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毒デレ!  作者: くらげなきり
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『英雄契約』





橘の奴、俺が魔王化…つまり堕淵したら一緒に堕淵してしまうだなんて…聞いてない…!

トリシェは知っていたのかと聞くと、獣の世界の事は分からない…らしい。

ならばやはり神楽さんか千歳さんに聞こう…!

知らない事で後悔するのはもう嫌だ。


なので…。



「英雄契約について、教えて下さい!」

「将也は勉強熱心で良い子だな。良かろう」

『神楽兄様、ぼくにも教えて下さいっ』

「ん? 千里には些か早いように思うぞ?」

『…でも、ぼく栄治に命を助けてもらった事があるんです…。だから…』

「……そうか…それではやむ終えんな…」


ちょこちょこ俺と神楽さんの間に歩いてきた子犬は、最年少ケルベロスの千里。

…飼い主の神野栄治も多少距離はあるが、話の聞こえる位置まで寄ってきた。

……、…俺に対する安全上の距離か…?



「……まず我ら一族に限らず、王獣種が他の種族と交わす契約の種類について説明をしておこう。細かいものを合わせれば数百種類にも及ぶが、しかしそれらも大きく三つのタイプに部類される。共闘契約、守護獣契約、そして英雄契約だ。…まず共闘契約…これは名の示す通り、利害関係の一致や、敵対者が同じだった場合などに使用する契約だ。特徴としては複数の個体で契約する事が出来るだけでなく、能力の共有化、身体強化…等、戦闘に関わるあらゆる事に特化した契約といえる。俺と優弥は那音を守るという共通認識から、この共闘契約を交わしている。…共闘契約について簡単に説明してみたが、なにか質問はあるか?」


…なんという授業チックな状況…。

いや、分かり易くていいんだけど……。


「はい」

「うん、なんだ、将也」

「神楽さんは今、那音姉に霊剣…つまり能力や生命力の根幹の半分を貸してるんですよね…? …その状態で、ゆー兄と一緒に戦ったりってどんな感じなんですか…?」

「んー…具体的には特に問題はない。一昔前の自分に戻ってしまった…という感覚なんだ。優弥は武人としてそれなりの実力があるから、俺を武装として纏い身体強化したとしても、ほとんど何の問題もなかったよ」

「武装、って…あのなんかコスプレみたいな格好になる事ですか…?」


それは今年の峰山神社の夏祭りに見掛けた、ゆー兄の戦国武将コスプレみたいな姿の事であります。

那音姉が全力でキャッキャウフフとカメラを構え、戦闘中に追いかけ回していたが為にゆー兄が思いの外、陸んちの敷地内破壊しまくる結果になった事件。

そもそも何と戦っていたのか…那音姉を狙った他界の神様に、神気を持つ神楽さんを“武装”…つまり衣類として纏い対抗したらしい…。







幻獣ケルベロスの特質、というか、橘がトリシェに蹴り飛ばされても無傷だったのには『鎧毛』という毛質が関係している。

人間が生み出す硬質物など比較にならない硬度と、対魔、抗魔など…とにかくあらゆる力に対して圧倒的な“守り”の役割を果たす…ケルベロスの毛皮。

人間の扱う魔法や魔術、兵器の類も毛一本燃やす事は出来ないと言われている。

契約する事でゆー兄がその能力を共通した結果があのコスプレ…。

見ていた方は…ゆー兄ついにやっちまったか…と思ったが…。


「こすぷ…れ? なにかの職業か…?」

『職業っていえば職ぎょ…』

「あ…なんでもないです……次、お願いします…」


トリシェの口を塞ぐ。

知らない方がいい事も、世の中にはあります…。

というか…神楽さんには知らないままで居てほしいな…何故か…。


「…では、次に守護獣契約について簡単に説明しよう。守護獣契約は、獣側…要するに我々のような王獣種等が、何らかの理由で弱者種族……例えば人間などに、誤って与えなくても良い損害や危害、または恩義などを与えてもらい、それがある程度評価に値する…と断定出来た場合…守護対象として契約を交わす事が出来る。…だが従属化するわけではないし、損害や恩義に報いたと契約獣側が思えば一方的に解消する事も可能だな。それと、特殊例だが王獣種同士で正式な決闘を行い、勝利した側が敗した側に強制的に守護獣となるよう強要する契約も含まれる…。あまりある事ではないが…」


「ち…千歳さん!?」



急にバキッと嫌な音がしたと思ったら、千歳さんが泰久の脇でテーブルを握り潰していらっしゃった…。

…木製の…新品でツヤッとしていたテーブルの端っこがぐちゃぐちゃに…!

