俺VS真宮兄!
「で…なんで真宮兄を俺が送る話になるのかなー…」
俺、小野口将也は今…マイエンジェル陸の親友、真宮楽都をお家にお送りしております。
夜時間に真宮一人で帰らせるのは危ないから送れ、という片森先輩の命令である。
カノトさんにはファクタスさんって執事兼護衛が居るし、片森先輩は…恐ろしいから大丈夫!
…なのは、分かるんだけどー…。
「…小野口くん、本当に、本気でりっくんが好きなんだね」
「…ん…?」
ぽつ、と独り言のように真宮が漏らす。
魔王化が進んだ今の俺の聴力ならばっちり聞き取れてしまう。
聞き返したら真宮に睨まれた…なんで?
……あ、いえ…なんでもなにもないのですが。
「…どうしてりっくんの事を選んだの? りっくんの秘密を知ったから?」
「え…えっと…」
「りっくんが本当は女の子だから、だからりっくんにしたの?」
「う…っ!?」
ググッと近付く前方の真宮!
冷たい軽蔑の眼差し…後方の橘!
に、逃げ場がないー。
「ま…真宮は陸が女の子って…知ってたんだ…」
「誤魔化さないで」
「…………」
駄目かー。
「…べ…別に俺は陸が女の子だから好きになった訳じゃ…」
「りっくんが女の子だって分かってから、いきなり好きって言い出したんでしょ?」
「まるで俺が女子なら誰でもいいみたいな言い方…!」
「将也…よーく思い出してみなよ、順番次第で弁解に説得力が生まれるから」
「………………」
と、橘の助言を受け、よーく思い出してみる事にした。
「・・・・・・」
「…………(…駄目な順番だったか…)」
陸が女の子って分かってから…俺、陸を好きになった……かも。
「っ!」
「………(否定要素を探す旅に出るつもりだな)」
いや、でも、けど…別に俺、女子なら誰でもいい訳ではないし!
陸だから、すんげー好きなわけだし!
そもそも俺、どっちかっていうと巨乳好きだし!
あ、すみません…別に陸が小さいとか言ってないです。
俺が陸を好きになったのは………、……えっと…、…優しくしてくれたからで…魔王にも王様にもならないでって言ってもらったからで…。
あれ…魔王にも王様にもならないでって……あの時は俺、陸を男だと思ってた。
って事はつまり…!
「ははははは! 俺、別に陸が女の子だから好きになったわけじゃねぇし!!」
「………(なにか確固たる確証が見つかったんだな…)」
「でも告白したのってりっくんが女の子って分かってからなんでしょ?」
「………………」
「それってりっくんが女の子じゃなかったら、告白するつもりにならなかったって事なんじゃないの?」
「………そ…そんな事は…」
「………(あっさり返り討ちかよ)」
陸を好きになったのは、女の子って知る前だ、絶対。
…けど俺はその気持ちに気付く事が出来てなかった。
だから…もし陸が本当は男だったら…どうしてたかとか分かんない!
…俺は陸が男だったら、告白…したかなぁ?
そもそも恋愛対象の好きって…自覚したのか?
「………、……俺は陸が男でも絶対告ってたよ」
よーく考えて、想像した結論。
陸があの笑顔を俺に向けて、俺の名前を呼んでくれるなら…俺は…例え陸が男の子だったとしても……!
「そんでいつでも押し倒せr…!」
「それはいいから」
橘に後ろからチョップされた。
痛い。
「…いつ好きになったの…」
「…………」
真宮に告白された当日の夜間。
……なんてサラッと言えたら楽なんだけど…。
「……えっと……去年の夏休み中…かな」
嘘は言ってません。
「……りっくんはその一年前から…小野口くんの事、好きだったんだよ」
「……………………はい…?」
ほんの少しだけ寂しげに微笑んで、真宮楽都はとんでもない爆弾を投下した。
陸が……陸が俺を…、なんだって?
