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毒デレ!  作者: くらげなきり
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トリシェ連れてくれば良かった…。





施設の中に(セキュリティー? 王苑寺先輩の前にそんなものは通用しませんよ…)入るや、王苑寺先輩は空中で画面を取り出した。

ん? 表現が分かりづらい?

えーと、王苑寺先輩は未来人なのでホログラム的なものを平然と使い始めるのです。

なので俺は、いちいちそういう技術にツッコミとか入れないよ…。


「広いな…」

「陸の居場所、分かるんですか?」

「…ああ、あいつに渡したバイオキメラは此処にある。脳波も検出出来た。間違いなく此処に居るな」

「…………」

「…なんだその顔」

「…ま…まさか俺の黎明も…」

「当たり前だろ」

「…………」

「心配しなくても悪用はしてねぇよ。…そもそもただの副産物だし、興味ねぇし」

「そ…それはそうかもしれないけど……、…あれ…でも…陸ってバイオキメラ持ってたんですか…?」


初耳…!

それに、陸…ピアスも腕輪も、してなかった気が…。


「神社の巫女だから、籠手形に作ってやった」

「あ、してた! でも両手だった!」

「そりゃ片手じゃおかしいだろ…」


制服の時は中指の止めを外して袖の下にしまって、インナーの袖みたいにしていた!

あれ、バイオキメラだったのか…!?


「発動したとこ…見たことなかったから…気付かなかった…!」

「…教えてやろうか? あいつのバイオキメラの動物…」

「あ、知りたいです」

「うさぎ」

「かわっ…!!!?」


う、うさぎ!

かわいい!! ばかやろう可愛いなチクショウ!!


「……(キモいな…)」

「…(そりゃ峰山もこんなのの前で迂闊にバイオキメラ使えねぇよな…)」

「あははっ、お前動きとかきもいねぇ〜!」

「ひ、ひどっ!?」


橘と王苑寺先輩が冷め切った眼で俺を見ているのは気付いたけど!

木吏さん、無垢な笑顔でさらりと酷い!


「あ? …見つかったな」

「え…」


遠くから警報みたいなのが鳴り響いて、その音はどんどん近づいてくる。

高さ50センチくらいの機械が猛スピードで近付いてきた。

Uを逆様にしたような形で、先端から横に棒が突き出ている。

あ、あれ危な…当たったら絶対痛い!


「警護ロボか…めんどくせぇ」

「え…先輩…!?」


…この人は魔法少女か何かか?

何もないところから、ロボアニメでロボが使ってそうなサイズのライフルを取り出したぞ。

前方がライフルで見えません。


「……あの…」


そして無言で発射。

轟音と壁に跳ね返った超強風。

室内気温が一気に跳ね上がり、風は熱風になって後方の俺たちに襲いかかってきた。


「う!?」


酸素不足で窒息死する!?

って思ったが、橘が自分の作った球体バリアに俺を入れてくれた。

本当に、九死に一生かと思いました。








「…こ…こんなムチャクチャな“人間”居るもんなのか…」


橘が割とガチで呟いたのを、轟音の中…聞き取ってしまう。

王獣種…幻獣である橘が、うっかりそう本音をこぼしてしまったのだ。

警護ロボ如きで廊下どころか壁まで貫通し、お外の涼しい風が雪とともに舞い込んでくる。

おかげでジクジクと熔解した廊下が、いい感じに固まっていく。


「………王苑寺先輩」

「なんだ?」

「なんだじゃないです…道なくなったじゃないですか……」

「目的地は地下だ。丸見えでいいだろうが」


…確かに。

丸見えたですが…。



「行くぞ」



…俺、生きて帰れるかな…。

そう思いながら地下の廊下に飛び降りた。

ボタボタ垂れ落ちる熔解したコンクリを避けながら、王苑寺先輩の後ろをついていく。


「………」

「先輩?」


立ち止まった先輩の、前方に現れたのはまるで開発中のトンネルの入り口。

バカでかい扉はほんの少し開いている。


「…俺ら、そんなに下…降りてませんよね…?」

「一階と二階、それと地下一階と二階がぶち抜いている…。この第七研究所は深海生物の研究を主にしている…水槽でも入ってんだろう」

「…深海生物ぅ?」

「人間が到達出来ていない、未知の領域に住まうのが深海生物だ。山は努力で人間が踏み込める…だが海の底はそうじゃねぇ…。世界一でかい山がてっぺんまで沈むほどの割れ目が世界中で確認されている」

「その研究…ですか」

「…名目上は、な…」


名目上ってのは、その扉を潜り抜けて実感できる。

でかい水槽の中には下から生えた鎖に繋がった一人の人間。

その手前に二人の男。

あれ…? あの二人…!


