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マリアノツルギ  作者: 由岐
7章 灼熱の国
92/118

2.砂漠の都の変態

 少し癖のある白い髪の毛先は、薄い紫色をしている。俺達の前に現れたその男が言うには、彼はこのサマディーゾの女王様の夫なのだという。

 そんな人が何故平然と街中を出歩いているのかとか、何故建物と建物の間という狭い場所に居たのかとか、気になることは幾つもある。


(普通の若者にしか見えないよなぁ。言葉遣いも砕けてるし、いまいち信用出来ない……)


 今までスプラエンとウィントハーレン、そしてフォレイヤの国王様に会ってきた俺としては、こんな怪しい人を王族だとはとてもじゃないが信じられなかった。


「キミ、見た感じただのマスターって雰囲気じゃないんだよねェ」


 ただ、この人から王族の気品みたいなものは全く感じられないのだけれど、不思議と華がある、存在感のある男性だとは思った。


「おっぱい大きい美人なコと、育ちの良さそうな美少女でしょー? それにそっちの金髪エルフちゃんもおっぱいあるねェ! ハーレム羨ましー!!」


 彼の発言に、俺もアキレア達も凍り付いた。

 前言撤回。この人に華なんて優雅なものはありませんでした。


「あー大丈夫大丈夫! キミのおっぱいも両手にジャストフィットするはずだから問題無いよー!」

「……バッ、バカ言ってんじゃないわよ!!」

「は、破廉恥です! 女性に向かってその発言はどうかと思います……!」

「最っ低! ショウくんこの人に近付きすぎないで! 変態が移っちゃう!」

「お、おぉ……」


 ラネールを筆頭に、皆が俺を庇うように彼の前に立ち塞がった。

 いや、彼の言ってる事は間違ってはいないと思うんだ。彼女達はそれぞれ魅力的だと思う。思うんだけど、そういう話を女の子が居る目の前でするのはどうかと思うんだ……。


「おー、息の合った連携でマスターを防御か。やっぱキミ達、今巷で噂のフリッグマスター御一行だね?」

「それがどうしたって言うのよ!」

「君みたいな変態に用は無いの!」

「わたし達に関わらないで下さい!」


 アキレアは街中だというのに斧を構え、リーオとラネールも魔法を発動する準備を整えている。

 それでも彼は余裕のままで、ペロッと舌を出して笑っていた。


「ごめんごめーん! オレ、よく王宮の色んな人から調子に乗り過ぎだって怒られちゃうんだよねェ。昔っから、変態が服を脱いで歩いてるようなヤツだとか言われるし!」

「脱いでるのかよ! 露出狂だろそれ!」

「脱ぎ癖は確かにあったりするんだよなぁこれが!」

「やっぱりこの人変態さんです!」


 自分からどんどん信用を落として、こいつは一体何がしたいんだ。


「こんな人が王配殿下の筈がないわ!」

「いやー、それがホントに王配殿下なんだよねェ」

「嘘じゃないなら、女王様が可哀想だよ!」

「ラネールさんの仰る通りです! ですよね、ショウさん!」

「え、ま、まあな……」

「んー……そんなに疑うのォ? だったらオレを憲兵に突き出してみたら? それでオレが本物の不審者じゃないって証明してあげる!」


 そう言った彼は、大通りの方へ歩いていく。


「ほらほらァ! こっちに憲兵居るからついておいでー」


 その場を動かずにいた俺達に手招きしている彼。


(あんなバカっぽい人が、まさかな……)


 自分は不審者ではないと言い張る彼が、自ら憲兵の元へ行くと言う。ならば彼の身元をはっきりさせた方がスッキリ出来る。

 俺達も彼が向かう先へついて行くと、確かに街を見守る憲兵の一人が巡回していた。


「やっほー! 今日も元気にお仕事ご苦労様ー!」


 彼がそう声を掛けると、彼の顔を見た憲兵の顔色が一変した。


「ぜ、ゼラ様!? また王宮を抜け出したのですか!」

「あはっ、ごめーん」

「急ぎお戻り下さい! フリード様が心配なさっているでしょうに……」


(え、本当にあの人偉い人だったの?)


「いつもならもうちょっと都をぶらぶらしたいところなんだけど……今日はお客さんを連れて来てるから、真っ直ぐ帰るね!」

「お客様ですと?」

「あそこに居る4名様ー! なんとフリッグマスター御一行だよォ?」

「な、何ですと!?」


 憲兵さんはかなり驚いている。


「じゃ今日はこの辺で帰るからー。引き続きお仕事頑張ってね」

「は、はい! お気を付けてお帰り下さい!」


 ピシリと敬礼する憲兵さんに見送られ、俺達はドヤ顏で振り返るゼラと呼ばれた男性に渋々ついていった。


「うわぁ……!」


 目の前にそびえ立つ、エキゾチックな外観の宮殿に圧倒される。

 砂漠の国に相応しい、インドのタージ・マハルのような美しいその姿。屋根は朱雀を象徴する赤い石、その他は真っ白な大理石で建てられているのだろうか。計算された美が、確かにそこにあった。


「ここがオレ、ゼラ・アルジーリャ・サマディーゾが暮らす朱夏(しゅか)王宮。さ、外暑いから早く中へどーぞ?」


 王宮を警備する兵士達は、ゼラの姿を見付けると先程会った憲兵さんのように、きちんと彼を出迎えている。


「……本当に王配殿下だったのね」

「オレ、嘘吐くようなタイプに見えるー?」


(見えるだろ!)


 思わず口に出してしまいそうだったが、彼が本当にこの国の要人だと判明した今、これ以上失礼な事は言えない。

 ゼラは、俺達を女王様に会わせてくれるかもしれないのだから。



 

1話から91話まで、全て読み返し誤字脱字等を修正しました。


まりつるの連載を始めて1年過ぎて、今更タイトルが被っている話を見付けてしまいました......!

36話のタイトルを変更しました。何故こんなに気付くのが遅かったのか......。



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