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毒デレ!  作者: くらげなきり
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俺が前科者になっても見捨てないでね!




「助けてトリシェー!」

『任せろ!』


箱を開けると、ふわふわベッドから現れたトリシェが仁王立ちで誰がどう見ても巨人でしかない鈴木さんに立ち向かう。

さすが英雄神! かっこいい!


『オイすずぎゅ「らぁ!」

「トリシェェェ!?」

「ケイトくんのお父さんんん!?」



あっさり握り潰されたぁぁぁぁ!!



「く…く…くぉんなぁ…カワイイもんをぉ…盾にしてぇ……ごむぁかそぉぉぉっったっってぇぇぇ…ぬぁああああ!!」

「ヒィィ…!?」

「ひ、ひっ…!」

『・・・・(…ま…マジきもい…!!)』



巨大な手のひらの中にはちっさいトリシェが綺麗に収まっている。

巨体をプルプル震わしながら、鬼の形相でトリシェを睨む鈴木さん。

……こ…こんな恐ろしい刑事がなんで窃盗犯を迎えにくるのかが分かりませんんん!


「こーら、鈴木。俺たちが探してんのは吸血鬼だろ? いくら重要参考人に似ているからって絡んでんじゃねーよ」

「せ…先輩…」


『…ゲッ…安藤勇…!』

「…知り合い?」


スーツ姿の新手刑事の顔を見るなり固まった鈴木さん。

固まった鈴木さんの手からトリシェが素早く逃げて、俺のところに帰ってきた。

新手刑事さんは鈴木さんのスーツの裾を捕まえると、俺たちから引き剥がす。


「こないだ鈴木が誤認逮捕しかけた小野口燈夜の弟か…すまねぇなぁ、また鈴木が先走って…」

「は…はぁ…」

「あんたの兄貴の小野口燈夜は、俺たちが今追ってるヤマの重要参考人の一人でね…。今どこに居るか知ってたら教えて欲しいんだが……」

「………」


…多分この人たちが探してる燈夜兄って絶対、こいつ(トリシェ)だよなー…。


「………、…実は燈夜兄、今記憶障害なんです」

「記憶障害…?」

「中身が幼児に戻っちゃって…、今南雲の高等部に入り直しています。…俺の事までお兄ちゃんなんて呼んでてこっちも困惑してるんですよ」

「……その話は本当か?」

「嘘言っても、本人に会えば一発でバレますから。…燈夜兄がなんかヤバい事してたって事はなんとなく気付いてましたけど…一体なにやらかしてたんですか?」


っていうか吸血鬼とか言ってたけど…なにそれ?








「…、…そうだな…捜査協力ってワケじゃあねぇが…家族に話を聞いとくつもりはあった事だし………、…最近、南区の港の方でミイラみてぇな死体が上がってんのぁ、知ってっか? ニュースでもやってんだが、もう害者が八人にもなってんだ」

「……あ…は…はい……それは…まぁ…」


八人…!?

そんなに増えてたの…!?

…去年から度々ニュースになっていた、人が血を抜かれたミイラのような死体で発見される事件…。

噂じゃ夜時間の実力者が捜査に圧力かけて、一向に解決が見えないって…。



「………(まさか!?)」ちら

『………(濡れ衣!)』ふるふる


トリシェが夜時間でやんちゃしてたのは有名だ。

しかし、ぬいぐるみになってからは基本俺の側を離れないトリシェが…しかも起きていられない夜時間でなにかをやるっつーのは、ちょっと考えにくい。

本人もふるふる顔を横に振ってるし…。


「…それが一体…?」

「…これが現場近くの防犯カメラに写っていた奴らだ。見覚えある奴は居ないか?」


と、鈴木さんじゃない刑事さんが出した写真は四枚。



「!」



藍髪を腰まで垂らした、儚い感じの青年…この人は、この間片森先輩と玖流先輩が助けた『K』さん…!

その隣の白髪赤目のガキんちょは、同じくあの日に片森先輩と戦ってた不健康かつ生意気で柄の悪いアイツじゃないか…!?

…あとのイケメンと黒髪おかっぱなお兄ちゃんは見たことない…。

…でも…!


『…馬鹿な…!?』

「…? …今ぬいぐるみが喋っ…」

「喋ってません」


なんとなく、大人の人にこのぬいぐるみにトリシェという神様が宿ってるって信じてもらった事ないから隠しちゃった。

…っていうか…トリシェ関係ないんじゃなかったのかよ…!


