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マリアノツルギ  作者: 由岐
1章 花香る国
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7.邪神

 初めて出会ったマスターのセロウズさんと、そのマリアで奥さんのレベッカさんにグリフォンを追い払ってもらった俺達は、二人の案内で隣町にやってきた。

 セロウズさんは二十代後半、レベッカさんは前半ぐらいに見える。美男美女でお似合いのカップルだ。


「ショウ達が連れてきた町の人は、多分集会所に一時避難してるヨ」

「俺達はギルドにグリフォン撃退の報告をしに行かなきゃならないんだが……一緒に来てみるか?」

「ギルド?」

「主に民間人や町から寄せられる、魔物の討伐や植物の採取、配達なんかの任務を受けられる機関よ。任務を達成すればその仕事に見合った報酬が貰えるの」


 へぇー……この世界にもクエストを受けられるギルドがあるのか。まさしくゲームらしいシステムだな。


「俺達は旅をしながら、色んな町で任務を受けて資金を集めてんだ。マスターになるやつのほとんどがギルドに加盟してる冒険者なんだぜ」

「マスターとマリア、世界を旅する意味があるアル。そのためにはどうしてもお金が必要ネ」

「旅する意味って、もしかして世界を救うとかいうやつか?」


 昨日の夜、老人が俺に言っていた。アキレアと一緒に世界を救ってくれと。


「そうヨ。ワタシ達マリアとマスターの力で、悪い神様を倒す……それがワタシ達の使命なのヨ」

「神様を倒すって、そんなこと出来るのか!?」

「お前、ガチで世間知らずなのな……いや、こりゃ世間知らずってレベルじゃねーぞ?」

「だからさっき言ったでしょ」


 そりゃ違う世界の人間ですから。セロウズさんは苦笑いしていた。


「……じゃあ、歩きながらで良いか? ショウには色々と経験が必要みてーだし、ギルドに向かうついでに説明してやるよ」

「お願いします!」


 この世界には多くの神様が居て、何千年も前の時代にはマスターもマリアも、魔物すらも存在していなかったんだという。

 とある神と女神の間に生まれた神の子は、他をいたわり思いやる心が欠けていた。

 その名をディジオンと言い、彼が成長するにつれて特別な力が備わっていった。

 神でも人間でもない、不思議な力を持った生物を生み出す力。

 その力によって、まずエルフと呼ばれる者が誕生した。エルフは自然界に存在する力を操る力を授けられた。それが魔法だ。

 自分が生み出したエルフが人間と共に平和に生きる姿を見て、ディジオンは何とも言えない物足りなさを感じた。

 次に彼は魔物を生み出した。エルフには無い残酷さを持ち、本能のままに生き、時が満ちれば蘇る生物。

 魔物を世界に解き放った途端、人間とエルフは恐れ逃げ惑い、食い殺された。彼らは闘う術を知らなかったからだ。

 ディジオンはそれを見て悦んだ。もっと彼らがおののく様を見たい。そう思ったディジオンは、また新たな生物を生み出した。

 それはエルフのように魔法が使え、魔物のように残酷で、そして呪いの力を持った生き物だった。

 それは後に魔族と呼ばれるようになり、恐ろしい生物をつくり出したディジオンは邪神として恐れられるようになった。

 ディジオンの行いは神々の逆鱗に触れ、彼は天界と地上界の狭間に追放された。

 愛の女神フリッグは、地上に残された魔の者達、そして邪神ディジオンと闘う力を人間達に授けた。それがマスターとマリアの力だったのだ。

 男ならば誰でもマリアを従えることが出来るが、マリアはフリッグが選んだ者しかなることが許されない。さらに、フリッグマスターはマリアに選ばれるよりもなることが難しい存在である。

 マスターとマリアは、地上界に生きる者達の希望の光。邪神を討ち果たせば魔物に脅かされる心配は無くなるのだ。


「……とまあ、邪神とマスター、マリアの説明はこんなもんで良いだろ。もっと詳しく知りたかったら、アキレアに聞くなり図書館に行くなりして調べるんだな」

「ありがとうございます。あのさ、魔物は時が満ちれば蘇るってどういうことなんだ?」

「年に一度、皆既日食でずっと暗い日があるネ。その日に、一年間で倒された全ての魔物がそっくりそのまま蘇るのヨ。日食は邪神が魔物を蘇らせたせいで起きると言われてるアル」

「その皆既日食の日は、邪神ディジオンが居る世界の狭間に入り込める唯一の日。一年に一度の邪神を討つチャンスの日なのよ」


 どれだけの魔物を倒しても、魔物は蘇ってしまう。

 世界の平和のため、魔物と魔族を生み出した邪神を倒すために旅をするのが、マスターとマリアなのだ。



 

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