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毒デレ!  作者: くらげなきり
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『万能願達』






『万能…願達…だと!? その様な神以上の力を何故貴様のような幼獣が扱える!?』


「いや…別にほいほいは使えないし。実際今だって俺の意志で使えてるわけじゃねぇし。…ほら、陸、今ならなんでも叶うよ。篠崎遥も君も犠牲にならなくて済む未来…欲しいんだろ?」

「……………」


陸がきょとんとしている。

俺も呆然としている。

差し出された手のひらと、橘の顔を交互に見て涙を漂わせた陸は戸惑って首を横に振った。



「………」



た……橘の野郎…あんな力を隠してやがったのかよ…!

万能願達……どんな願いでも一つだけ叶える能力…!

…基本的に自然界に近い能力を発現する幻獣ケルベロスの黒炎能力…確かにひどく特殊な感じだ。



「陸が本当に欲しい未来はどんな未来? 君が願うだけで、それは叶うよ?」

「………っ」

「……陸?」


けど陸は、首を今度こそしっかりと…横に振った。

…俺はなんとなく…その意味がわかるような気がした…。

だって、自分に都合のいい…未来って、それって…本当に……良いことか?

いくら全能の能力でも、それを叶える事で何か……誰かがもしも傷付く結果になったら…。

篠崎先輩が器にならなければ陸が器になってしまうように。

陸が器にならなければ篠崎先輩が器になってしまうように。



『させぬ…! 妾の器、奪わせぬぞ!!』

「…っ、やらせるかよ!」



創世神が陸たちの方に降りようとしたのを、咄嗟に邪魔したが…。



「女神様! 二人を器にするのを止めてくれ! どっちが居なくなっても悲しむ人がいる! 俺は陸と一緒に今を生きたい! 今生きている全ての人間が、誰かと今生きたいってそう願ってるんだ!」

『くだらぬ! 全て流してしまえばその様な願いは無に等しいわ!』

「なんでそんなに人間を殺したいんだ! 月科先輩は、人間を守ろうとしたのに!」

『その琥麒を殺しておきながらなにを言う!』

「俺が殺したんじゃねぇよ! …っていうか、月科先輩を殺した相手なら俺が殺すから、人間全部はやめてよ!」

『……っ』


あ…?

女神が急に離れた…え…効いた?


『…その言葉は誠か…? 琥麒を殺した者を妾が前に引っ立てて参るか?』

「え…あ…あの…」

『ならば妾も…考えてやらぬでもないぞぇ』


鋭い龍の眼が細められる。

ヤバい、どうしよう…これ月科先輩を殺した犯人をここに今すぐ連れてきやがれな流れ…?




――ピシ…ビシビシ…




そして下の方で氷の砕けるようなとても嫌な音がしたようなしないような………。

恐る恐る…下を見下ろす。

陸の前に居た橘も下の氷に……篠崎先輩を閉じこめていた氷を見下ろしていた。

え…う…うそん…?









――『……誰か…この程度じゃ…死ね…ない…』



「まじかよ…」



――『………助…けて……』




篠崎先輩の手のひらが魔法陣を展開したままの橘と、陸に向けられる。

ヤバい!



「橘!」


「っ…」



橘の鎧毛でも、あの魔法は防げない!


篠崎先輩の魂がまた泣いている。

助けての声が、聞こえる…!



「――…橘! その力で、篠崎先輩の願いを叶えろ!!」


「は!? なに言って…だってせっかく!」


「俺を信じろ! 俺が絶対なんとかする!」


魔王になんか…なりたくない。

あの願いを俺は…ずっと……だから…!




「だから篠崎先輩のそんな運命、お前の万能願達でぶっ壊しちまえ…!!」


「……」




橘の顔が、変わった。

そして魔法陣を纏ったまま急降下して…氷結の大魔法が放たれる直前!



「……!」



…橘の魔法陣が…篠崎先輩の身体を撃ち抜いた。



――『………………』



…どんな運命にあった人なのか…よく、知らない。

でも、確かに笑ったのが見えた。



――『……ひ…かり…………』



手を伸ばし…橘がその手を掴む。

安堵したように安らかな笑顔。

きっと、これでもう…あの人は……。



『…よもや…魔王の定めを断ち切るなど…万能願達とやら、その能力確かのようじゃな』

「……」


あ…本当に本当なんだ…。

でも、あとはこの神様の前に野郎を引っ立ててくれば…陸も…!


『……』

「…え?」


とか思っていた俺の横を、創世神がすり抜ける。

すり抜けて陸の方に急降下していく。

ちょ…!


「おいこら待て!」


スピードなら負けない。

魔王化している今の俺なら創世神をおいぬて陸を庇うくらい……!


「月科先輩を殺した奴を連れてくればって…!」

『妾が直接探せば良い話。その為には器じゃ』

「っざけんな…! …ぐっあ!」


「将也…!」


庇う事には…成功した。

結界に背中おもくそぶつけて………、




「…………っ」




創世の女神の枝を…もろに…腹に食らった…けど…。

陸は…陸の入ってる結界は…大丈夫…、よ…良かった…。


「……あ…れ……」


「将也! 将也……!!」


痛くない。

ドクドク…血は流れてるのに……逆に違うものが入ってきているような……。


「将也!」

「将也ぁ!」


陸と橘の声…ちゃんと聞こえるのに。

声が出ない。

身体が動かない。

…まさか……腹から…枝が…入ってる…?

………俺が…創世神の器にされてるのか…?



「……………」

「将也、将也!」


……なんだ…そうか…。

こうすれば良かったのか…。

俺に器の資格があったなら…最初から俺が器になってれば……。

そうすれば…陸も、篠崎先輩も…なる必要なかったんだから。


……なんだ、そっか…。






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