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毒デレ!  作者: くらげなきり
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思わぬところで思わぬ奴と会いました。




ショッピングモールの開店式イベントで歌い終わった俺、鳴海ケイトは続けて店内の紹介VTR撮影をする事になりました。

へー…本当に色々なお店が入っているんだなぁ。


「じゃあまずはフードコートで食事にしましょうか」

「食事ね」


食事にしましょうかって、まずもって撮影の意味ね…。


「なにか食べたいものありますか? 粉物以外で!」

「……じゃあオムライス…」

「オムライスでお願いしまーす」


青海苔とか歯に付くと恥ずかしいので粉物は撮影中基本NGです。

分かってるのにむっちゃいい笑顔で否定しやがって葛西さんめ。


「ねぇねぇ、あれって鳴海ケイトじゃない?」

「写メ写メっ」

「本物、マジで180センチある感じじゃん」

「素敵ー、モデルみたーいっ」

「オムライスだって。子供みたいでカワイイッ」


他のお店のお姉さんたち、丸聞こえですよ。

…いいじゃんオムライス…ゆー兄のデミオム、本当に美味いんだから!

…ま、俺のオムライス好きは公式発表済みだからツイートなりなんなり好きに書いていいけどさ。


「いやぁ、鳴海さんにだけでも来ていただけて本当に良かった! このショッピングモールは南区で開園予定の遊園地『リアルドリームワールド』と提携する予定でして…ぜひ、鳴海さんにはそちらのイメージキャラクターにもなって頂きたいのですよ」

「は…はぁ? 自分が、ですか…? リントやPrince:Donaのクレナの方がイメージに合っているのでは…?」

「いやいや、リアルドリームワールドは大人のデートスポット…という触れ込みなんですよ! 岡山さんやクレナさんじゃあ、ちょっとばかり子供っぽすぎる。十代とは思えない、大人の魅力がある鳴海さんがぴったりなんですよ!」

「…そ…それはありがとうございます……」


鳴海ケイトは十代離れしているイメージでやってはいたけど…ズバッと言われると、ちょっと傷つくね………。


「次のドラマでは元詐欺師役だとか…いやぁ、テレビの世界でもワイルドな魅力で大活躍ですな!」

「ど…どうも…」


ところでナチュラルに話しかけてきたが、この人誰?


「ケイトくーん、打ち合わせですよー」

「あ、はーい。…それじゃ、失礼します」

「はいはい、よろしくお願いしますよ」

「…?」


…結局なんだったんだろう、あの人。

葛西さんなら知ってるかな?


「…ねぉ、葛西さん…あの人誰?」

「え…モールの関係者さんじゃないんですか?」

「…でも、俺の次のドラマの役柄知ってたよ? 公表まだだよね?」

「…じゃあ映像とか制作の会社の関係者さんなんじゃないですか?」

「…適当だなぁ…いくら一般客も居るからって、そこんとこはちゃんとしてよ」

「あはは、すみません…」

「…それでなくとも、俺神様持ち歩いてるんだ…か………ら?」








楽屋がないので持ってきたマイバッグ。

その中から今、話しかけてきたおっさんがトリシェの入ったトリシェ寝床箱をごそっと持って…俺と目が合った途端にダッシュ!


「ふざけんなぁぁぁっ!?」

「ど、どろぼー!!!!」


またかトリシェ!

おっさんは俺に追いつかれるやいなや、寝床箱を若い男へと放り投げた。

男は野球帽を被っていて顔は分からないが、足が速い!

俺を覗き見る為に出来た人垣を飛び越えた箱をキャッチし、混雑していた道を颯爽と走り去りやがった!


「葛西さん、警察!」

「は、はい!」


悪いとは思ったけどテーブルを踏み台にして人垣をジャンプ!

俺の魔王化しつつある身体能力なら余裕!

それにどんなに足が速かろうが、俺も足には自信があります。

伊達に毎日走ってない!

しかしお客さんが多い!

いや、向こうも走りづらいのは同じだ。


「みっけた! 逃げられると思うなよ!」


こっちは魔王的身体能力に付け加え、刑事ドラマの撮影やってんだ!

