御国屋レイトの想像
「僕はね、人の感情というものがよくわからないのだよ。だから、想像するんだ。想像して相手の反応をみて、僕は感情というものに思考をめぐらす。僕にはあやふやにしか与えられなかったものに思いを馳せるのさ。感情とは何か、ってね」
出会ったばかりの頃、御国屋レイトはあの彼女独特の少しだけ傲慢さを滲ませたそのくせ無邪気に聞こえる喋り方でそんなことを俺に言った。
レイトと出会った頃の俺は酷く、絶望し、世界を怨み、他人を拒絶し、自分を蔑み、ただ死を渇望している無力で惨めな壊れかけのガキだった。
そしてレイトは歪んでた。狂ってもない、壊れてもない。ただ、その心は普通の精神の持ち主なら理解できない程度には歪み、いびつだった。
他者から壊されかけた俺と他者に影響されずとも歪んでいたレイト。
出会いに意味があるのかないのか、いまだに答えはでいない。