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毒デレ!  作者: くらげなきり
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俺は高校生アイドルで、魔王体質な異界の王族です!



冬休みも間近な12月に入り、俺…小野口将也は………。




「ケイトくん、次の現場行きますよ! 次はボートのCMです!」

「ハイハーイ!」



……年末年始の特番や、年始のCM、初売りポスター撮影だので…一週間ほど峰山神社へ帰れていません。


「っていうか、分かってはいたけど…なんで俺ばっかりこんな忙しいの…!?」

「仕方ありませんよ…リント君は単独ツアー中だし、マオトくんは受験休業を控えて仕事を減らしていますから…」

「くそぅ…」


そう、今この街でRi-3のまともな活動が出来るの俺だけだから仕方ないんだよね。

岡山リント…直は単独で全国ツアー中。

あいつ、固定ファンが多いから単独ツアーとか可能なんです。


「で、沙上さん達にリントやなこなさんのマネージャー任せて社長はなにやってんだよ」

「…えっと…多分……営業?」

「…多分って……」


そして俺の専属マネージャーと化している葛西さん、何故か社長の居所について全く知らないという。

年末年始は稼ぎ時だから、俺は『prince:Dona』も、もっと名前を売る為にライブとかやればいいと思うんだけど。

沙上さんの音楽の才能は…すごい。

発明家としての方向性も…なんかおかしいが天才的だし(製作例※アンドロイドヴォーカル、クレナ)


「…来年からはなこなさんと稲田さんが『princess:Dona』としてデビューが決まってますし、新しい女子アイドルグループの結成もしたいと社長は仰っていましたので…その準備じゃないでしょうか。そろそろ養成所も作りたいとか言ってましたし〜…」

「養成所? あー、ついにそっちにも手ぇ出すんだ…?」

「Ri-3が活動休止しますからねー…社長も不安なんですよ」


葛西さんも不安そうに肩を落とす。

…うん、俺も寂しいけど…運転中はちゃんと前を見ろ。

絶頂期と言っても過言ではない俺たち『Ri-3』だが、来年高校三年生…つまり受験生になるので活動を縮小する事にしていたのだ。

ま、俺はもう高校卒業の証明書貰っているし、頭はいいので大学も余裕な自信はあるのだが……泰久は…結構頭が弱い。

直に至っては「テストの問題用紙盗みゃいいだろ」とか言っていつもテストはズルをしているのだが、真面目な泰久はちゃんと勉強を頑張って…頑張ってるのに結果にならない。

そんな泰久…つまりRi-3のリーダー、空風マオトが大学受験の為に芸能活動自粛を宣言し、年末から本格的に活動縮小…そして来年には休止になる。

つまりRi-3としてまともに活動する事は、来年からは無いわけだ。







NAOKO芸能事務所の稼ぎ頭たるRi-3がそんな事になるわけだから、…社長は大反対し、大学なんか行く必要はないと大騒ぎしていたが沙上さんの「学歴がないアイドルは企業に見下されていつか使われなくなる」と、痛烈な現実を突きつけられ…仕方なく泰久の大学受験の為の休業を了解した。

芸能界…学歴なんか関係ない様に見えて、芸能界を使う企業のエリートさん方が商売相手なので実は結構…大いに関係あったりするのであーる。

勿論、学歴なくてもそれを補って余りある個性があれば、通用する世界ではあるけどね。

沙上さんや葛西さんも、ちゃんと大学出ているし。


「葛西さんも泰久が大学受験するのは賛成なの?」

「そうですね、僕も大学出てますから大学に行くのは悪い事じゃないと思います。事務所的には痛いですがね。ケイトくんは行くんですか?」

「うん…家近いし…西雲の大学部に行こうかなって、思ってたんだけど……」

「あー、ケイトくんなら大丈夫そうですね!」


葛西さんは単純に賛同をしてくれたのだが…。

実を言うと、俺はトリシェにある大学を薦められ、そっちに行こうか悩んでいる。

今後の事を考えて、海外を飛び回っていたトリシェのお薦めは絶対に悪くはない。

芸能人…というより、歌手として、アーティストとして活動を続けていきたいと思っている俺としては…そっちに行きたい…と、思い始めている。

ただ…その大学は…アメリカにあるんだよねー…。

……次男、竜哉兄は結婚して奥さんがアメリカの大学に通う事になったから一緒にアメリカへ渡った。

あの英語が喋れない竜兄が生きていけるなら俺だって…!

