだ。
あの人が愛した大地を
あの人が命をかけて守ろうとした場所を
私は命をかけて取り戻す
それが私のRaison d'etre
誰かは言うだろう「間違っている」と。
偽善に塗れたその手を私に差し伸べ、涙に見える雫を落として言うのだろう「生きろ」と。
けれど、それは、私にとってなんの意味もない。
だって、あの人がいない今、この世界に未練なんて無い私にとって――
これは「間違いではない」のだから……