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毒デレ!  作者: くらげなきり
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あの日、俺はあの子の為に死ぬと決めました。





「たまには運動がてら、躾のなっていない犬で遊ぶのもいいかもな」



振り上げた手から純白の刀が現れて握られた。

月科先輩から奪った、龍神・麒麟の王の魂が宿った刀。

白いロングコート、銀色の髪、白い肌、純白の長刀…腹の立つ真っ白な姿の男。

散々血を浴びているくせに、なんの汚れもないかのように白を基調にしやがって…!



「魔王の坊主、勝負するか? お前が勝ったら、デートの続きを好きにやれ。俺が勝ったら、デートの続きは俺とだ、神子」


「あああ?」

「…ま、将也…ガラが悪いよ」



デートもなにも、俺たちは帰り道だっつーの!

このまま、ただ帰るだけ……帰って、家でゆっくりする。

陸はご飯を作って、俺は荷解きの続きをする。

ただそれだけの日曜日で終わらせる…!



「お前なんかに、陸は渡さない…!」

「将也! 君じゃ沙幸に勝てないよ…!」

「ひどい陸…!?」

『…まー…神気のない将也じゃ無理かなぁ…』

「トリシェまで!?」


「神気は使わないでやるよ。英雄神…シャルトスがお前と遊びたいと言っているんだが…どうする?」


『去勢して死ねって伝えてくれる? 全身のあらゆる毛が抜けて苦しんで死ね! …でもいいよ』

「………」

「………」



陸、トリシェの方が俺なんかよりずっとガラが悪い…圧倒的にひどい事を言ってると思います。

全身のあらゆる毛…って一瞬「頭ハゲろ!」的な暴言に聞こえるけど、よくよく訳すると「髪はもとより鼻毛や陰毛なんかの免疫を補佐する毛も抜けて病的に苦しんで死ね!」…って事でしょ?

…こ………こえぇぇぇぇ…!



「…救済の英雄も口を開けばとんだ毒舌だな。…まぁ、今日は俺も忙しい。…神様同士の喧嘩はまた今度にしてくれ」


「っ!」



急襲してくる八草沙幸。

いきなり始めるとか卑怯!

トリシェの奴は瞬時に俺から陸の肩に飛び移る。

ビルとビルの隙間に押し込まれ、舌打ちする。

ギリギリ、奴の刀が振るうのに問題ない幅。

俺の槍は……このビル幅では思い切り振るえない…!


「…アレはいつか必ず俺のモノになる。…とは言えあまり触れられるのも腹が立つ。少し弁えろよ、魔王」

「起きて寝言ほざいてんじゃねぇよ…! お前なんかに陸は渡さない…! 陸に酷い事ばっかりするくせに…!!」

「…酷い事? 愛情表現って、やつさ!」

「ぐぅ!?」


力で押し負ける。

危うく後ろへ転けるところだったけど、バック転くらいは(アイドルなので!)習得してるので着地できた。

…この野郎…!








「…お前は分かっていないだけさ。あの神子の価値。俺の眼を盗んで、裏の世界がどれほどアレに手を伸ばしていると思ってる? この国に限らず、どれほどの集団、組織、国家、個人がアレを手に入れようと動いているのか…知らないだろう?」

「………っ」

「アレは人間と神の狭間の生き物。…人も神も、欲しいと思う程に希有な存在。…酷い事…だと? フン、それこそ寝言だな。…あの神子が曝されている、今の環境こそ非道だ! 世界の全てが、敵なのだからな!」

「…その筆頭がお前だろうが…! ふざけるな…!」

「ハ…ッ! …いいさ、否定はしない。だがアレは必ず俺のモノになる。それはもう決まっている真実だ」

「っ…!」



…なんだろう、陸が、誰かの――こいつの?――モノになる。

それはどこかで聞いた。

陸が自分で言っていた。

いつか――いつか必ず、光の王のものになる…。



「くっ…」



嫌だ。

嫌だ…!



「…お前は今何故武器を持った? 俺と対峙して神子を守って、お前になんの得がある? あの時代錯誤の忠犬のように、なにか恩や義理でもあるのか? どうせお前にあの神子は過ぎた存在だ。魔王のお前と、光の中に立つ神の神子はどう考えても合わない…住む世界が違うだろう?」

「……」

「…武器を持って俺と対峙するという事は、殺し合いの承諾だ。俺は今からお前を殺す。…恨むなら血の気の多さで早まった自分自身を恨め」

「――――……」



…俺は、魔王になりたくない。

陸に魔王にも王様にもならなくてもいいって言って貰った。

あの子の笑顔が可愛くて―――。

あの子の優しさが堪らなく、嬉しくて―――。

守れなくて、死にたくなるくらい悔やしかった。

もっと色んな事を話して、もっと色んな陸が見たい。

住む世界が違っても、光と闇が手を取り合う事がなくっても………。


振り下ろされた刀を腕で払う。



俺は、あの子が




「へぇ?」

「…言ってろ…!」



黎明を握り直す。

腕から血が流れてくる。

魔王の血……俺の器に宿った呪いの運命。

陸…俺はそれでも、こんな血があって良かったって思ってる。

だって多分、陸も同じなんだと思えたから。

陸の家の事情を知った時、きっと陸も俺と同じように…欲しくてその力を持ってた訳じゃないんだよなって。

陸はちゃんと受け入れて、その力で俺の希望になってくれたんだ。


なら、俺が今度は―――!




「俺は……俺は陸が好きなんだ! 死ぬ時はあの子の為に死ぬ! 例え住む世界が違っても、不相応だったとしても、今度は俺が陸の希望になる! 陸が望まない運命なんか俺がぶっ壊してやる! ……―あの子はお前のものになんかならない、絶対に!!」











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