どーせ俺は頭のいい馬鹿です。
「………どうしよう…那音姉…お、俺……俺っ」
「うん?」
「お…れ……俺、陸がぁ……好きすぎて…死にそうだよぉ…っ」
未来が見える陸。
いつか光の王のものになる…。
陸は…優しいから、きっと俺に陸を嫌いになって欲しかったんじゃないだろうか。
俺が陸に無理やり付き合って、と半ば脅すみたいな言い方で恋人関係を始めた…あの日から、陸は一切俺に以前のように笑ってくれたり、優しくする事はなかった。
むしろすごくつっけんどんで、いつも俺を突き放そうとしてた。
他の誰かのものになる運命だから、俺が自分から陸を嫌いになるように…仕向けていたんじゃないか?
ばか、ならもっと上手くやれ。
即家から追い出すなり、距離を取るなり出来ただろ。
「うううーっ」
「なーにー? クリスマスなのに陸くんと喧嘩でもやらかしたのー? もー、将也は仕方ないなぁ」
よくこの話の流れでのほほんと俺の頭を撫で撫でしてくれるもんだと、那音姉には感服するよ…。
「…まぁ、将也はよく空回りしちゃう子だもんね。しかも意外と猪突もーしんだしっ! 猪突のもうしんは盲目に進と書いた盲進で!」
「な…那音姉…っ?」
「自分本位なとこもあるし、陸くんの気持ち確認してない辺り、最低だけど」
「ぐふぅ…!」
「…でも将也の素直なところは陸くん、絶対分かってるから…将也が陸くんの事をちゃんと思いやってあげたらきっと許してくれると思うよ!」
「…………」
…とりあえず言ってる事は正論です。
俺はひたすら陸に思いやりを貰ってきたんだもんね…。
ちゃんと、返していきたい。
俺のために居なくなるとか冗談じゃないよ、陸。
俺はもう、陸の居ない世界では絶対幸せに…楽しく笑う事なんて出来ないよ!
「………」
この世界を作った創世の女神。
こいつをなんとかしなきゃ陸も世界も救えない。
陸が犠牲にならず、世界もこのままで維持される為にはどうしたらいいか。
戦うのは多分駄目だ。
駄目っていうか無理。
俺はきっと勝てないし、例え勝てる見込みがあっても世界そのものを倒したらどうなるかなんて…考えるまでもなさそうだし。
戦わず、陸を助ける方法は……やはり…。
「…うん…」
「うん?」
「…創世の女神を説得するしかないよね…。陸も絶対、それを望んでる」
陸も争い事は好きじゃない子だ。
そんな子が勝ち目のない戦い…で、尚且つ勝てたところで世界滅亡な方法を望むはずがない。
月科先輩が陸に渡していた髪飾りには、陸の感情を創世の女神に伝える効果があるらしく、陸の慈愛の心で創世の女神の考えを、少しでも変える事が出来ないものかという作戦だったんだって。
毎日ずっと着けていたけれど、陸が八草にしょっちゅうちょっかいかけられていたから…多分あんまり効果なかっただろう。
月科先輩…龍神、麒麟の王…琥麒ですら、創世の女神を説得する事は出来なかった。
でもだからって、諦めちゃうのも良くない、と…思う!
「…説得…という方向でいいわけ?」
「…陸の気持ちを考えると、それが一番…ってか、それっきゃねーだろ」
「…まぁね…」
あれ、橘のテーブル…いつの間にか那音姉が作った一メートルケーキ(チーズ)が堂々と占領しとる。
あいつまだ食う気か…!?
っていうかまだ食ってたのか…!?
「…でも、どうするの? 創世神と対話出来るだけの神か、それに連なる者に頼むしかないのに――」
「俺が話す」
「………」
宣言する。
俺が創世の女神を、説得する。
俺が直接、陸を、世界をこのままにしてもらえるよう頼む。
他人に頼んだって絶対伝わらない。
他の誰かの言葉じゃ、意味がない。
創世の女神にも陸にも思い知らせてやろう……俺がどのくらい陸を好きで、陸の為なら死んでもいいって思ってるかどうか。
創世の女神に分かって貰えなくって、陸が居なくなるなら俺も死のう。
一緒に世界に殺されてやろう、陸。
「…本気か?」
「本気です」
「……、…死にますよ?」
「それでもいいです」
「将也…」
さすがに神楽さんも驚いている。
刹那さんは愚か者を見る眼だが、那音姉は心配そうにしてくれた。
トリシェが起きてたら…怒りそうだな。
「……じゃ、それまで八草沙幸をどうするか考えよっか」
チーズケーキを口に入れながら、橘が妖艶に微笑んだ。