「…片森…? お前なんでこんな場所に居やがる!?」

「王苑寺…! そっちこそ………あ…さっきの爆音お前か…!」


長方形のやたらでかいモノ(扇子っぽいけどでかさが半端ないよ?)を持って、そこに居たのは…いつぞや陸と王苑寺先輩のケーキを取りに行った時、会ったパティシエ!

その横に居たのは…玖流正宗先輩…!

はぁ!? なにこの組み合わせ…!?


「…………」


そしてコポ…と水泡が鳴る水槽の中の人間。

暗くてよく見えない。

でも人間だ…形は。

鎖に繋がれて水に揺られている。

普通に考えると…死体だけど…、場所を考えるとなんかヤバいモンなんじゃ…。


「…お前、なんでこんなとこに居んの?」

「…は? …お前、峰山を回収しに来たんじゃないのか? 輪廻の神子の、道守なんだろう?」


みちもり…?

は…初めて聞く単語…。


「陸…居るの!? ここに!?」

「知らずに来たのかよ…なにしに来たんだてめぇ」

「俺は玖流に頼まれて…人助け! けど、どうしたもんかと思ってて……」









と、パティシエさんが見上げたのは…あの水槽に漂う人間らしき物体。

…成る程、この水槽から出すには骨が折れるね…。

っていうか生きてんの、アレ?


「…陸が来てたのか…なら悩んでる時間もないよな……やっぱり水槽をぶっ壊して…!」

「お前は馬鹿か。水量考えろ…! 水浸しなんて可愛いレベルじゃねぇぞ…!」


……やっぱこの人、こえぇ…!

なんという考えなし…!


「…それに、あの液体“水”じゃないしね…」

「え…!? そうなのか!?」

「人間の嗅覚じゃわかんないかもしれないけど…薬品臭い……」

「くちゃーい」


ケルベロス兄弟の主張で、水槽の中の液体は水ではない事が発覚。

迂闊に潜って助けるとか、王苑寺先輩の“火力”で液体を蒸発させるとかも危険っぽい。

まー王苑寺先輩の火力蒸発は中の人も死にそうだしね…生きてれば。

本当は…早く陸を助けに行きたいけど…!


「……」


困っている人を…陸は絶対見捨てないし……きっと陸なら助けたいって言うに決まってるもんね。


「普通に排水も時間食いそうだしな…」

「王苑寺先輩、先輩のバイオキメラなら…!」

「…しゃーねぇなぁ…」


兵器であるバイオキメラは武器の他に、持ち主のイメージ動物を具現化する機能がある。

イメージ動物ってなんぞや、と思ったが…王苑寺先輩曰く「なんか動物って癒されるだろ」…と、意外な一面と共に謎を深めて下さった。

しかし陸はうさぎ…と聞いたとき、その意味が理解出来た…!(※多分違います)

俺のバイオキメラ…黎明の動物型は鷲。

さすがに水の中の人間一人引き上げるのは鳥じゃ無理!


しかし王苑寺先輩のバイオキメラ…動物型は―――




「バイオキメラ…大蛇」



…もう動物ではないとかいうツッコミはなしの方向で。

八つの蛇が歪に絡み合った幅だけで三メートルある大蛇の群。

これが王苑寺先輩のバイオキメラ。

絡んでいた蛇が自力で解けて、水槽を伝って登っていく。

う…うわぁ…気持ち悪い…!


「うわぁ…気持ち悪…」

「キモッ! 蛇キモッ!」

「……俺は別にシカトして先に進んでもいいんだぜ…!?」


橘もパティシエさんも素直過ぎる。

そうした中、八匹の蛇達が水槽の中に入り込み…鎖を噛み千切り…捕らえられた人を水槽の外に出した。

再び絡み合った蛇達の中心に乗せられ文字通り落下してきた人はぐったりと横たわったまま…。


「…K…!」


落下してきた蛇達が赤い煙になり消えると、玖流先輩が駆け寄って助け出された人を抱き起こす。

薄暗い通路の光で、その人が青い長髪で………酷く、見覚えのある顔だったのに気付いた。



「……………」



生前の姿を具現化した時のトリシェに……その人の顔は気味が悪くなるほど…酷似していたのだ。







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