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毒デレ!  作者: くらげなきり
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篠崎先輩は魔性だと思います。





結界破りは槍に闇魔力を集中させ、結界解除の魔法式っていうのをぶまちこめばいいらしい。

しかしその正しい魔法式ってのを教えて貰うのには結構勉強しなきゃならないんだって。


だから………。




「ぶっ壊す。って、念じながらぶっ壊せば、OK」

『…色々な課程を全てかっぱらったね…』


親指グッ、で篠崎先輩はOKを出してくれました。

……本当にそれでいいの、か?


「いいからやってみろや。ウダウダ口答えすんなら、乗るよ」

「やってみます」


の…乗るって、俺に…!?

肩に? 頭に? どこに!?

わからないのでとにかく槍を構え、闇魔力を刃先に集中させる。


「? お前は魔力操作しなくてもできるよ?」

「え?」

「それ、魔槍じゃん…魔槍は槍本体にそもそも闇魔力が満ちている。今更込める必要はないよね?」

「…………はい」


ものすごく「当たり前」みたいに言われましても……俺は魔法使いじゃねぇっつーの!

つまりこのままの状態でぶっ壊すって念じりゃいいのね?


「でやっ」


スカッ、と綺麗に外しました。


「…………。……?」

『…ただ振るんじゃ駄目だよ。ちゃんとそこに結界があるという認識を持って! 時影もやってご覧』

「は、はい」


俺と時影さん、二人で注意された事に気をつけながら何度も試す。

……一向に壊せません。




「ほ…本当にこれで合ってんのかよーっ」


ついに音を上げて縁側に座り込む。

汗だくになるくらい…“素振り”しまくったよー。


「………」


時影さんはまだまだ元気いっぱい、刀を降り続けている。

まー、この人は毎朝の素振りが日課だもんね。

…陸を守るために……俺も、もう少し頑張ろう!


「………。…時影さんってさ…」

「……」

「…陸が…好き…なの?」


まあ、嫌いだったら命懸けで守ろうとなんかしないってのは分かってるんだけどさ。

…そうじゃなくて……。


「…恋慕の情があるかないか、という意味の問い掛けならば…否。…某は神子様の刀だ。ただあの方を御守りするだけの刀。あの方の代わりに戦い、あの方が傷付かぬよう御守りする…ただの刀、ただの道具で良い」

「…それ、恋の好きなんじゃ…」

「………。…だとしても…某は神子様の刀であり続ける。最期の瞬間まで、神子様を守るためだけに息をし、心の臓を動かす物でありたいのだ」

「………」









…せ…戦国武将…考え方がヘビー…! 引くー……。

…でも俺も相当病んでるしなー…。

それに…恋ってところは微妙に再否定避けたね。


「…将也殿、貴殿は神子様のお心を何故に察してやらぬ?」

「はい?」

「あの方はただただ、貴殿の命を案じておられた。ただ、貴殿が生きる未来を守りたいのだと…。だというのに…何故に神子様と最期を伴にするなどと言う? あの方の心内を、何故汲んで差し上げぬのだ?」

「………」


陸の気持ち?

…そんなの…俺はあの夜から毎日考えてる。

優しい優しい俺の天使。

那音姉に叱られて、橘にぶん殴られて…俺はずっと考えてるよ。


「…時影さんは…陸の為に刀になって…陸が先に死んだらどうするの?」

「…!」

「…主人が死んだら一緒に死ぬのが武士なんだろ? …死ぬの?」

「………」

「…俺は…陸に助けてもらって、陸の居ない世界で自分だけ幸せになる未来って、…想像出来ない。死ぬなら一緒に死ぬ。勿論…俺が死んだら悲しむ人が居るのも…分かってるから、生き抜く覚悟は最後まで捨てない」


頭の上のトリシェを指でつっつく。

小さな小さな手が指を包む。

…二千年…苦しみを被せられてきた救済の神様…。

俺の大事な家族。

トリシェを悲しませるのは…嫌だから、俺は…生きるのを諦めるつもりはない。

でも陸が居ないなら…俺は創生神に挑んでやる。

俺がどんなに陸の事を大好きなのか…俺から陸を奪おうとする全てに思い知らせてやるんだ。


「………貴殿は神子様のお心を解っていない」

「む?」

「…それではあの方の心は報われぬ。貴殿は、なにも解っていない」

「……ど…どういう事?」

『…………』


言うだけ言って素振り…いや、結界破りの練習を再開する時影さん。

…そんな俺たちを見ながら、篠崎先輩が白玉団子になにも掛けないでパクリとした。

…あれ…白玉団子…?


「…あれ…篠崎先輩…その白玉団子は…」

「陸に貰ってきた。お腹空いたし」

「出入り自由かっ!?」

「魔法関係ハイスペックだもん、俺」


ニヤリと不適に笑む篠崎先輩。

…そういえば俺もお腹空いたよー…。

お腹をさするとお腹が鳴る。

く…本当に腹減った…!


「…食べさせて上げようか…?」

「へっ!?」


迂闊!

真横に現れた篠崎先輩に、首に腕を回されてしまった!

マジくびり殺されると思ったが、篠崎先輩は何でかその密着した状態のまま、白玉団子を俺の口にぶち込む。

あ…陸の手作り白玉団子…うまし!


「おいしー…しあわせー…」

「もう一個食べる?」

「食べます!」

「最後の一個、はい」

「うぎっ!?」


篠崎先輩の野郎、ラストを自らの口にくわえて俺に差し出しやがった。

何故!? 意味わかんない!! ポッキーゲーム!? いやもうこれ立派な罰ゲーム!









「……」


「………っ」



あ…芦屋先輩がむっちゃ睨んでるーーーーー!!!?