「…見覚えは?」

「………、…この二人…夜時間に…見たことはあります…」

「…チッ…、やっぱり夜時間の関係者か…。…しかし天下のアイドルが夜時間を出歩いてるとぁ…」

「ケイトくんに限らず、芸能人は撮影や取材の影響で夜時間に移動したりする事も多いんです!」

「? あんたは?」

「僕は葛西太一、ケイトくんのマネージャーです!」

「そりゃ失敬。…あー、そうだ…一応聞きたいんだが……1月1日…あんたらはドコでなにしてたんだい?」


う…これもしかしてアリバイ確認ってやつ?

俺素直に証言しただけなのにぃぃ!?


「…1月1日は元旦の特番で…というか、年末年始はほとんど生番組でしたよ」

「…僕もずっとケイトくんの撮影を見てました」

「…去年のクリスマスは?」

「……すんげー忙しい中無理やり休んだはいいけど、一日中兄貴のお店でタダ働きを……」

「僕は社長が溜めてた事務処理の手伝いをしていました…」








「…葛西さんっていつ寝てるの…?」

「す、隙を見て…」

「ちゃんと労働に見合うお給料貰ってるの?」

「馬車馬の様に働かされ、安月給で虐げられる事に興奮するんです!」

「…………そう」



もうこの人の心配、二度とすまい。



「…、…こいつらを見かけたのはいつだか覚えてるかい?」

「…今年に入ってから……だったと思います。…えーと…隕石が落ちた日辺り?」



……うそは言ってないよ。



「そう、か…」

「おぉい…なんかまだ隠してんじゃぁねぇのか!? ゲロっちまわねぇと後でめんどくせぇ事になんぞぉ!?」

「ひっ」

「こら、鈴木!」

「う…」


…この新手刑事さんは鈴木さんの飼い主か…。

こんな天井付近スレスレまである巨人を言いなりにさせるなんて、若そうに見えて相当のやり手なんだろうな…!

トリシェも名前知ってたし…、…安藤さん…だっけ。


「…すまねぇなぁ、本当。…ま、この写真見てもらったら分かるとおり、この青髪の兄ちゃんがお宅の兄ちゃんに似てるって話になってな…。夜時間が関係してんなら…こっちも色々手がつけられねぇもんで、苛ついてんのよ」

「……そうでしたか…」


と、納得したように見せかけて俺は全然納得してないけどね!

…燈夜兄は23年間、トリシェに憑依されてたから…トリシェに似てんのは仕方ない(髪や眼の色的な意味で)

俺もキング・アーサー(自称魔剣イクスカリバーン)曰わく、トリシェ似らしい(髪や眼の色的な意味で)

トリシェに言わせりゃ、俺の品のなさは父親キング・アーサー似らしいけどね!

…そんなトリシェと瓜二つな、この『K』…当然俺や燈夜兄とも血縁者を疑う位には、似てる。


「……ちなみにコイツ、お宅の血縁って事は?」

「いや…、知りません。…俺、地毛はこのくらい長いですが…うちの兄貴たちはこんなに長くないですよ」

「カツラって事か?」


仕方ない、身の潔白の為だ。

ケイトのヅラを取る。

約三年で背中まで伸びた髪に、安藤さんも鈴木さんもギョッとする。


「ず、随分長ぇな…!」

「…俺、燈夜兄に似てるってよく言われるから…差別化を計りました」

「それにカツラだとプライベートにケイトくんだとバレにくくなるんですよ」

「…変装も兼ねてるんですよ」

「成る程。……ヅラって事もありえる訳か…」

「…………」


あれ?

…なんか余計な情報与えちゃった…?








「…ま、とりあえず写真の人物があんたじゃねぇってのは分かったよ。…アリバイも完璧みてぇだしな」

「当たり前です! っというか! ケイトくんは窃盗犯を捕まえるくらい、正義感のある若者なのですよ! 殺人なんかするわけありません!」


すまん、葛西さん!

でも俺、八草沙幸の事はガチで殺そうとした!


「窃盗犯…?」

「え、窃盗犯を引き取りに来てくださったんじゃ…」

「いや、俺たちはこの建物の監視カメラと防犯カメラの映像を見せてもらいに来ただけだぜ。そこにたまたま、一度話を聞きに行かなならんと思ってたあんたが居たって話さ」

「…え…じゃあ、一緒に来た人は…?」

「警備員の増援だろ」

「……そ…そんな…」

「…ま、そういう事ならついでにその窃盗犯は俺たちで連行するよ。…状況を詳しく教えてもらっていいかい?」




こうして本日のPR撮影は明日に延期される事となったのでした。








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