南雲学園は西雲よりも不可解な学校です。
……という訳で一階レストラン!
すよすよとソファー席で眠る那音姉には、ブランケットがかかっている(絶対神楽さんだよね、さすが!)
刹那さんはもう居ないが、代わりに理音他、南雲学生組が…増えとる…だと!?
「………」
「あ、おはようございます」
「え? なーにー、このイケメン集団…? 理音ちゃんのハーレム…!?」
「ち、違いますよ…!」
驚く露姫さんに理音が慌てて否定する。
……俺もよくは知らない人たちなので上手く紹介は出来ないですが、ご紹介します。
ヤンキー風の、ピアス男子は理音の先輩の一人で確か…玖流正宗先輩。
もう一人の白銀長髪男子は同じく理音の先輩で…えーと、瀬能黎先輩。
二人共、三年生だったはず。
…見た目はワルと優等生だが、玖流先輩は面倒見がよく、人情深い人(理音談)で瀬能先輩は優しいし、強い霊感のせいで悪霊の影響を受けてしまい、いつも体調が悪い儚げな人(しかし怖い話でいつも理音をからかっているらしい)…との事。
加えて昨日のメンバー…、理音を筆頭にサッカー部エース、本気で口を開かなければ硬派で爽やかなサッカー少年…安曇駿一と南雲のハーレム王と名高い神野栄治…それから野性的な魅力でワイルドな感じだが、繊細な気遣いが出来る五十嵐北斗先輩と、見た目は直…いや、岡山リント並の超美少女風だが口を開けば超サバサバした男前の豪雹吹雪先輩…。
あとうちの元長男燈夜(…お子様にオールナイトは早かったらしくソファー席で爆睡しとる)
そしてゲーム中の橘と、勉強オールナイトな泰久(しかも半泣き)まで…。
…成る程…腹ァ立つな…、このイケメン集団。
「…うわぁ…」
昨日露姫さんたち大人組が散らかしたところは片付けてある…。
しかし南雲学生組の方はカラオケ・人生ゲーム・トランプ…色々散らかっとる…。
キッチンではまさかの神楽さん。
昨日覚えたてのパンケーキを人数分作っておられた。
「一晩中騒いでたのかよ?」
「そ、そこまで騒いでないもん!」
「更にここに将也まで加わるとは…やるわね、理音ちゃん…!」
『逆ハーレム強化中だね! 理音ちん!』
「違いますったらー!」
…理音…共学通ってるのに女子の友達とかいないんだろうか…?
…まぁ…一年の時に野球やりたさで、男のふりして入学して学校に通ってたし……そりゃ、今更女子の友達も出来にくいか……。
「朝食代わりにどうだ?」
「わぁ、パンケーキ! サンキュー神楽~! …あ、ねぇ、あんた歳いくつなの?」
昨日と同じ、完璧なパンケーキを露姫さんへ差し出す神楽さん。
唐突な露姫さんの質問にも笑顔で答える辺りさすがだ…。
「…さあ? …我が一族は歳など数えぬからな」
………さすがだ…。
「なによ、本当に年齢不詳なわけ?」
「人間の『時』の定義など世界によって違うからな。様々な世界を渡り歩く我が一族では、その様なものを一々調べたりはせんよ。知らずとも困らん」
「じゃー、大体どのくらい?」
「大体…? …さて…この世界の時の定義だと、どう言えば良いか………うぅむ…………、……、…二十万年…か?」
「…………。もう化石の年齢ね」
「…そうだな」
…………さすがだ……。
『ね? 絶対覚えてねぇって言ったっしょ? やーい、ジジー!』
「………」
あ、神楽さんがちょっとムッとしてるの、わかった。
っていうか、その言い方…トリシェ……子供かっ!
「おはようございまーす」
と、そこへお客さん……ではなく…また理音の男友達が現れた。
眼鏡の男子兄弟…。
「長谷部会長〜! 本当に来てくれたんですね!」
「タダ飯と聞いたら来ないわけにはいかないよ。はい、これ差し入れ」
「ありがとうございます!」
「…あれ? 小野口先輩じゃないですか。なにしてるんです? 峰山会長んちに居候始めたって聞いたのに…」
「…だから…なんで知ってるんだよ…!?」
…紹介します。
南雲の元生徒会長、長谷部真慈先輩。
現在大学生です。
もう一人はその弟で俺の後輩にして次期西雲生徒会長、長谷部光慈。
他人の個人情報にやたら詳しい不気味な奴である。
俺が陸んちに居候している事は、一年の役員たちには話していない…!