人混みの中、犯人を追い掛けるシーンだってやった事ある!

ベビーカーを引いた母親を寸で避け、男性客を避ける為に身を引いた男の頭目掛けて跳び蹴り!



「ぐあ!」



そのまま左腕を捻って背中から首の部分に足を置く。

トリシェの寝床箱をカラン、と落っことした男は痛い痛いと悲鳴を上げる。

痛い、じゃ…ねーっつの!


「観念してもらおうか…! いきなり人の物を盗むなんて…全く…!」


ハンカチで背中に犯人の腕を括り、トリシェ寝床箱を拾い上げる。

中身は無事か?


『…うみゅうぅぅ…なにー…? めっちゃ揺れたんですけどぉ…?』


無事なのですぐ蓋を閉めました。

…まあ…これ、俺か神楽さんにしか…開けられないんだけどさ…。


「ケ、ケイトくーん! 大丈夫ですかぁー!?」

「…警察は?」

「警備員を呼びました! すぐ来てくれるそう…って…捕まえちゃったんですかぁ!?」

「…刑事ドラマのおかげで追うのは慣れたみたいなんだよね…」


ふぅ、と前髪を弄ると周りが「キャアアアア!」と黄色い悲鳴を上げる。

どうやら事態を理解した一般客の皆様が、俺の存在を認知して上げたらしい。

…面倒な…。


「…鳴海ケイトさんですか!?」

「え、やだもしかして撮影!?」

「うそ、あれ本人じゃない?」

「ヤバーイ! マジじゃんっ」


「…とりあえず、こいつを警備室に連れて行こうか」

「え、ケイトくん…危ないですよ! これは撮影じゃないんですよ!?」

「大丈夫、俺強いから」


犯人を立たせ、駆けつけた警備員と一緒に警備室に向かう。

携帯でムービーとか写メとか撮ってる奴らがいたが、無視した。








「…ヤブートップニュース確定ですね」

「…いいんじゃない? Ri-3鳴海ケイト、ドラマさながらの窃盗犯を現行犯逮捕ってさ」

「…格好いいですねっ!」

「…タイミング的にやらせみたいでヤだけどね」


ちょうど刑事ドラマやってる最中に捕り物なんて。

……それにしても…。


「くそ、くそ…話が違う…! 絶対捕まらねぇっていうからやったのに…!」

「…つまりやっぱり誰かからの依頼か…。よくそんな話信じて受けたね。僕らアイドル、基本肉体労働だから体力には自信があるんだよ」

「ふざけんな、たかがアイドルのくせにぃいってぇぇ!?」

「…あと僕、ドラマ柄こういう事も出来るから、あまり抵抗はしない方がいいよ」

「いてぇ! いててててぇ!!」


腕を捻り上げて黙らせる。

もう一人のおっさんの方も警備員がとっ捕まえてくれていた。

二人セットで数分後、駆けつけた警官に現行犯逮捕してもらう。


「ゲッ」

「てめぇ…?」


そして…そんな警官の中に何故か一課の刑事を、俺は見つけてしまう。

何故!? 一課の刑事って殺人とかだろ!?

…身長二メートルをゆうに超えたその大男が…俺は非常に…苦手なのだ。

何故ならこの規格外にデカい大男は、燈夜兄にトリシェが憑依して学校に通っていた時の同級生…!

夜時間で最も関わっちゃいけない四天王的存在…『四荒帝』の一人…通称“規格外”鈴木良雄…!!


「鈴木さん!?」


「てめぇ、小野口燈夜アアアァァ!!!! 今日こそとっ捕まえてやるああぁぁあ!!!!」


「人違いだあああああぁぁっ!!」



…燈夜兄…ことトリシェが一体なにをやらかしたのかは知らないが、鈴木さんに燈夜兄と間違われ、俺は遭遇する度に追いかけ回される!


「俺、燈夜兄じゃないって言ってんじゃんんん! なんで覚えてくれないんですかぁっ!」

「うるせぇ、ごちゃごちゃ抜かしてねぇで観念しやがるぇ!!」

「助けてトリシェー!」








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