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マリアノツルギ  作者: 由岐
1章 花香る国
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5.遭遇

 途中で見つけた果物をもぎ取って、それをかじりつつ俺とアキレア、そして町の人達は救援を呼ぶ為に隣町へと向かっていた。


「隣町までは後どれくらいかかるんだ?」

「二、三時間くらいかしら」


 時間の数え方は元の世界と同じみたいだな。

 時々周囲を見回して、俺達を狙う魔物が居ないかどうか確認する。

 森を出発してしばらく経つが、今のところ一度も魔物に襲われていない。

 昨日の夜はベアボールの群れに襲われたけど、あれは夜が魔物が活発になる時間帯だからなのであって、普段あの魔物は大人しくしているらしい。

 だけど、ベアボール以外にも魔物は居る。警戒しておいて損はない。

 とはいっても、俺には魔物の気配なんて全然わからないんだけどな。


「こんなに歩くの久し振りだなぁ」


 休みの日は家に居るのがほとんどだし、学校には自転車で通っているからこうしてのんびり歩くことなんてめったにない。おまけに文化部だから体力なんて無い。持久走なんて死ぬ。


「ひきこもりなのあんた」

「用事が無ければ家から出ないだけだよ」


 アキレアはこの辺りの魔物が生息している場所とかわかってるみたいだから、俺と違って活発な人なんだろうな。

 まずあの斧を振るえる時点で俺と彼女の力の差は歴然だ。

 今日は天気が良くて、雲一つ無い青空が広がっている。

 車や工場みたいに空気を汚すものが無いからだろう。空気がうまい。

 あんまり外に出ない俺にはそんな太陽の光がちょっと眩しく感じて、ローブについたフードを被っていた。

 しばらくすると、俺達は森を抜けて街道に出た。この街道をしばらく進んでいけば、隣町に着けるらしい。俺の世界と違って道路が沢山ありすぎないから、迷わなくて良いかもしれない。

 急に犬の鳴き声がした。よく前を見ると、街道の先から狼の群れがこっちに向かって走ってきていた。


「お、狼!?」

「こんなところで出くわすなんて!」


 アキレアはどんどん近付いてくる狼の群れから俺と町の人達を庇って、集団の先頭で斧を構える。

 ついに狼達は俺達のもとまでやってきた。

 しかし、やつらは俺達を完全にスルーして森の方へと逃げていく。てっきり襲われると思っていたのに……。

 狼の群れが見えなくなると、俺達はほっとした。これでまた護衛を続行出来る。

 再び街道を進もうとしたその時、山の方角から聞き覚えの無い生き物の叫び声が聞こえてきた。


「ちょ、ちょっとアレ何!?」


 山の向こう側から、巨大な鳥のようなものが飛んでくる。


「あれは……グリフォンよ! 強大な力を持つ化け物だわ! どうしてこんな場所にいるのよ!!」


 グリフォンは俺でも何となくわかる。頭が鳥で、身体がライオンの翼が生えたでっかいやつ。

 さっきの狼達はあれの気配に気付いて逃げていたのか。俺も逃げたい。超逃げたい。


「アキレア! もしかしてだけど、アレと闘うのか!?」

「グリフォンと一対一なんて無理よ! あいつの強さなめてんの!?」

「フリッグマスター様、グリフォンは賢い魔物でございます。こちらが刺激しなければ、襲ってくることはないかと……」

「そ、そうなのか?」


 だんだん姿がはっきり見えてきて、やっぱり頭には鷹とか鷲みたいな鋭いくちばしがあって、ライオンの身体の方は引っかかれたら一溜まりもないだろう爪が生えている。

 大きな翼をバサバサと羽ばたかせて、空を飛んでいてもあいつがとんでもない大きさだということがよくわかった。

 老人は刺激しなければ襲ってこないと言っていたけど、グリフォンはどう考えても俺達の方へ向かって飛んできている。

 火事といいグリフォンといい、なんでこうも立て続けに死亡フラグが立つんだろうか。俺呪われてるのかな。


「グワァァァ!」


 やっぱりグリフォンは俺達を襲ってきた。急降下して突撃しようとするグリフォンをなんとか避けて、俺は町の人達を離れた場所に連れて行き、先に町へ向かうように言う。

 俺達二人じゃ太刀打ち出来ないから、隣町から闘える人を呼んできてもらうためだ。

 その間アキレアはグリフォンの気を引いてくれて、ひとまずこの場にはグリフォンとアキレア、それと俺が残った。


「俺はどうすれば良いんだ!」

「あたしに力を貸して! あんたが近くに居ないと、契約の力が充分に出ないの!」


 どうしてグリフォンが襲ってきたのか理由はわからないが、こいつが隣町を襲いにでも向かったら大変だ。なるべく攻撃を加えて、巣に追い返さないといけない。


「あたしが時間を稼ぐから、あんたはグリフォンの攻撃を避けて! あんた闘うのはダメダメだけど避けるのは上手いから!」


 確かにそうかもしれない。運動神経も反射神経も特別良いわけじゃないけど、さっきの突進はよく避けられたなと思う。もしかするとマスターって回避能力が高いのかもしれないな。


「君ばっかり闘わせてごめんな!」

「あたしは戦士なんだから当然よ! そんなことで謝らないでよね! ……死んだりしたら、許さないんだから」


 俺達は援軍が来ることを祈りながら、グリフォンとの闘いを始めた。



 

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