まさか情報屋か!?
西雲の新聞部は情報屋も兼ねてるって噂があるけど、実は柔道部もだったのか!?
「こ、光慈……まさか、お前この子の事が…!? 西雲生徒会はホモしかいないって聞いていたがまさかっ…!?」
「そんな訳ないだろ、兄さん。僕は人の嫌がる顔がなにより好きなんだ! だから色々ネタ握ってるだけだよ。特に顔の整っている人の表情が醜く歪む瞬間は最高だよね…! 美人美形の顔が歪むサマはまさに芸術品だよ…!」
「ああ、なんだそっかー…良かった」
「「いや、良くはないでしょ!?」」
俺と理音の台詞が被った。
長谷部光慈…なんて恐ろしい奴…!
長谷部元会長はそんな恐ろしい弟をナチュラルに受け入れすぎです!!
『…色々と歪んだ性癖の子だよね…神子殿、マジであの子を次期会長にするつもりなのかな』
「誰でも良いとは言ってたけど…人望のある会長が続いてたから、次にコレってどーかと思うよな…」
「あ、小野口先輩その顔です。その嫌悪と峰山会長への信頼からくる複雑そうな顔…最高です」
「お前は本当にムカつくな!!」
親指立ててやーがーる!
「あれ、柳瀬…遥の事も誘ったって言ってなかったかい?」
「はい。…でも篠崎先輩って基本自由だから…、…気が向いたら行くって……」
「あはは、遥らしいな」
と、新旧南雲生徒会長が和やかに会話をしている。
現れるか現れないか分からないが、この“篠崎遥”だけは解説しておきましょう!
…南雲学園高等部三年…篠崎遥(♂)
うちの生徒会元副会長、司藤由先輩の弟で、南雲最強最悪の奇人と名高い魔法使いだ。
とにかくひどい自由人で、俺は『燈夜兄に似てる』からという理由で殺されかけた事もあります。
しかし陸の実父、空さんは、そんな篠崎先輩を「理想の純和風美人」として趣味の写真撮影モデルにしたいと追い掛け回してる。
おかげで空さんは陸や理音にドン引きされ、立派な変態として殿堂入りを果たした。
また、南雲生徒会で最もデキる男…芦屋凪先輩の友人?でも有名。
うちの元生徒会会長、真壁懐先輩(現在長谷部先輩同様大学生です)とタイプの違う完璧超人と言われ、まともに釣り合う友人が出来なかった芦屋先輩を…むしろ振り回す勢いで…いや、実際振り回しているらしい。
とにかく変人!
頭のネジはトリシェより多く弾け飛んでいる!
下手したら王苑寺先輩の方が常識人に見えてくるくらい!
正直、俺もそこまで接点があったわけではないのに露姫さんより「この人なんか無理」と思った特殊な人!
…確かに和風美人なんだよね、あの司藤先輩の弟さんなんだから。
あ、司藤先輩は超ドぎつい系の和風美人な先輩でした。
一匹狼タイプで、真壁会長の人柄で生徒会副会長をやっていたような人。
…きっつい人だったが、儚げな感じでもあったなー…。
西雲で伝説になるくらい『高嶺の花』として(男に)モテたが、弟さん同様強力な魔法使いで一切隙が無く、告った奴は文字通りの火達磨と化していた。
今はどーだか知らないよ!
あとあそこのお家はウチや陸んちと同じくらい複雑みたい……。
司藤先輩と篠崎先輩は顔は容姿も背格好も似ているが苗字が違う。
司藤先輩は篠崎先輩を酷く嫌っていたし、しかし篠崎先輩は司藤先輩を「殺したいほど愛してる」と宣言していた。
…不気味な人だよね、篠崎先輩…。
多分俺と学年が近い学生はほとんど知っている存在……それが“篠崎遥”
昼間の時間で“篠崎遥”はイコール「ヤバイ」
知らないと命がない。
あるいは、危険な事に巻き込まれかねない。
存在そのものがイエローカード。
正直、そんな人を普通にクリスマスパーティーに誘うなよ!…と言いたい。
「って理音、あの変人もパーティー呼んだの? 俺、あの人苦手なんだけど……」
「大丈夫、篠崎先輩を得意な人なんか長谷部会長くらいだから」
「えー……」
「なんでみんな遥の事を苦手にするんだ? あんなにイイヤツそうそう居ないのに…」
「篠崎先輩と波長が合う人間はこの時代ではそうそう居ないんです…」
「イイヤツなのにな」
…と、篠崎先輩と波長が合うのは幻獣ケルベロス、皇に育てられたという豪雹吹雪先輩と五十嵐北斗先輩である。
一見女子中学生(下手したら小学生)にしか見えない皇を父親としている、このお二方は色々と人間らしい常識が足らないそうです。
…理音って、そういう…割と非常識系男子を引き寄せる引力でもあるんだろうか…。
陸もそういう引力持ってそうだけど!