ゆー兄も今後アーティストとして海外を視野に入れているなら、行って来い(ただし自活できる自信がないなら竜兄に相談しておくように)と言ってくれたし…。



……けど、陸と離れ離れ…。



それを考えると…陸不足で生きていく自信がない……(※それ以前に家事スキル0で生活出来る保証もない)

鞄の中にある『那音姉特製箱型簡易持ち運びベッド』を取り出す。

箱を開けると中ではすよすよとぬいぐるみが眠ってる。

こうして本当に二十四時間、トリシェは俺と一緒に居てくれるんだが…。


「俺が寝る間も惜しんで働いてるのに気持ちよさそうに寝てんじゃねぇー!」

『ふみゃー!?!?』






『なんて酷い息子も居たもんだろう! 俺は夜に寝ないと魔力が回復出来ないんだってば!』

「知ってる。けどムカついた」

『……』

「言ってる側から寝直すな!」

『ふぎゃー!?』


ベッドから引きずり出して上下に振る。

まさに悪戯するために炭酸飲料に細工する時のような要領で。

大体まだ20時なのに寝てるってどういう事。


『も…やめてよ気持ち悪……っ』

「いつもこんな早く寝ないじゃん」

『…最近峰山神社に帰ってないから…魔力の回復が追っ付かない…だよ…』

「あ…」


くたり、と手の中で項垂れるぬいぐるみ。

光属性の神様であるトリシェにとって、同じ光属性の神子が居る神域…峰山神社は土地柄からも非常に相性がいい。

神器を失ったトリシェは魔力回復を睡眠か、あるいは陸や那音姉のような同属性の高い霊力、魔力保有者からの供給に頼るしかない。

この小さな器は一日、俺の闇属性魔力の放出を抑え込むだけであっさり消費され、光属性の苦手な夜は眠って回復に専念しなければより弱る。

これ以上弱ればどうなるのか。

神様になると『生』と『死』は奪われるらしく、死ぬことはない。

だから…ただ眠るだけの存在になる。

トリシェは人間が神格化した神様の中でも希な光属性で、とても徳の高い神様。

世界を一つ丸々、永久に支えられるだけの神格を持っているらしく、悪いことを考える他神に狙われてる程…こんなナリでも本当に凄い神様なのだ。


「…仕方ないなぁ」


もう一度簡易持ち運びベッドの箱に戻して鍵を掛ける。

勝手に箱が開いてトリシェがうっかり落っこちたら大変だし、悪い神ってのに無防備なトリシェが曝されないようにする機能でもあるのだ。

一見化粧箱のようだが那音姉の魔力に神楽さんが特別な結界効果を追加してくれた、本当に特注品。


「…着きましたよケイトくん! …お父さんはお休みだったんですか?」

「うん…最近元気ないんだよね…」

「え、どうしてですか?」

「…そんなの神社に帰れなくって神気が回復出来ないからに決まってるだろ」

「そ…そうなんですか…。そういえば、ケイトくんのお父さんは神様なんですよね…」


次の現場は隣町のテレビ局。

入局してから楽屋に入るともう一度箱を開けてみる。

…だめだ、完全に爆睡している。


「ケイトくん、もしお父さんが心配なんだったら、僕がお父さんを峰山神社まで送ってきましょうか?」

「え?」

「次、また特番の収録ですから、きっと朝までかかるでしょうし…」

「…うーん…」


確かに…最近目に見えて覚醒時間が減ってるんだよな。

居ると居るでうるさいけど居ないと居ないで静かすぎるのがトリシェ。

…けど…トリシェが側に居ないのは…少し不安だ…。

俺の、この特殊体質はトリシェにしか改善出来ないんだよ。








トリシェが俺の手元に託されたのは兄貴たちが新婚ほやほやっていうのだけが理由ではない。

簡潔に説明すると、俺は『魔王の素質』体質…という特殊体質で、その素質はトリシェの様な『光属性』でなければ抑え込めないのだ。

先日の『トリシェにコーヒーぶちまけた挙げ句腕取っちゃった事件』の時は、俺が『光属性』の『神域』である峰山神社で『神子』の陸と、『神官』の空さんに二重の『抑魔』の封印を行ってもらうという…割と面倒くさい附加を負って、なんとか大丈夫だった。

…なんかこの厄介な体質は、俺たち兄弟の実の父親が、トリシェの故郷世界を侵略した『魔王』の末裔だかららしい。

しかしゆー兄は長年トリシェや那音姉の『光属性加護』のおかげでその素質は消滅し、竜兄はそもそも素質がなかった。

『光属性』のトリシェが器として使っていた燈夜兄もしかり。

結果、なんか俺はぬくぬくと素質が肥え太り、結構危ないんだって。

…魔王には確かに俺もなりたくはない。

そんなゲームのラスボスで、トリシェの世界を一度滅ぼし、トリシェたち先住民を奴隷という資源扱いし、トリシェのような『サルバトーレ』を生み出した魔王になんか…。


「………」

「ケイトくん、どうしますか?」


…神様に昇華してしまう程、長い間…魔王に苦しめられてきたトリシェ・サルバトーレ。

英雄神と呼ばれる程、数え切れない人々を強制的に救い続ける事を強要された神様。

俺たち兄弟の生みの親で、恩人。

…今も俺の事、何だかんだ面倒見てくれる…。

確かにちょっと…いい環境下でゆっくり休ませてあげたいな。

俺が陸の家…峰山神社に居候する事になったのは偶然だったけど、トリシェにとって最高の環境なわけだし。


「…うん、じゃあお願い」

「分かりました! その代わりお仕事頑張って下さい!」









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