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マリアノツルギ  作者: 由岐
1章 花香る国
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8.ギルド

 セロウズさんに案内されて、俺達はギルドへとやってきた。

 火事で焼けた町は木造の家が多かったが、この町は石造りの家が軒を連ねている。

 民家より大きめの扉を開けると、中は思っていたより落ち着いた雰囲気だった。


「もっと沢山人が居るかと思ってたんだけどな」


 いかついおっさんだらけで騒がしい場所なのかと思っていたけど、それ程人は居なかった。

 ちらほらとマスターとマリアらしき二人組が受付に並んでいたり、掲示板を眺めたりしていた。


「この町のギルドにはそんなに依頼が入ってこないからな。本格的にギルドで稼いでいこうって思う奴らは、もっとでかい街とか王都に集中してんだよ」

「それぞれの町にギルドがあるのか?」

「小さな村だと無いとこもあるネ。依頼をしたい時は、近くの町のギルドにお願いしてるのヨ」


 旅の途中で立ち寄った場所で依頼を受けて、貰った報酬で宿に泊まって次の町へ。装備を整えたかったら王都などで報酬の良い依頼を受けて金を貯める。

 そうして生活していくうちに、魔物の討伐などで戦闘経験を積んでいき邪神を倒す力を得ていくのだという。

 魔物は毎年蘇るから、冒険者達の仕事が無くなることは無い。

 だが、邪神を倒して魔物が復活しなくなったらどうするのだろうか。それまで冒険者生活をしていた人達は、どうやって暮らしていけば良いのだろう。

 魔物が居るお陰で生活出来る人が居る。魔物が居るせいで困っている人も居る。どうすればみんな魔物にもお金に困らず、安心して暮らしていけるのだろうか。

 セロウズさんとレベッカさんは、受付でグリフォン撃退クエストの完了報告をしに行った。


「アキレア。依頼を受けるにはどうすれば良いんだ?」

「受けたいの?」

「ああ。困ってる人が居るなら、ちょっとは手助けしてあげたいし。それに、金が無いと色々困るしさ」

「まあ……そうね。ギルドの依頼を受けるなら、まず掲示板からやりたい依頼を選ぶの」


 掲示板には二色の紙が数枚貼り出されていた。紙に書かれている文字は全く読めない。

 やはりここが異世界だからなのか。


「色分けされてるのは何か意味があるのか?」

「白はマリア無しと、第一段階の仮契約マスターが受けられる依頼で、青が第二段階の真契約マスターが受けられる依頼よ。あんたの場合、白と青の依頼が受けられるの」

「色によって依頼の難易度が違うってことか」

「そういうこと。セロウズさん達の場合は、白、青、緑の依頼が受けられるわ」


 それじゃあ、グリフォン撃退にセロウズさんとレベッカさんしか来なかったのは、この町に一人しか第三契約をしたマスターが居なかったからなのか。

 確かに、第二契約の俺とアキレアじゃグリフォンを足止めすることは出来ても追い払うまではいかなかった。

 俺が全く闘えないせいでもあるんだろうけど……。


「見て分かるとは思うけど、白は簡単な魔物の討伐や植物の採取依頼、青は少し手強い魔物討伐と荷物の配達。緑が強力な魔物の討伐や珍しい薬草の採取とかね。もう終わってるけど、緊急時には緑と同じくらい困難な、望めば誰でも受けられる赤のグリフォンの撃退依頼とかも入ってくるわ」

「赤まであるのか?」

「最近だと、国が兵力として一時的に冒険者を集める依頼も来るの。国からの依頼の場合、色は黄色にされてるわ」


(そうか。そういえばこの国は戦争の真っ最中なんだっけ)


 掲示板の反対側の壁に大きな地図が貼られているが、東側の一帯だけ他より色が濃く塗られている。

 多分ここは大陸の東にある国なんだな。


「ほら、ちゃんと説明してあげたんだから早く選びなさいよ。セロウズさん達を待たせてるんだから」


 もう報告は終わったらしく、セロウズさんはレベッカさんとテーブルでお茶を楽しんでいた。

 二人を待たせてはいけないと思いながらも、文字が読めないからどのクエストを選べば良いのかわからない。


「あ、依頼は同時に幾つも受けられるから。簡単な依頼一つじゃ大した額は貰えないわよ」


 これは幾つかクエストを選べという意味として受け取って良いのだろうか。

 とりあえず、白い依頼ならそんなに難しい仕事は無いだろうと思って適当に二つ選んでみた。

 アキレアは俺が選んだ紙を隣から覗き込む。ちょっと近寄っただけで髪からほのかにいい香りがする。


(……って、何考えてんだ変態か俺は!)


「ふぅん……どっちも採取依頼なのね。最初だしこの程度で良いんじゃない?」

「お、おう」


 どんな依頼を選んだのか全然わからなかったが、採取クエストなら多分簡単に出来るはずだ。


「じゃあ受付で依頼受諾の手続きをしましょ」


 受付の人に依頼を受けると伝えて、アキレアがさっと書類にサインをして手続きは終わった。結構あっさり終わるんだな。

 どうやら書類の書き込みはマリアがする決まりになっているらしい。他のマリアも書類に記入していた。

 文字が書けない俺にはありがたいルールだ。

 依頼受諾の証に、小さな二枚の金属プレートを渡された。これを受付に渡して、依頼の完了報告をすれば良いらしい。

 気が付いたらセロウズさん達のテーブルには、四人分の料理が並べられていた。


「待ってたぜ。もう昼時だし、飯食えよ。俺達のおごりだ」

「え、良いのか?」

「気にしないで食べてヨ! ギルドのご飯、安いのヨ~」


 ギルドでは安価で冒険者に料理を提供してくれるらしい。メニューはポトフとパンとチーズ。美味しそうだ。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


 今日の午後は早速クエストをしに行ってみようかな。



 

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