新たに始まる世界の俺たち。
とりあえず、地面が残ってるトコに降りる。
陸はずっと俺に引っ付いたままで…俺、顔ゆるみっ放しです。
あー…月科先輩と橘の眼が冷たーい…でも俺気にしなーい…なぜなら幸せだからー…!
…っていうか!
「……月科先輩が新たな創世神かぁ…大丈夫なのか? この世界」
「失敬な…! リリレルナ…創世の女神がどうしても、人間の蔓延る世は嫌だと言って旅に出てしまったから……仕方なく、この僕が代わりに創世神の座を引き継ぐ事になったんだよ」
「だって月科先輩だしなー…あの王苑寺先輩とか蒲田先輩としょっちゅう喧嘩して二年の校舎を幾度となく破壊しまくった…あの!」
「僕はちょっとからかっただけなのに…あの二人が大人気なかっただけだろう?」
「い…いや…普通あの二人をからかおうとか思わないから…」
ちょっとからかっただけで何回校舎破壊してんだよ!
おかげで生徒会の秘蔵ブラックリストに『月科翔』と『王苑寺柘榴』は常にツートップですから!
「…だって弄ると面白いんだもんなぁ、あの二人! 峰山くん関係でちょっとつつくとそりゃあもう蜂の巣みたいにブワーっと…ふふふ、本当、からかいがいがあるよねぇ、彼ら!」
「…………」
……月科先輩はやっぱり絶好調です。
「……はい」
「はい…?」
…そして唐突に橘にはい、と渡されたのは禍々しい赤黒い石の嵌まった装飾品。
陸にも蒼い石の嵌まった装飾品を渡している。
…今度はなにアイテムだ…?
「…なに…これ?」
「二人の力の結晶体。将也のは魔王の力で、神子のは輪廻の力」
「…………」
「…………」
「はあああ!?」
「ど、どういう事…!?」
「…さあ…? 俺と将也の契約石に、二人の魔力が入り込んで形が変わったのは見たけど……有無の力の影響で、二人の『力』が魔石という形に具現化しちゃったんじゃない?」
「し…しちゃったんじゃない…って…」
つまり、これが俺の『魔王の素質』…『魔王の力』そのもの…って事?
そして陸が持ってるのが…『輪廻の神子の力』
そんなのアリかよ〜!?
「…でも…これでもう将也は魔王にはならない。…素質そのものが具現化してしまっているから」
「………あ…」
…橘の言うとおり…俺の魔王の力が具現化して、手の中に収まってるって事は……俺は…もう魔王化しないって事…。
俺は…俺も………魔王に…ならなくてもいいんだ…。
「……………」
…やべぇ…なんか…感無量…?
泣きそう…っ。
「…先見の力も…この中…?」
「そうみたい」
「……………」
…あ…陸も泣きそう。
…俺たちを悩ませていた力が…全部この中に…。
なんだか、もう…本当なんだろう、この気持ち…!
「……よう、終わらしはったみたいやんな」
「空さん! 本当に無事だし!」
「当たり前やろ」
「…神子様…」
「時影! …空に……」
良かった、本当に空さん…あの司藤澪相手に無事だったんだ…。
怪我はしてるみたいだけど…重傷そうなものはない。
時影さん…のは全部俺がやったやつだから…スルー!
「…………お…」
「ん?」
「………ぉ……お…父…さん…も…」
「……………」
……陸が目一杯頑張ったのは、よーく分かる光景です…!
か、可愛い…!
空さん、やっぱりガン泣きして喜ぶんだろうなぁ…!
「……陸も…ほんによぅ頑張ったなぁ…」
「……っ…」
「………」
「……………、…お父さん…!」
………しかし逆に俺とトリシェの方が、親子の抱擁を見てぶわっときた。
う…うああああ…なんだこるぇ…!
「………なんで奴らが泣くの」
「さあ?」
月科先輩と橘黙れ。
こんな感動的なシーンで貰い泣いて何が悪い!
「…本当に…なんとかしてしまわれたのだな…」
「…やるって言ったっしょ」
「………はい…」
時影さんとは…まぁ、なんか…色々ぶち撒けたから…ちょっとすっきりはした。
謝んないけどね!
…陸の為に一緒に苦しみ、痛みを甘受したのは…俺には出来ない戦い方だったから…そこはすごいなって思うけどさ。
…謝んないけどね!!
「…さて、リリレルナが退散してしまったから…別な問題が出てきたね。…神子殿」
「…あ…はい」
新しい創世神になった月科先輩が、話を切り替えてきた。
え…もうちょっと親子水入らずにさせてあげてても良くない?
ってか、別な問題???
…なんだかとってもヤな感じ…。
「早速で悪いけど、髪飾りを返しておくれ。替わりの物を渡すから」
「…はい…?」
陸が付けていた筒状の髪飾りを外して、月科先輩に返す。
確か月科先輩が創世の女神に陸の感情を中継させる役割のあった髪飾り…。
「…まだ陸になんかさせはりますん?」
「ごめんね、創世神には僕も初めてなったから力が安定していないんだよ。…しばらくは神子の助力がないと…、…それでなくとも僕は今、核を奪われているから」
「……」
「…あ…」
空さんはやっぱり娘が神様に振り回されるの嫌らしい。
まあ、また神様関係で陸が狙われるのはやだよね…。
でも、月科先輩…というか、龍神、麒麟の王…琥麒の力が奪われているのは…みんな知ってる事。
別な問題って、その問題か…!
