そういえば宿題、結構溜まってます。
「将也、大丈夫? どうかしたの? なにかつらい事でもあったの?」
落ち込んでいた俺の頭を那音姉が撫で撫でしてくれる。
ちっさくて可愛い俺の義姉…。
嬉しいんだけど、こんなところゆー兄に見られたら殺される…。
ああ…でも…俺、一回本気で殺された方がいいのかも…。
陸へのクリスマスプレゼントは忘れてたし、陸がどんな気持ちで俺と付き合ってくれていたのか、考えた事あんまりなかったし、陸の背負っていた運命とか立場とかも全然知らなかった。
自分の気持ちでいっぱいいっぱいで、陸の事…ほとんどちゃんと考えてなかったよね…。
陸に好きになって欲しい…笑顔になって欲しい……そんな風に考えていた割に、橘に言われた通り、相手の事を知ろうともしなかったし考えてやってないとか…そんなんじゃ、無理に決まってんじゃん。
俺なんかより陸の抱えている問題…運命の方がよっぽど重い。
っていうか…別に陸じゃなくても良かったような問題で運命なのに…。
放り投げられない陸、優しすぎるよ…馬鹿やろう…!
「………俺って本当に駄目な奴だ………」
「ま…将也? ほ、本当にどうしたの…!?」
「…あ…また落ち込みモードになった。しつけー…」
「…思い出し落ち込みか? やっぱり兄弟だな」
「か、神楽っ、そこ和むとこじゃないよー!?」
ガッ! と橘に割と本気で脳天を殴られて「将也、落ち込んでる暇ないから」と突っ込まれてハッとする。
そうだった…落ち込んでる暇があったら陸を助ける為に、ちゃんと考えなきゃ…!
「でも殴る必要ないんじゃね!?」
「声掛けたって戻って来ねーじゃん」
「……くっ…!」
確かに声掛けで戻って来れる自信はねぇ!
…でもなんかムカつく!
そう、この理不尽な暴力に理屈は納得出来てもなんかムカつく!
って言ってる事が矛盾している…!
脳細胞死に過ぎてる!?
「あんまり殴るなよ! 俺の賢い脳細胞がたくさん死ぬ! 馬鹿になったらどうする気だ!?」
「大丈夫、将也は頭のいい馬鹿だ」
「親指立てんな!」
「あれ、なんかトリシェがぐったりしてるー」
『………』
「…寝たらしいな」
「あー、もう夜だもんねぇ~」
「!?」
俺が橘と喧嘩してる間にトリシェがリタイアしただと…!?
まだ陸を助ける為の方向性も決まってないのに…!?
「………」
いや、落ち着け…。
今までの話の中から一番有力だったものをまとめて、神楽さんに相談してみよう。
今までで一番的確だったのは………。
「……か…神楽さん…」
「うん?」
「……創世神をぶっ殺せば陸を助けられますかね………」
王苑寺先輩の…案だけだ…!
「…………。…ああ、創世の女神の精神体が神子を取り込もうとした瞬間を狙えば戦う事も出来るから…なんとかなるんじゃないか?」
「か、神楽!? な、な、なにを仰ってるんですか!? 創世の神と戦うなんて、こんな人間が勝てるはずありませんよ…!?」
「俺は優弥と契約しているから手伝わないしな」
「う…っ!?」
神楽さんも刹那さんも断定だね!?
…そりゃ、…俺は神様の力を持っている八草と戦って勝てたことないけど…!
「…っ」
いや…勝てたことないから、か。
神の力を掠め盗ったに過ぎない八草にすら、俺は勝てたことがない。
なら、神そのもの…世界そのものに勝てるのか?
「………ど…どうしたら…勝てますか…?」
「……」
スッ、と神楽さんがまた橘を見やる。
あいつ、今度はつまみを食べながらビール飲んでるしっ!?
おい、お前一応学生だろうがっ!?
「将也、優弥は…いつか神々と戦う事を前提として生きてきた」
「!」
「だがお前はそうではない。優弥の様に、全盛期の神と対峙した事もないはずだ」
「………」
その通りだ。
ぶっちゃけ『支配神シャルトス』も直接見たことない。
トリシェはこの通り(ぬいぐるみ)になった後の、弱った状態だから…全盛期ではないしね。
「そんなお前が神と戦うのは不可能だろう。だが…お前がどうしても創世神と戦いたいというのなら止めはせんよ」
「丸投げですねっ!?」
「俺は優弥の契約獣だからな。…お前と神子にとって一番良い道がどれであるかは、お前自身が決めるべきだ。どんなに俺やトリシェや橘が助言をしたとしても、最後に選ぶのはお前自身なのだから」
「………」
…そりゃ…そうなんだろう…けど…。
でも、分かんないし…。
知識が、足りないから…だから…、だってなにが分からないのかも分かんないのに…なにが正しいなんて…!
「………。将也!」
「うわ!? は、はい!?」
「なに話てんのか全然わかんないけど! 将也が陸くんにしてあげたい事、陸くんが将也に一番して欲しい事をちゃんと考えなさい! 分かんない事とか知らない事とかばっかりでも、陸くんの気持ちをいっぱい考えてあげれば答えは自ずと出るものです!!」
「……!」
椅子に片足ドン!って上げて、なぜか天井を指差して宣言する義姉…那音。
最終的にその人差し指は俺の鼻先に、ビシッと突き付けられる。
……ご、ごもっとも…。
「……、俺が…陸にしてあげたい事…」
陸が一番して欲しい事…。
「因みにおれは優弥にも将也にも、あんまり危ない事をして欲しくありません! 神様と戦ったりしたら、間違いなく死ぬに決まってるし! 優弥とトリシェが戦った時みたいなのは…おれはもう嫌なのでっ!」
仁王立ちな那音姉…かっこいい…。
「………」
…俺が陸にしてあげたい事。
分かんない、どうしたらいいのかが分からないよ…!
でも…居なくなるような事…して欲しくない。
陸は俺に一番、何をして欲しい?
俺に陸が望んだ事ってなんだ?
考えろ、思い出せ…ちゃんと、陸の言葉…全部、覚えてるはずだろう…!?
誕生日の時みたいに、覚えようともしなかった…あの頃と違って俺は陸の一挙一動、一言半句、全部可愛いって思って毎日過ごしてたんだから!
「……―――」
どうしよう。
どうしよう、どうしよう…どうしよう…どうしよう……陸…。
思い出せば思い出す分だけ……やっぱり俺は君が大好きで堪らない。




