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【VRMMO】非デスゲーム編その2

「さて、良い無双と悪い無双があるというところで前回は終わったわけじゃが。」

「追いつけないような形の無双は駄目だってことだったな。」

「次にもう一つ、ありがちな無双の形を紹介しよう。

『たまたま現在のレベルでは攻略できないような隠しエリアに辿り着き、そこの敵を倒したことで爆速レベルアップ! 最強になっちゃいました!』

 というものじゃ。」

「聞く感じ、やってもいい無双ってやつなんだろ? これ。別に他の奴がその隠しエリアに辿り着ければ同じことできるわけだし。」

「そうじゃな。ここまでなら問題のないの。」

「ここまでなら?」

「大抵はこのあとにこう続く。

『最強になった私は、どんなボスもワンパン! 全然苦戦することなくこのゲームを攻略してくよ〜』

 という感じにな。まあ、ボスをワンパンというのは分かりやすいようにしただけじゃが、本当に、苦戦することが全くなくなるんじゃよ。」

「うん、よく見る光景ではあるが。」

「異世界ファンタジーでは特にの。それはそれでいい。むしろ下手に苦戦などすれば良さを殺すことになる。じゃが事はゲームの世界。そのエリアの敵を倒して他よりも強くなるのは良いが、逆に言えば、そのエリアではあくまで適正レベルということじゃ。むしろショートカットして辿り着いた分想定よりも弱いはず。」

「なのに無双できてしまうのはおかしいと。」

「我的には、ここで敗北描写をいれてくれればグッと好感触なんじゃがな。まあ強くなってスカッとする展開において強くなったはずの主人公が苦戦する話は噛み合わないといえばそうなのじゃが。」

「うーん、だよなあ。やっぱり聞いてる限りだとVRというジャンルがなんか面白そうには思えないな。」

「むむ、それは何故じゃ。」

「こうなんというか、強くなるにもいちいち苦戦しなきゃいけないのだったり、苦戦するにしても別に負けてもいいってなら別に盛り上がる状況じゃないわけだし、どこに面白さを見い出せばいいのかが全然分からん。」

「なるほど。ではどういった所が面白いのか、見どころを説明してゆこう。」






「まあまず、負けてもいいのなら盛り上がらない、という部分に対して補足説明をしてゆこう。普段やっておるゲーム……ここではマ○オにしておこうか。それで失敗して一機失ってしまっても、そこまで嫌ではあるまい? 別に失敗してもいいや、という気持ちじゃろ?」

「ああ。普通にもう一回やり直すだけだな。」

「じゃが、友達と交互にプレイして先に失敗したほうがジュースを奢る、などの罰ゲームを設定していたとしたら、少し失敗したくないと思わんか?」

「そりゃ、ちょっとはな。でもジュースくらいなら、別によくね?」

「ジュースはただの一例じゃ。要するに負けたくない、と思わせるだけの理由があればゲームの中だとしても盛り上がれる。そしてその負けたくない理由というのを、自由に作ることができるのがこのジャンルの面白さじゃ。」

「ん? なんでそうなる?」

「普通の物語において、負けられない理由、登場人物が本気になる理由というのは大抵は『命』じゃ。しかし『命』なきゲームの世界ではその理屈は通らん。『命』以外の理由が求められ、それは書き手の自由じゃ。

 だからこそ、主人公が本気になる理由が突飛であっても許される。『楽しみたい』『強くなりたい』『まだ見ぬ景色を見たい』『美味しいものが食べたい』『殺したい』などなどの普通じゃ許されないような思考をしていても許される。ゲームの世界では『個性』というものを強く主張できるわけじゃよ。」

「『個性』ねえ。」

「実際の作品を例に挙げてみようか? 現在VR部門総合一位の作品についての話じゃが。」

「シャン○ロか。」

「あれが『クソゲーハンター、異世界へ挑まんとす』じゃったら確実につまらないと言われておったぞ。」

「そんな断言できるのか?」

「ああ。少なくとも主人公のキャラはかなりパンチ力を無くす。主人公は半裸鳥頭という頭のおかしな格好をしているのじゃが、これが許されるのはゲームだからじゃ。

 他にも花火感覚で国家転覆を企む勇者じゃったり、ロボキチじゃったり、ロリに全財産貢ぐ原始人がおったりするのじゃが。」

「いや、まあ、うーん。」

「こういったキャラを出していいのはコメディ除けばゲームというジャンルくらいじゃろ。」





「さて、強引にまとめさせてもらうが、この【VRMMO】というジャンルは個人的に注目していきたいジャンルじゃ。今なろうで流行っておる形とは少々異なる形の作品が好まれやすいため、知名度こそ低いが間違いなく良作が生まれる土壌がある。」

「その心は?」

「敗北シーンをストーリーに組み込みやすいということ、強くなった後ではなくだんだん強くなっていくという部分が話の中心になるということ、かなりはっちゃけた個性であっても受け入れることのできる世界観であるということ。この三点じゃ。」

「やっぱり、なろうにおける良作とは少し離れている気もするけどね。」

「まあ、異世界ファンタジーの作品に飽きてきたという方にはぜひ読んでもらいたい。」

「どんな作品がおすすめ?」

「取り敢えず、総合ランキングの上位は大体面白いぞ。逆に日間ランキング〜四半期ランキングまでは異世界ファンタジーの主人公が無双するタイプの作品を無理矢理ゲームに落とし込んだものばかりじゃからあまり信用せんほうがいい。

 あとはまあ、『最強』だの『極振り』だのタイトルに書かれておるのは地雷が多い。

 ただ、主人公の個性が面白いかどうかという部分が非常に大きいので、最初の一話だけ読んで主人公に好感が持てるかどうかで判断するのが結局楽じゃな。」

「それはどの分野でも同じでは?」

「このジャンルでは特にじゃな。世界観が面白そうでも、ヒロインが可愛くても、主人公がクソだと一ミリも面白くならんから。」

「そんなもんかー。ま、今回はこんなところで。ではまた。」

「次は予定通り【主人公】編じゃ。」

「そういえば、俺の名前って『主人公』をアナグラムにしただけだよな? 手抜きじゃね?」

「そんなこと言えば我だってサクシャとかいう適当な名前じゃぞ?」

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