初利用、初体験…いや、初対戦?
「…………うぅ…つっ…疲れた…」
「お疲れ様、ケイトくん! ってあせびは労いの言葉を言ってみるの」
「…っていうかあれだけ収録したのに生放送に縛られる年末年始ってなんかおかしいような…!」
「はいはーい! あせび、今度ケイトくんが出るドラマのヒロイン役やるからよろしくお願いしまーすってあせびは唐突に番宣してみるのー!」
「本当に唐突だな! しかも今別にカメラ回ってないし!」
差し入れのお菓子スペースに集まった出演者一同が爆笑の渦。
いや、ここ笑うところではないでしょ…!
っていうか…あんまりバラエティーに呼んで欲しくないなぁ…。
俺…というか『鳴海ケイト』はバラエティー向きじゃないし。
「楽しみなんだね、あせびさん」
「うん、あせび初めてのドラマなの! ってあせびはワクワクを主張してみるの」
「…いいなー…アタシもドラマ出てみたいなぁ」
………紹介します。
今あせびさんと会話中のピンク頭美少女、名前を南野なこなさん。
『オールジャパン・ベストアイドル賞 女性の部』という日本一のアイドルに贈られる賞を受賞した事もある、日本を代表する美少女アイドル。
…なのだが…彼女は事務所の社長が脱税で逮捕され、ウチの事務所に引き抜きでやってきた。
今は沙上さんのグループ『Prince:Dona』のメンバーとしてヴォーカル(沙上曰わく歌姫)の一人を担当しておられます。
来年からは『Prince:Dona』から派生した新グループ『princess:Dona』の一人として活動をしていくそうです。
見た目は可愛い系で活発な女子だが、割とがさつで格闘オタクという裏の顔を持っている。
ウチの事務所に来て真っ先に泰久が『空風マオト』だと知るやいなや「こんな奴が空風マオトだったなんてショック! ファンやめる!」と言い出し、泰久を酷く傷付けるくらい…無神経な女だったりもする。
泰久は俺や直と違って『空風マオト』はあくまでも『ファンの為の芸能人』として演じているのだ。
アイドルを好きなファンの為に……そんなアイドルの鑑のような泰久を無神経に傷付けて…!!
「………(自分だってアイドル演じてるくせに…)」
「ケ…ケイト、なんか負のオーラ放ってんだけど…」
「別に」
…そもそも泰久って、元々はサッカー選手だったんだよね…。
でも一人、ずば抜けて優秀過ぎて、チームメイトに敬遠され、嫉妬で嫌われてきた。
だからわざと怪我して、サッカーは辞めてしまったんだって…。
なんというか、泰久って…本当に人を気遣い続けてたみたいだ。
その後、怪我の治療中にあの社長に見つかり無理やりアイドルにさせられたって言ってた。
競争社会で、争う事が苦手な優秀な人材って行き場がない。
戦う勇気を引っ込めてしまうくらい、優しい人間だって世の中には居るんです。
「……ケイトくん、あせびね、ドラマ初めてなんだー」
「へー」
「…だから、色々教えてね? ってあせびは聞いてみるの」
「僕に言われてもね」
「なによ、冷たいわね。…まさかホモって噂…本当なんじゃ……」
「…なにそれ…僕、ホモって噂あるの?」
「マオトくんとデキてるーとか、リントくんとデキてるーとか、あせび聞いたことあるってあせびは報告してみるの」
「…ない…」
「な、なんだ……よ、良かった……(沙上が狙われたらどうしようかと…)」
「ケイトくんは彼女居るのー? ってあせびは聞いてみるの」
「黙秘します」
「黙秘って事は、居るの!?」
「黙秘しまーす」
っていうか…この二人…なんで俺にまとわりつくの…?
他にもアイドルとか芸人とかモデルとか俳優とか色々いるんだから、そういう人達と交流を深めろよ。
「……もう、いーわよ! ケイトのばーかっ」
「…………」
ほんと、なこなさんって失礼だよなー…。
これで女子アイドルトップなんだから世の中分からんね。
…やっぱ陸が一番だな、品もあるし、優しいし可愛いし!