もちろん俺の事も含めて!
「篠崎くんって、たまに峰山神社にバイトにくるわよねー」
「ふぁい…」
「え、そうなの!? あ、那音姉、おはようございますっ」
「オハヨー…」
那音姉起床。
…そういえば何故お店で寝ていたんだ那音姉。
いや、それより露姫さんの証言の方が今は大事だ!
あの奇人が、陸んちに来る!?
俺そんなの聞いたことないんですけどっ!?
「…ふぁぁ……、…なんの話ししてたのー?」
「篠崎くんの話し!」
「あー…篠崎くんねー……面白い子だよねー…。…おれ嫌われてるみたいだけどー…」
「そうなの? 篠崎先輩って、あんまりそういうのないみたいだけど……トリシェさん以外!」
「…いやー…なんか「光属性って嫌いなんだよね、綺麗でむかつく」んだってー…。陸くんは年下だからOKなんだってー…」
「あー…篠崎先輩、年下大好きだもんなー…。確か篠崎先輩も闇属性なんだよね?」
「らしいねー、陸くんが言ってたぁー…」
…篠崎先輩って年下大好きなの…!?
なら俺が殺されかけた件は!?
闇属性同士の反発かなんかなの!?
ほ、本当意味わっかんねぇ、あの人ー!
「那音、起きたなら部屋で顔を洗って来い。今頃は優弥も梅松を起こし終わって、覚醒させる為に殺し合ってるはずだから気をつけてな」
「ふぁーい…」
「ちょっと待って! なによそれどういう事!? 神楽あんた笑顔でなにサラッと物騒な事言ってんの!?」
「ん? …ああ、梅は目を覚ましてから覚醒するまでがまた長くてな…。俺が梅松の家に下宿していた頃は道場で毎朝半殺しにして起こしていたんだ」
「あたしそれ知らないんですけど!?」
「…ああ…高校大学の時は半殺しにしてからちゃんと治癒していたから、痕は残していないし…」
「神楽ああぁっ! あ、あんた、あたしの梅が死んだらどうするつもりよー!?」
「……那音…露姫はなぜ怒っているのだろう?」
「…大丈夫だよ、神楽…露姫もいつか思い知るよ…。…結婚した後とかに」
「だよな」
「梅ー!」
大慌てで三階の新居へ向かう露姫さん。
…確かにそんな話しを聞いたら彼氏の事、心配にはなるよね…。
……けど俺もちっさい頃、泊まりにきた梅松さんを翌日起こすのに必死なゆー兄の手伝いで……………すげぇ大変だったのを覚えているから…神楽さんの気持ちはよく分かるなー…。
『露姫ちゃんって梅まっちゃんの彼女なのに、彼の事起こした事ないの?』
「露姫も梅松も実家暮らしだからな、泊まりに行ったりはしていないそうだ」
「二人とも就職してないから、お金なくて結婚はおろか旅行も行けないって嘆いてたもんねー…」
『………そ、そう…』
…露姫さんと梅松さんが結婚してないのってそういう理由だったんだー…。
「…大人ってなんか大変なんだね…」
「え!? …あー…うん、まぁ……大変かなぁ……理音も彼氏には収入の安定した優しくて頼りがいのある人を選ぶんだよ?」
「うんっ! わかった!」
「………」
『………』
しかしそれだけで理音の彼氏は務まらないだろう。
何故なら理音には那音姉という怒るとちょっとシャレにならない怖さの姉と、ゆー兄という怒らせると命がないレベルで恐い義兄がいる。
「理音に彼氏が出来たら相応しいか、必ず試す」……俺はその言葉を聞きながら育ちました。
「・・・・・・・」
心なしか、理音の連れてきた一部の野郎どもの眼が…泳いでいるような気がします…。