「…僕は一年生の入学式の後だけどね。…初めて購買部でパンを買いに行って、あの勢いに負けちゃた時…転びそうになったところを助けてくれたの…絶対覚えてないんじゃない?」
「…う…(全然覚えてねぇ)」
「………(全然覚えてないな、この顔は)」
「…やっぱりね…。いいよ、分かってたから。……りっくんはね、一年生の六月くらいに、当時の二年生校舎に探検に行ったのは覚えてるかな? …その時に小野口くんが顔を思いっきり近付けてきたからびっくりしたんだって。……びっくりして、ドキッてしちゃったんだって…。……理由がなんだか、すごく可愛いよね」
「…………」
それも全然覚えてない。
一年の時、二年生校舎(現在の三年生。王苑寺先輩とか月科先輩とかの学年だよ!)に面白半分で探検しに行ったのは覚えてるけど…。
…真宮が「可愛いよね」と微笑んだ顔は寂しそうなのに、本気で陸を愛おしんでいるのが伝わってくる。
………真宮は…。
「…真宮、陸の事…本当に友達として好きなのか…?」
「まさか。…恋愛対象で好きなんだよ」
即答ありがとうございます。
やっべー陸マジモテすぎ俺涙出そう…!!
「…でも僕はりっくんの友達で居続けるって決めたんだ。りっくんが僕を友達として支えてくれて、味方で居続けてくれたから。りっくんが僕を友達って思ってくれている間は、僕も最高の友達で居続ける。…ただ、りっくんはもう僕の中で最高の友達であるのと同じくらい…最っ高のお姫様だから…。…あの子が笑ってくれるなら、僕はなんでも出来ると思うから…」
「………」
真宮兄…陸の事マジで超好きじゃん…。
この俺が「俺の方が陸を好き」と言い出す事が出来ないなんて…!
――俺は例えばこの先、陸と友達に戻れるだろうか?
……無理かなー…。
…っていうか無理だったしなー…。
クリスマス、振られたけど結局諦めてないもんなー…。
「…ねぇ、小野口くん…りっくんはさ…我慢が得意で、理性的で、思いやり深い子なんだ。我が儘は飲み込んじゃうし、真面目過ぎて欲しいものがあっても…言ってくれない事がある。頑張り過ぎで、なんでも自分一人でやろうとして…あんまり頼ってくれないんだよね」
…うん、分かる。
陸ってそういうところ、あるよね。
「……でも…けどさ………りっくんが世界を救う為に犠牲になるって…それはやっぱり絶対におかしいよ…! だってりっくんは…本当に、あの子は本当に…優しいんだ…!」
「………」
「……小野口くん…りっくんは君を一年生の時から好きだった。けど、あの子は君に一度だって、好きとは口にしていないだろう? なんでだか、分かる?」
「…え……えっと…」
「…りっくんはね、僕が男で友達だから…君に好きって言う事が出来なくなっちゃったんだ。僕の方が先に君を好きになった。僕と同じ人をりっくんは好きになった。…でも君は…男を恋愛対象には出来ないと公言していた。…りっくんは自分が女だから、僕と対等じゃないからって言って…僕が君に振られたあの日に…言ったんだよ…? …ずっと僕と友達で居たいから…彼があのまま「男は無理だ」って言ってる内は絶対に好きって言わない」…って。この意味が君に分かる?」
真宮の真っ直ぐな眼差し。
……分かる?
…ああ、分かるよ…分かんない訳がない。
俺は…自分で拒んだんだ。
「男は無理」と公言する事で、予防線を張って、少しでも傷つかないようにしていたんだから。
振る方だって、辛いから。
でも陸は真宮と対等でいたかった。
対等な友達のままで居る為に…だから俺をあの日、殴って怒ったのか。
あれ、でも待った…陸の好きだった奴が…俺?
…陸の好きだった人は…「男が無理」
…俺の…事…。
「………………俺…馬鹿じゃん」
「…………」
「………(改めて自覚したか)」
天空のオーロラが綺麗だなぁ、と軽く現実逃避をしてみた後…俺は改めて真宮兄と向き合う。
真宮は真っ直ぐ俺を見据えていた。
直視がつらいくらいの、真っ直ぐさ。
俺があの日、目を逸らして逃げ出した気持ち。
「………、…小野口くん……僕、君の事が…好き、だったよ……」
「………」
…その言葉…いつか聞いた気がする…。
どこで?
…いや、今は……ちゃんと向き合おう。
「……ありがとう…。……、俺は陸が好きだから……絶対に、あの子を幸せにしてみせるから。…だから…」
「……?」
「…この先も、陸と…あと、俺の友達で居て欲しい」
差し出した右手に一瞬キョトンとして、俺の言葉を最後まで聞いた後…真宮はようやく微笑んだ。
「もちろん。こちらこそ」
真宮楽都……この子が、陸の最高の友達で本当に良かったって思った。




