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毒デレ!  作者: くらげなきり
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俺が勝手に決めた事。





篠崎先輩の姿が一向に見当たらないのが不気味だった。

黒い魔力の腕と角は消えたけど、羽根だけは消えない。

うーん、変な感じ。



『見えるよ』

「!」



どのくらい飛んだかわからない。

でも、ついに見えた…!

根が蔓延った…まるで某アニメ映画に出てきたアレみたいなモノ…。

丸い…根っこに覆われたモノに篠崎先輩が張り付いてなにかしている。


「そこまでだ、篠崎先輩!」


「………」


彼の浮かんだ場所と、同じ目線まで行く。

ぼんやりとした虚ろな目の…篠崎先輩が俺を見る。


「…………」

「……篠崎先輩…えっと…」


どうしたもんか。

心を抜き取られてる…って事は、説得が効かないって事なんじゃ…。

…そんな心配がよぎった俺に向かって、篠崎先輩は右手をかざした。

あれ…ちょっと嫌な予感……。



「………オールド・ゼフス…クラーテマース…ヤファレオレイ…」


『ヤバい…! 将也! 防御全開にする!』

「え!? あ!? はい!?」



篠崎先輩の周りを魔法陣が幾つも囲う。

聞き慣れない言語だったが…多分、橘の“耳”のおかげで意味は理解出来た。

…“古よりの影、傾き歪みし情熱…奪われない明日…世界そのものへの呪い”…。

魔力が急速に高まり、篠崎先輩に集まっていくのが分かる…!


「ディス・ケイミ…」



あ、なんか本当にヤバい。

そう、感じた。




―――――『助けて』




「…?」


そう、感じた時…。

頭の中に響いた声を、知ってる…。

この声…この感覚…確か、あの時の……篠崎先輩が、団子を銜えていて、俺の頭の中に直接語りかけてきた時の感覚…。



「……!?」



ツゥ…と流れた一筋の涙に俺はギョッとした。

篠崎先輩が、泣いた…!?

いぃ意味が分かりませぬ篠崎先輩…!

え、なにウソどういう事…!?


―――『助けて…誰か…』


「た…橘…」

『これは、まさか…』


―――『もう、誰も殺したくない。もう二度と世界を…滅ぼなんて…嫌だ…誰か…』



…子供の声?

少しだけ舌っ足らずな、子供のような声だ。

でも、篠崎先輩の声によく似ている。


『…魂の、声だ…』

「…た…魂…?」


魔力は高まり続けているが、声もまだ聞こえる。

橘が言った…魂の声。

一体どういう事なんだよ!?









「デス・デスペレント…!」


「ぎゃわー!?!?」



魔法陣が重なり合い、美しい円が出来上がるとそこからとんでもない闇魔力を帯びた吹雪が!

橘の鎧毛を纏っていても…寒いだとぉぉ!?

…ぎゃー!? 毛先が凍り付いたあぁ!!



「なんだよこれ!? お前の毛凍ったぞ!?」

『ちょ…超ド級の大魔法だよ! 上級ドラゴンとか、神獣が使う魔法…!』

「なにそれ! お前の鎧毛効果なし!?」

『そりゃ…っ、俺の鎧毛はまだ成長期だもん! 上級上位兄クラスの鎧毛じゃなきゃ、あんなの防げるわけないじゃん…!』

「嘘だろ!? そんなのありかよ!?」

『そもそも人間一人であんな大魔法使う方がおかしーし!』

「…っげ!?」


また周囲に魔法陣が浮かび上がる。

ちょちょちょ…! あんなレベルの魔法をれ、連射…!?

嘘だろー!?




―――『…助け…て…』




「…!? …また…声!?」

『篠崎遥の魂の声だ…! 精神が引き抜かれ、器の人格がない状態で聞こえるって事は…! …なんて事だ……こんな事、神の魂じゃなきゃありえない…!』

「神様の魂…!?」

『…将也、聞くんだ! 魔力が高まって対話が出来る今なら聞けるはず…! あの神様が何者なのか分かれば、篠崎遥の器を止められるかもしれない!』

「……それって…」

『器が、人工的に造られたモノであるなら…多分!』


「デス・デスペレント…」


「うぉああああぁぁっ!?」



さっきと同じ規模の魔法…!

ぎゃー、魔力の羽根が凍って砕けたぁぁ!?

どぉなってんだよあの魔法ぉー!?

こんなの直撃したら間違いなく一瞬で骨の髄まで凍りつくんですけどー!?



『魂が嫌がっているんだ! …今までは篠崎遥の精神…心によって圧迫されていた魂の人格…神の意識が浮上して現れているんだ! 神格の意識を覚醒させればなんとかなる…かも!』

「かも!?」

『それっきゃないってぇ!』

「ああもー!」


あの魔法が直撃した場所が凄まじい勢いで凍り付き、どんどん広がっていく。

寒い! ヤバい!

こんなの、絶対保たない!


「助けるって、どうすりゃいいんだよー!?」


…一応神様の魂とやらに向かって叫ぶ。

篠崎先輩…その器は無表情のままに涙を流す。

声だけが苦しげに『助けて』と繰り返す。










―――『…殺して…』



「………」




…そうして…零れた言葉に、篠崎先輩の器を凝視した。

今、なんて言った…?

……殺、して…だと…?



「……」

『………っ…』



距離を保ったまま動かなくなった俺を見下ろした“器”は攻撃を止めた。

…一定距離に近付くと、自己防衛する“機能”でもあるかの様だ…。

声は聞こえなくなる。

…涙も…止まった。

“器”が球状の根の塊に両手を付く。

すると、根は“器”へと入っていった。

球状から剥がれる根…消えていく蔦…。

球状の中身が見え始める。



「……あ……」



…ダイヤ型の結界に守られた……陸…!

まさか…あの根とか蔦は…創世の女神が“器”に入る為のもの…!?

だとしたら……ヤバい…!


「クソ…!! そういう事かよ…! ふざけんな…!!」


結界に守られた陸は、無事みたいだけど…!

でもこのままじゃ篠崎先輩が…!



…じゃあ、篠崎先輩なら死んでもいいって言うのかよ…。



このまま篠崎先輩が器になれば陸は助かる…。

けど…でも…!!



「っ…!!」

『…将也…』

「どっちも助ける!! 橘、お前の力を全部貸せ!!」



黎明を構え直す。

決めたんだ、俺は…、陸が不幸になる運命…全部ぶっ壊すって!









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