「あぁぁの篠崎先輩、そ、それなんの冗談…」

『いらないの?』

「!?」


頭の中に声が!

篠崎先輩、こんな魔法も使えんのかよ…!


『陸が作ったお団子…俺がリクエストしたんだから、本当にこれが最後だよ?』

「くっ…」


眼を細めて笑む篠崎先輩。

なんという…魅惑の言葉…!

陸に篠崎先輩がリクエストした、白玉団子…!

陸が作ってくれた白玉団子のラスイチ!!

しかしそれをゲットするには篠崎先輩のくち…くち…唇に…!


「……」

「むぐぅ!?」


痺れを切らした篠崎先輩が俺の口めがけて白玉団子…もとい唇を押し付けてきた。

濃厚で蠱惑的な甘ったるい匂いと、団子の甘味と、篠崎先輩の柔らかい唇の感触………。



「…………………」

『……将也のやる気を削ぐような事しないでくれない?』

「面白いし」


両手両膝を…つく。

ああもうやっちまった…俺の意思じゃないけど…やられちまった…!

すまない陸…陸の作った白玉団子の誘惑に…俺は負けてしまったんだ…!

美味しかったです、ご馳走様でした…!

断じて篠崎先輩の唇に対してではなく…!


「それにしても…魔王の魔力って思ってたより全然美味しい…もうちょっと欲しいくらい」

「ひぃ!?」

『……(トラウマ植え付けられとる…)』


顔を近付けられ、思わず後ろにのけぞってしまう。

魔力!? 俺、魔力も取られたの!?

なんか大事な物まで奪われたばかりか、魔力まで!?

怖い! 篠崎先輩怖いよー!


「そんな逃げることないじゃん? 同じ魔王だろ?」

「…え…!?」


…魔王…? 篠崎先輩も、魔王の素質があるのか…!?

のけぞっていた俺の上に這うように…身体を密着させて顔を近付けてくる篠崎先輩に…聞きたいけど…身の危険の方が上回ってるー!


「…いいコト教えて上げるよ…」

「いいぃぃぃいいコト!?」

「そ。すごぉく…いいコト…」


着流しの隙間に細くて白い指が入り込んでくるぅー!

篠崎先輩の着流しが襟元からはだけていくぅー!

ちょちょちょちょちょちょ…!

いいぃいいコト…いいコト!?

いいコトってまさか、まさかあっち的な意味の、いいコトでは…っ!?









「魔王の闇魔力ってスッゴい濃厚で…甘くって美味しいんだよ…? つまり…俺の魔力もお前にとっては絶品の…至高の味……一度味わったらきっと病み付きになる…」

「…は…、…は…?」


確かに、甘い匂いが立ち込めている。

神経が痺れるような甘くて濃厚な匂い…。

覗いた赤い舌が、ねっとり唇を舐め上げる様子がヤバいくらいエロい!

待て、俺、忘れてはいけない!

篠崎先輩は男篠崎先輩は男篠崎先輩は男篠崎先輩は男篠崎先輩は……っ。


ああもうクソッ…、司藤先輩が高嶺の花って言われてた理由がなんとなく分かりました…!

司藤先輩にそっくりな篠崎先輩がエロ過ぎる…!!



「は・る・か!」

「……なに?」



しかしそこに救いの神、もとい二次災害!

芦屋先輩が腕を組み、邪悪なオーラ出しまくりで仁王立ちしてきた!

あ、なんかこれ…俺、巻き込まれるパターンじゃない?


「…いたいけな年下をからかうのはやめろ」


…と言いつつ芦屋先輩、眼が完全に俺に対して「死ね!!」って言ってるよー…!?


「凪には関係ないじゃん。…俺が誰と身体を重ねようが、オトモダチの凪になんか関係あるわけ?」

「……」

「・・・・・っ(いやぁぁぁぁああっ)」


芦屋先輩と篠崎先輩、本当にどんな関係なんだよ!?

芦屋先輩はメッチャ睨むし、篠崎先輩は芦屋先輩を睨んでるし…!

俺完全に変な状態に巻き込まれてるんですけどぉぉ!



「…なにしているのかな、小野口将也くん」


「…え?」



一難去ってまた一難。

二次災害の次は三次災害…。

いつの間にか…いや、時影さん、我関せずで結界破りに精を出し、見事結界を破ったらしい。

………、…もう…ほんと…なんというか……。



「…いや…あの…陸……こ、この状況は…その…違うんだよ…?」

「なにが違うのかな小野口将也くん」

「お…俺は…別に…ほ、本当に結界破りの練習してたわけで…ね?」

「とてもそうは見えないな小野口将也くん」



ああああああああ…もうううううう!

涙が止まらないよーー!!









「はうあっ!!」

「お腹いっぱいになったら眠たくなってきたな……陸ぅ…俺、今夜どこで寝たらいい?」

「客間、椿の間を使って下さい。準備終わってますから」

「オッケー、お休みー」

「・・・・・っ」


俺の胸に唐突に頬を乗っけてきたから何事かと思ったら……!

陸に本日の寝床を聞くと、さっさと立ち去っていく篠崎先輩。

なんでか俺を睨み付けたままの芦屋先輩も、椿の間の隣の部屋に布団が用意してあると陸が伝えるや踵を返して行ってしまう。

………あ…嵐…!


『………』

「……」


ボテン、と頭の上から限界を迎えたトリシェも落っこちてきた。

時計を見ると…もう22時過ぎてる…。

…一週間…寝ていたらしい俺としては、全く眠くはないのだが…。

あと………俺の元カノが物凄い睨んでるから微動だに出来ないんだがーっ…!!


「…あ…あの…陸……」

「おやすみなさい」

「……………………」




俺悪くないのにぃぃぃぃぃぃ!!









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