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おじぎさま


八百万の神々

日本には古来より、多くの神が居て 多くの存在が畏怖される。


神は、そこに在る

どこにも宿っており、自分の内にある信仰は確実に神に通じている


しかし、神が応えてくれる確証はなく、神が絶対にいるという確信はない。


誰もが知っている神もいる、様々な作品に登場し、様々な解釈がなされる


しかし、その一方で


この世には、無限にいるのだ 名も知らぬ神々が…




俺が、子供の頃

田んぼしかないような場所

田舎に住んでいた。


こんな退屈な場所は嫌だ、そんな事すら思わなかった年頃


外にいる虫を追いかけるだけで楽しかった。

家の中にあるボロボロの漫画を、さらにボロボロにするまで読んだ


幸せしか感じていなかった幼少期

仕事でいない両親の代わりに、ばあちゃんが面倒をみてくれた。


ばあちゃんが作ってくれる、ご飯やお菓子のラインナップは大体一緒だったが

何の不満も無かった


不満を知らない程、純真な頃の話



家の近くには、お地蔵様が6体くらい並んでいた

ばあちゃんは それを大切に崇めていた


草むしり、掃除、地蔵様を磨いていた



村には、不思議な風習があった


その頃は不思議などと感じていなかったが

大人になって思い返せば謎だった慣習


『夕方の帰り道は、必ずお辞儀をしなさい。』



その場所は、各人々の家によって違うのだが

家路につく際に、夕方 夕闇を歩くなら お辞儀をしなければならない


俺の、ばあちゃんの家なら ちょうどお地蔵様がある場所


別に大した事ではない

だが、迎えに来てくれた婆ちゃんとの帰り道は、婆ちゃんが深々とお辞儀をしていた


その真似をして一緒に礼をする


何に対して、お辞儀をしているのか?

だが、お地蔵様があったので俺は お地蔵様への挨拶だと勝手に解釈していた。



『おじぎさまが視ていて下さるからね、ちゃあんとお辞儀ばするんだよ』


俺が走り回ろうが、わがままを言おうが ほとんど許してくれる婆ちゃんが

それだけは、しっかり守らせようと 表には出ない厳しさを持って言ってるのは

なんとなくわかった…。



ある日、俺は遅くまで村の子供達と遊んでいて 辺りは大分暗くなっていてしまっていた


夕飯の時間になる、さすがにこれは怒られると

大急ぎで走って帰っていた



ヒタヒタヒタ


後ろで誰かが付いてくる音がした


振り返るが誰もいない



辺りの暗さもあって、急に怖くなり

半分ベソをかきながら

俺は走った



ヒタヒタヒタヒタヒタ…!


それはピッタリついてくる


俺の後ろに間違いなく”いる”



『はっ・・・ひっぐ、はっ・・・!』



とにかく走る


お地蔵さまが見えてきた

家がもうすぐだ


そのまま家に走りさろうとしたのだが


習慣とは恐ろしいモノだ

おれは、ズサーと急ブレーキをかけ お辞儀をした。


後ろから来るモノから、お地蔵様が守ってくれるとか そんな事を期待した訳ではない


ただの習慣、内心 こんな事をしてる場合じゃない!と焦りながら

しかし、深々と俺はお辞儀をしていた



その時だ、黒い大きな影が現れたのがわかった

まだ、夕日の光は微かにある


”それは”俺の前を のそりのそりと動いていた


怖くて動けなかった

身体が震え始める


好奇心から、顔を上げて 何がいるのか見たいと思った。

もしかしたら、後ろから付いて来ていたモノの正体?


これが、『おじぎさま』なのか…?


息を、ころしながら ゆっくり ゆっくりと顔を上げる

怖い、怖い、こわい、でも見たい


『あっ・・・』


そこに居たのは…




「覚えているのは、ここまでっす…」


「えー!そこが一番気になるのに!!」



現代、おれは19歳になっていた

今の法改正で立派な成人だ


何にもない、薄気味悪い迷信ばかりの家を出て来て、今は誰もが認める都会に住んでいる。


最近、俺はある霊障に悩まされていた


ヒタヒタと付いてくる足音、自分の部屋で鳴り響くラップ音、体調もどんどん悪くなっている

しかし、医者は何の異常も無いという


俺は、その事を大学の知人と、そいつが連れて来た 


”陰陽師”をやってるとかいう胡散臭い奴に相談していた。


情けなくなってくる

しかし、こんな話を聞いてくれる知り合いなど他にいない



「だから、たぶん…おじぎ様、村の神様が怒ってるんじゃないかと…」


( 自分でもわかっている、スピリチュアルで非科学的な、アホみたいな話だと )



俺は、村を 高校の頃には飛び出していた

うんざりだった、遊び場のない つまらない田舎

頭の硬い両親と、ボケはじめた婆ちゃんの世話


回りを囲む 山、山、山


豊かな自然? そんなの俺の生活には必要なかった


だるい事は全部投げ出し、それからほとんど帰らなかった。


ふるさと、生まれた場所、コキョウ それを捨てたかった

なんだったら、こっちで友人になった連中にも どこの出身かは詳しく話さなかったし

嘘もついた


あの田舎を恥じていた



『だから、怒っているのだ アレが…!!』




「違うね」



目の前で、豪華なイチゴパフェを頬張る 陰陽師の男がそう言った。


俺の奢りだ



「正直、オレが出るまでもないな お前さ 一旦帰れよ 田舎に」



「え…」




>続く

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