「俺は気にしないし、平気だよ」
「……せやかて…」
「ま、彼女の他に光属性の高霊力者が居ればそっちに頼むんだけど…。……燈夜くんも考えたんだけど、彼アホだしねー」
「・・・・・」
だ、誰一人何も言えない…!
「それにやっぱり野郎より女の子の方がいいもんねぇー」
「…そっちが本音じゃねぇだろうな」
「あはは、勿論本音さ」
「月科先輩!」
「取らないから安心しなよ」
「むうぅ…!!」
月科先輩もイケメンなんだから、陸に纏わりつくのやめてぇぇぇ!!
「…けど峰山陸、君には僕の魔力が安定するまで僕の神子になってもらうから。いいよね?」
「はい」
「即答ぉぉ!?」
「…そんな大声出すほどの事じゃないだろ…」
「だ、だって! だって!!」
せっかく両想い! 邪魔もなくなった!
ラブラブ街道まっしぐらかと思っていたのに!!
「それもあるけどさー、もっと目の前の問題もあるよねー」
「…え?」
と、割って入ってきた浮いとるトリシェは……陸んちが消えた噴火口みたいな大穴を指差した。
「………………あ…」
全員が、その現実を直視した。
確かに、色々それどころではなかった。
…今は夜時間!
どのくらい神様の腹の中に居たのか分からないけど、と携帯取り出してみると午前二時!
あ…そろそろ夜時間終わる…。
でも問題はそこじゃない!
「………せやなー…どないしよー…なんやもう、こりゃ住めへんなぁ」
「お母さんのアルバム…!!」
「…あ、大丈夫やで陸。お父さん持ち歩いとるさかい」
「気持ち悪いよ!!」
……真理さんのアルバム…無事なのは良かったけど確かに気持ち悪いよ空さん!
「…っていうか俺の私物…! シャネロの財布が! 新しいドラマの台本が! オーダーメイドのジーンズが! ブルガニの腕時計がぁ! 昨日買ったばっかりの服ぅぅ!!」
「…那音の奴、十万以上使って買ってたもんな…けどいーじゃん、神子殿から貰ったマフラーは着けてたんだから」
「金額的に色々痛いんだよ! ううぅ…ブルガニの腕時計ぇ…五百万もしたのにぃ…!」
「学生がなんつー額の腕時計使っとんねん!」
「見栄も必要なんだよアイドルは!」
確かにゆー兄には「なんつー額使ってんじゃボケェ!」と殴られたけど!
ブランド一個も持ってないアイドルは見下されるんだよ、俳優に!
「…しかし実際問題、家なき子になっちゃったんだもんねぇー」
「笑い事じゃないよ月科先輩!」
「…お風呂掃除終わってなかったのに…!」
「陸それも違う!」
「ねぇ将也」
「なんだよトリシェ!」
「落ち着けよ」
「うだっ」
橘にチョップされた。
…痛い…。
「…とりあえずしばらくは小野口家使ってもらえば?」
「………」
と、トリシェがまたにやり。
…そういえば…うち、部屋数多い割に今誰も帰って来ないんだよね…。
俺も陸んちに居候してたし……。
「名案」
「だろ?」
「え、あ…あの、でも…!」
「いいよいいよ、兄貴たち帰って来ないし、両親の部屋も使ってないし! そりゃ陸んちに比べれば…お風呂は狭いけど…!」
「俺もいつまでも神楽の身体借りてらんないからねー。…ぬいぐるみのスペア、小野口家にあるからどっちみち行かなきゃいけないしさー」
…今、光り輝いている神様が…またあのちまいぬいぐるみになってチョロチョロするのかと思うと無性に悲しくなるのは俺だけか?
「ほな、坊主んちにお邪魔さして頂こか」
「神子様、せっかくのお申し出です。お受けいたしましょう」
「…~っ!」
空さんも時影さんも賛成してくれたが、陸はまだもやっと何かが引っかかってるらしい。
むぅ、と頬をリスみたいに膨らませて可愛いなバカやろう!
「……でも…なんか…」
「ん?」
「…………身の危険を感じる…し………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「あっはっはっ!」
あ……という顔でみんな俺を見やがるし!
月科先輩だけ大爆笑!
も…もぉぉぉぉ〜!
「ひ…卑怯な真似はしないよ! お風呂覗くとか!」
「お湯飲むって言ってたし…」
「もう飲みません!」
「お風呂入って来るし…」
「気をつけます!」
「わざとを装って」
「も…もうやらないってばーぁ! 信じて陸ぅー!」
「あとトイレ、俺が入った後を見計らって入るのもやめてよ!」
「バレてたの!?」
「…ま…ま…将也…お父さんが寝てる間にそんな気持ち悪い事を…?」
「トリシェにもバレたぁぁっ」
橘「…………」
翔「…橘だっけ? 君、本当にあの契約者に命懸けて良いのかい?」
橘「………お風呂のお湯を飲むのだけは…本当にやめてもらいたいかな…」
翔「…………(…僕はトイレの方が衝撃的だったけどな…)」




