神様と戦うって、精神的にも命懸け!
たった一歩で一気に奴の間合いギリギリに入る。
俺の魔槍は闇属性。
月科先輩――龍神・麒麟の長は陸やトリシェと同じ光属性。
その力を奪った八草の刀は、光の力を纏ってる。
闇は光で強くなり、光もまた闇に覆われる事で更に強力に輝く。
けど、八草沙幸…お前のその輝きは他人から力ずくで奪ったもの。
そんな偽りの輝きで、歴代最強クラスの俺の闇に勝てる訳あるか!
「でぇやああぁ!」
「…っち」
一振り、横へ一閃。
俺が魔槍を振っただけで壁が綺麗に斬れた。
八草は残念だが斬れませんでした。
腹から下、真っ二つに出来るかと思ったが『天地ノ尊』の加護に阻まれた。
『…将也…やっぱり先に支配神を…』
「っ…目の前の敵優先!」
『将也、無駄だ! 麒麟は信義を司る神獣! あれは古の三大女神と『命を守る』約束を交わした龍神だ! あの神剣を奴が持っている時点で、殺すのは無理だよ!』
「…くっ!」
…月科先輩の、光の加護の力…いや、もはや理か…っ!
あんな奴にその力が悪用されるなんて…!
「どうした、これで終わりとは言わんだろうな!」
「お前なんかにっ…!」
「その言葉はそっくりそのまま返してやる……お前なんぞにあの神子は過ぎる! 諦めて死ね」
「…ふざけんなぁ!」
俺に陸が過ぎる子なのはわかってんだよ、こんちくしょー!
「そろそろ俺の相手もせぬか…魔王の雛」
「……!?」
真後ろに物凄い気配。
今の今まで感じなかった…!
支配神のノコギリみたいな大剣が、思い切り胴に食い込む。
「づえっ!」
胃の中逆流するかと思った!
壁と床の間だに叩き付けられ、吐きそうになった。
「………あり…?」
っていうか今の俺の方が胴を真っ二つにされてる勢いだったよね…?
あの剣、どう見ても模造刀の類ではないだろうし…。
けど、怪我らしい怪我は見当たらない。
「…頑丈になってる…?」
『おい、気を付けろよ! 今のちょっと痛かったんだけど!?』
「あ…すみません…」
……真っ二つにされそうな事態が「ちょっと痛かった」…なんだ……。
…こ、これが幻獣ケルベロスの“鎧毛”……すげぇ…!
『将也前!』
「あぇ?」
橘に言われて顔を上げる。
でっかい…火の玉ぁ!?
「いっ!」
両手を咄嗟に顔の前でクロスさせる。
じゅわ、と呼吸が一気に苦しくなった。
…けど…身体は全然あっつくない…?
「…………」
『んもー! 将也迂闊』
腕を外す…どこも燃えてない。
俺の周りがすっかり壊れて燃えてるけど…全然平気だ…。
「が…鎧毛、ッぱねぇっすね…橘さん……」
『…当たり前。俺たち幻獣ケルベロスは竜が主食なんだよ。…竜のブレスにも耐えられる、そういう毛質なんだから、人から派生した神の生半可な魔法如きじゃ毛先も燃えねーよ』
「………」
『……さっきの王苑寺の…あの兵器…MAX状態はちょっと喰らいたくはないけどね……』
…と、補足が入った。
…王苑寺先輩……神様の使う魔法より強力だったのか……お、おっかねぇ人だ、本当に…!!
『毛がビリッとしそうで』
「静電気かっ」
「なにを一人で百面相している。そんな余裕をかまされると腹が立つな」
え、橘の声って俺にしか聞こえないのか!?
「っと、あぶねぇ!?」
八草の刀の一振りを、なんとか避けて距離を取る。
本当に身体が軽い!
いつもなら避けられなかったかも…。
『将也、油断禁物! 上!』
「うっ!」
相手が神と神の力を持った奴なの忘れていた。
上を取られ、ノコギリ大剣が振り下ろされる。
咄嗟に右腕で頭を庇おうとしたが、左手が勝手に動いて魔槍で大剣を受け止める形になった。
…また、橘に身体が操られたっぽい。
「獣に助けられている感が否めぬな、魔王の雛。そんな事では長生き出来ぬぞ!」
「うるせーよ露出狂の変態神! 全身のあらゆる毛全部抜けて苦しんで死ね!」
『う…うわぁ……』
橘が引ききった声を出すが、別にこれは俺が考えた台詞ではありません。
でもなんだろう…トリシェがこいつが嫌いな気持ちが今、すっごい分かる!
なんか嫌なんだ、なんか!
足下がビシビシっと音を立てて歪んでいく。
廊下が崩れそうだ…まだ壊れないって事は多分ここが最下層なんだろうけど…!
「………はっ…」
パサッ…と支配神の腰布が重力と剣圧でちょっとだけずれる。
支配神は俺の真上に居るわけで…だから、俺が“ソレ”を見てしまったのは…偶然たまたまうっかり誤って…な訳なのだが…。
「パンツ穿いてねぇのかよー!?!?」
『……』
「?」
絶叫…だったと思う。
俺の叫びに、不思議そうに顔をしかめた支配神。
あまりの衝撃に腕の力が抜ける俺。
そんな大ピンチな俺を助ける為、橘が転移魔法で状態脱出させてくれた。
たどり着いたのは研究所の屋上……雪は降ってるが暖かい。
身体は暖かいが心はなんかすっごく寒い…!
「…ノーパン………神様ってノーパンなのかよ…ありえねぇ……う…うおえええぇぇぇえぇっ…!!」
『まーまー、パンツ文化のない世界もあるって。そんなヘコむなよー、見慣れたモンだろー?』
「そんな問題かっ!?」
元気づけようと言ってんのは分かるけど、野郎のモツ見てヘコまない男は少ないよ!
お茶の間の皆さんに謝れ、支配神!
…クッ…なんという威力…聞きしに勝るとはこの事だ…!
「…つらい……」
『……あんな事で戦意喪失すんなよ…』
「全くだな」
まるで幽霊みたいに床をすり抜けて、支配神が現れる。
下からの意味不明な“イタズラな風さん”
腰布ヒラヒラやめろぉぉぉ!
なんだその不必要過ぎるチラリズムはあぁぁっ!!
「この俺の、この世で最も高貴な一物を眼に出来ただけでも有り難いと思わねばならぬというのに…」
「寝言抜かすな変質者!!」
「ほう…そこまで言うならば試してみるか、魔王の雛よ? …貴様のその顔…見ようによってはあの英雄神に見えなくも…」
「だ・ま・れ!」
高貴なとか何言ってんの。
本気で楽しげに笑いやがって、むかつくぁー!!!!
「トリシェが支配神嫌いな理由が物凄くよく理解できた! キモい! ムカつく!」
『落ち着けよ。挑発に乗るな。冷静に、クールになれよ』
「冷静とクール意味同じだから!」
『突っ込む時は元気なんだけどなー…いまいち戦いの経験不足というか…』
「普通神様と戦う事とかねーじゃん!?」
『あ、それはごもっとも?』
「楽しそうで妬けるな」
『前!』
「はっ!」
真っ正面から、大剣を振り上げた支配神が残像を纏いながら近付いてきた。
また咄嗟に橘が俺の身体を操作して、槍でそれを受け止める。
お、重い!
『…もう…ホント、面倒くせ!!』
「!?」
ミシ…と地面に圧…。
服…橘の形が変わる。
なに!? 橘どうした!?
『いい加減、本気でやるよ…!』