…その分、競争率高くてつらいんだけどさ…。
「…あ…そうだ、あせびさん」
「なぁに?」
「売って欲しい情報があるんだけど……」
「……いいよ」
ニヤッと笑んだあせびさん。
次の現場の楽屋で、メールで売って欲しい情報について依頼をした。
『神殺しと篠崎遥、輪廻の神子に関する情報はありますか』…と。
………電話がかかってきやがった。
「もしもし?」
『もしもし〜? ケイトくん、だめだよー、『神殺し』と『輪廻の神子』の情報はトップクラスの超高額取引対象だよー! ってあせびは報告してみるの』
「…超高額取引対象…?」
『うん、情報取引するのに圧がかかってて、あせびみたいな中堅には手が出せないんだ、ってあせびは報告してみるの』
「……それって…つまりあせびさんじゃ分かんないって事?」
『ごめんね…そういう事ってあせびは報告してみるの…。…むしろあせびは『神殺し』と『篠崎遥』と『輪廻の神子』に繋がりがあったなんて初めて知ったよー…ってあせびは報告してみるの…』
「………」
…この場合さっきの料金って帳消しに出来るのかな…?
情報は欲しかったけど…。
『どうしても必要で金に糸目をつけないなら、あせびより上の情報屋さんをご紹介するよってあせびは提案してみるの』
「……具体的にどのくらいかかるの…?」
『情報にもよるけど…あせびが知ってる人で『神殺し』と仲が良くない人とかなら安くしてくれるかも。情報屋さん業界でもトップの人だから、情報の信憑性も高いよ!ってあせびは紹介してみるの』
うーん…トリシェは20時30分な時点でご就寝だし…全く今時小学生でも起きとるわ!
…情報は欲しい…、もう新年明けちゃったし…。
「分かった、紹介して」
『リョッカーイ! 今連絡してみるね! 多分すぐ連絡くると思うから待ってて! ってあせびは依頼してみるの』
…次の仕事まで30分ないんだけど大丈夫かなぁ…。
「うわ、速!?」
あせびさんの電話から5分もしない内に知らない番号から電話かかってきた!
おっかなびっくり電話に出る。
『初めまして…ワタシは『魔女デネヴ』…。依頼された情報は高額だけど大丈夫かしら?』
「……あ…えっと…」
なんだ、この声…ヘリウム?
出だしからなんかヤバそうな…!
「ちなみに幾らくらいなんでしょうか」
『…具体的な内容にもよりますが……とりあえず何が知りたいのかしら?』
「…俺が知りたいのは…篠崎遥が輪廻の神子に身代わりになってもらおうとしているらしいって事で…それについて分かることがあれば知りたいんです」
『…残念だけど、その情報はどんなリストにもないわ。オーダーする?』
「オーダー…?」
『他の情報屋に依頼を共有し情報を募る事……あるいは調べるのが専門の情報屋へ調査を依頼する事…よ…。君、情報屋の利用初めてなのね』
「…あ…はい…すみません」
クスクスと電話越しで笑われた。
…くぅ…なんか恥ずかしい…。
『謝らなくてもいいですよ…フフ、警戒したけど…その必要もなかったみたい』
「!?」
突然声が可愛らしい女性のものに変わる。
け、警戒されてた?
あ、ほ、本当に女の人だったんだ?
『…改めて初めまして…私は『魔女』…さて、小野口将也くん…君の知りたい情報を私は知らない。プロとしてそれはちょっと申し訳ないから…代わりにイイ事を教えてあげちゃいます。大丈夫、これはプロの情報屋としての…ちょっとしたプライド…だからタダ』
「……っ」
な、なんで俺の名前…!?
あせびさんは鳴海ケイト…芸名しか知らないハズ…!
…そしてなんか『魔女』さん…声可愛いけど色っぽい…!!
思わずドキッとしてしまいました!
『君の大好きな輪廻の神子、今日…『神殺し』とデートしてましたよ。場所は南西区のとある研究所…。…あら、おかしいですね? まだ帰宅したご様子がありません』
「………!!」
クスクスと…妖艶な笑い声…。
けど、言ってる事は笑えない…!
陸が、あいつと…デート!?
研究所に入ったまま…出てこない…だと!?
「研究所ってなんの…!? 南西区のどこ!?」
『ここから先は別料金…』
「くっ」
情報屋…えげつねぇ…!!




