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「すみません、先輩」
「え、ん?何が?」
微笑ましい光景に見とれていた私を、宮君が突然現実に引き戻す。
「本当はあんなやつじゃなくて…もっと優しいやつなんです」
「大丈夫、宮君が連れてきた子だもん、わかってるよ」
「先輩…」
それにあの態度の理由もわかってるし。
宮君はここに入らずとも恋愛という青春を送ることができるのでは…ふとそう思った。
「さーてと、帰るか!」
「え?!もう帰るんですか?」
「だってやることないし?なんかある?」
「う…いや、ないですけど…」
私は私が楽しいと思うことをして、それを青春と勝手に名付けた。
ただそれだけを定義とした部に、主な活動なんてあるわけがなかった。
「いや、やっぱりあります!」
「おっ、と…?」
帰ろうと扉に手をかけた時、宮君はそう断言した。
「いやいや、無いでしょ」
失笑気味に私が宮君の方を振り向くと、宮君の目はキラキラと輝いていた。
「青春ポストを設置しませんか?」