帰郷
日差しがキツイ
とにかく暑い
しかし、風は気持ちが良い
ああ、この感じ
まさに田舎だ
木の影に入れば、涼める
川やら、用水路、ため池があって水場が多い
だが、さすがに異常気象が当たり前となった この暑さは
我が田舎でも抗えない様だ
虫も多いし、牛舎の匂いもして来た…
お地蔵様の前に来た
以前の大地震で立っているのは4体になっている。
そのまま放置、という訳ではないが
首が折れた地蔵様を安易にまた立たせるのは危険だ
他の地蔵の横にそっと置かれていた
まだ夕方では無いが 俺はそっと”おじぎ”をした。
家に入る、無駄にでかい造りだ
くすんだ、赤色の屋根
日本全国、地方に行くと同じような家が幾つもある。
見覚えのない犬が、入口で吠えていた
父も母も、出掛けているのか
連絡はしたが、急だったからな
田舎の一軒家の客間というのは宴会用に広いモノで
人がいないと独特の寂しさがある。
今日は、ここに寝る
俺の部屋はあるが、母さんには布団を頼んだ
ガランとした空間に、何かを感じる
スマホを睨む、科学の発展とはすごいモノだ
こんな田舎でも、わずかに電波が入るようになっている。
夜になり、母親が用意した食べきれない量の食事を食べる
母さんは質問攻めだが、親父とは口を利かなかった
父も、不機嫌そうに俺と眼を合わさない
2人には軽く説明したが
夜中に、俺の寝ている部屋には近づかないでくれとお願いした。
ロウソクに火を灯す
あの、陰陽師に言われた事はこれだけだ
「あとは、普通に寝てろ」
そう言われたが、眠れなかった
不思議と眠くなかった
満腹になったお腹をさする
実家に帰れば、嫌でも あらゆる事を思い出す。
楽しい記憶が頭を巡る
すると、そんな田舎を捨てたくてしょうがない俺への罪悪感が芽生える
「ばあちゃん…」
ばあちゃんは今は、病院に入院している
もう、高齢過ぎて食べ物を飲み込む力もない
すぐ誤嚥性肺炎になってしまうのだ
長くはないらしい…
見舞いには一度行ったが、もう 俺の思い出の中のばあちゃんとは全然違っていた
言葉をかけても、起きているのか寝ているのかわからない
反応もほとんどしてくれなかった
見ているだけで辛かった…
ギィィ
廊下で軋む音がした
それが、親ではない事はなんとなくわかった
アレが来たのだ_。
俺は、恐怖を感じながらも
目を瞑り
手を合わせ、念じる
これも、陰陽師に言われた事だ
「オジギサマ・・・オジギサマ・・・」