え…な、なんで…!?



「アルバート・アルバニスめぇぇ…っ」

「千歳さん!? あ、あの…どうしたんですか…?」


「…………」

「…千歳………。…すまん、付け加えると…王獣種同士以外…例えば半神半人や仙人など神に近い人間や神など、自分よりも強い者や格が上位の者とも…守護獣契約は交わす事も出来る」

『お前の兄ちゃん、なんか一人でキレてんだけど…』

「…うむ…俺には同腹の弟が一人居る…、…千歳には末弟だな…、…椿というのだが………椿は半神半人の人の王と正式な決闘に敗して、王のものとなっている。…一族からは除名の扱いだ。…千歳はそれがどうにもトラウマというか……とにかく許す事が出来ないらしくてな……」

『……それで優弥の側に最後の弟であるお前がくっ付いて面倒見てるのが心配で腹立ってしょーがなくなってんのね…』

「…まぁ…そうらしい…。なんの心配なのかは、よく分からないのだが……」

「…………」

『…………』

「……? な…なぜ怪訝な顔をするんだ…? 俺はなにか変な事を言ったか…?」








か…神楽さん、天然な人だなぁ…とは…思ってたけど……本物の天然だったんだなぁ…。

俺ですら神楽さん、ゆー兄と那音姉に肩入れしすぎというか…甘やかしすぎなんじゃない?…って思う事もある。

だって自分という存在が消えてしまうくらいの生命力と、その長い人生で高めてきた力をほぼ全て具現化させた霊剣で那音姉を助けたり…、一族の反対なんのそのでゆー兄の世話(半神半人の辺りの)してるし…。

俺がもし、千歳さんの立場…まあ、俺の場合ゆー兄だけど…ゆー兄が那音姉以外の誰かのために命懸けの無茶ばっかりしてたら絶対心配だよー…。

…ゆー兄にとって那音姉は、俺にとっての陸だから…ゆー兄が那音姉のために死ぬのは、きっと当たり前の事だけど…。

でもその相手が那音姉以外だったら……なんか嫌だもん。

あ、トリシェならセーフかも?


『神楽兄様…千歳兄様は神楽兄様が一族からいなくなってしまうのが心配なんじゃ…』

「……。…そういう心配か…。………、……そればかりは…安心させてやりそうにないな…」

『え…!? か、神楽兄様、まさか…!?』

「…長く生きているとしがらみが増えて息苦しくなる事もある。…特に俺は…他の兄弟より自由に生きすぎた。…優弥の事だけが問題ではない。いつか…俺は一族の名を背負えなくなるだろう。それは仕方がない事だよ」

『…神楽兄様…』

「…千里は…鎧毛に抜け替わり次第、この守護獣契約を交わしたいのだったな…? 命を助けてもらったのならば、その資格は十分だろう。だが、与えすぎてはならない。我ら一族は『理と秩序を守る番犬』…幻獣族最強の戦闘種族…竜を喰らい、悠久と永久の狭間に生き、弱き種族とは相容れぬ。同じ時間を過ごすことは出来ても、共に生きることは出来ない。志が同じでも、一族の誇りに反する様であればそれは堕淵…裏切りであり、罪悪だ。自分の存在を決して忘れず、蔑ろにしてはいけない」

『…………は…はい…』


…改めて、神楽さんって人間じゃないんだな、って思う。

幻獣ケルベロスの上級上位兄…威厳たっぷりです。


「……将也」

「は、はい」

「英雄契約とは、共闘契約・守護獣契約の上位に位置する絶対にして最高の誓約。…魂と魂で結び付き、例えどちらかが死のうとも、輪廻の先で必ず出会い…数多くの奇跡を齎したものだ。ただ奇跡と引き換えに王獣種は徳と格を失う事も多く、よほどの事がない限り誓約を行う事はない。王獣種が『その魂を永久に守り、添いたい』と認め、相手が『その存在の全てを受け入れる』事が出来なければ、交わすことすら出来ない未知の約束。…俺の知る限り英雄契約に成功したのはお前達が初めてだ」

「……………」

「…なにより強い絆と信頼、それがなければ英雄契約は交わせない」








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