【VRMMO】デスゲーム編
「で、今回は【VRMMO】についてだっけか?」
「うむ。我の個人的興味からピックアップさせてもらった。」
「で? 今回はどんな愚痴を聞かされるんだ?」
「いや、基本的に絶賛するぞ?」
「まじでか。俺、あんまりVRのジャンルって読まねんだけど。」
「ではVRというジャンルについて少しばかりの解説をしよう。
まず、このジャンルは大きく2つの区分に分けられるんじゃが、どういう分け方をすると思う?」
「んー? 剣と魔法? いや俺ツエーとスローライフとかか?」
「うむ。違う。『デスゲーム』か『非デスゲーム』か、じゃ。」
「そういや、タイトルに答え書いてあったわ。ていうか区分わけするほど大きな違いか、それ?」
「我的にこの違いは非常に大きい。まさしくゲーム性が大きく違うからの。」
「ふむ、くわしく。」
「まず、分かりやすい『デスゲーム』から紹介するが……『デスゲーム』が何かくらいは知っておるよな?」
「ゲーム内で死んだら現実でも死ぬってやつだろ? SA○みたいなやつ。」
「ゲームでの敗北が死につながるような闇のゲームのこともデスゲームと呼ぶが、ここではVRにおけるデスゲームについて取り扱うからの。
それで、こうは思わんか。『ゲーム内での死が現実での死ならぶっちゃけ異世界転移でよくね』と。わざわざゲームというフィルターをかける必要があるのか、と。」
「いやいや、ゲームだからこそできることとか、何かあるだろ。」
「例えば?」
「ゲーム的なHPのやりとりとか、モンスターの生態だったりとか。あ、あとはSA○よろしくゲーム制作者が敵がだ、とかさ。」
「それはゲーム風異世界でも再現できないものか?」
「え、いや、たしかに異世界ファンタジーで再現できないかと言われればそんなことは無いけどよ。」
「もちろん、異世界ファンタジーにおける『それってゲームみたいですねwww』というツッコミを『いやだってゲームですからねwww』と返すことのできる秀逸な設定ではあるのじゃが。
異世界ファンタジーを書いたことのある人ならば誰しもが遭遇する『HPってなんだろう』という疑問に対するある種最適なアンサーとも言えるじゃろう。じゃが、決してゲームの世界だからこそ表現できるというものではない。」
「じゃあ結局デスゲームそのものの強みは無いってことか? ただの設定に説得力持たせるためだけの要素ってことなのかよ。」
「否。デスゲームの特性はそこではないということじゃ。もとより死ねば死ぬというのは、ある種当然のこと。じゃから注目すべきはデスではなくゲームの部分じゃ。」
「結局ゲーム的システム、ってことだろ?」
「大切なのはシステムではなくシナリオ的攻略性と、プレイヤー間の平等性じゃ。」
「なんだそれ。」
「ゲームとは万人が、平等に、クリアできるように作られている、ということじゃよ。」
「なるほど。分からん。」
「例えば、死ぬほど強いボスがいるダンジョンの中に、そのボスへの特攻アイテムがある。こんな状況をどう思う?」
「出来すぎっつーか、御都合主義ってーか、まあ不自然だとは思う。」
「ゲームの中でもか?」
「え? いや、ゲームだとするなら製作者側のこれを使って攻略してねみたいな救済措置? ……あ、そういうことか!」
「なぜか段々と店で買える武器が強くなる? 前半に出てきたボスが終盤の雑魚より明らかに弱い? 何年も解決していない異変を、ぽっと出の主人公があっさりキーアイテムを見つけて解決する? それらはファンタジーだとするならば御都合主義としか言いようがないが、ゲームの中ならば運営側の意図と言える。」
「でもよ、それだとわざわざデスゲームにしたのに、クリアして欲しいってことにならねえか?」
「そも人を殺したいのならゲームをさせずに起動した瞬間に即死するような仕組みでも作るじゃろうて。」
「それは確かに。……そういえぱ、もう1つ言ってた平等性ってのはなんだ?」
「ゲームである以上プレイしているのは一人ではない。数千、数万、数十万というプレイヤーがおるはずじゃ。そして、それらの間に決定的な格差があってはならないのじゃよ。」
「でも強いやつと弱いやつに分かれたりするだろ? 全然差が付いてるじゃねえか。」
「然り。平等性というより再現性というべきかの。どんなプレイヤーにだって、トッププレイヤーになれる可能性を持っておるはずじゃ。というか、それができておらんのはゲームとして破綻しておる。」
「誰でもレベルカンストできますよってことね。」
「まあ、そういうことじゃな。極論、主人公の無双を許すゲームは総じてクソじゃ。」
「それはまた、随分と色んなところに喧嘩を売ってないか……?」
「まあ極論じゃよ極論。それに我はプレイヤー相手の無双がダメと言っているだけであって、mob相手の無双はむしろ当然と思っとるしの。」
「なるほどね。」
「とここまで書いてきてなんじゃが、デスゲームは正直題材として難しいじゃろうな。」
「そうなのか? 設定周りは楽だし簡単そうなもんだが。」
「まず、先に言った無双させにくい環境というのがある。加えて敵の難易度が高い。普通のファンタジーならばチート抜きの現地人にとっての適切な難易度なわけじゃが、最初からプレイヤーを中心としてゲームバランスが設定されているからの。」
「安易な俺ツエーは許されないってことか。」
「そしてデスゲームである以上人の死について触れなければならんじゃろう。となれば、それに対する内面描写や周囲の反応をしっかり書かないと題材として薄っぺらくなってしまう。」
「異世界ファンタジーはそういう世界観だから、って感じでグロ描写とか鬱設定の部分を軽く流してるもの、あるもんな。」
「更に追い打ちをかけるようじゃが、キャラの書き分けが非常に難しい。設定的にプレイヤーは全員現代人でデスゲームなんて非常事態に安っぽい語尾やら突飛なロールプレイなども許されない。そんな中でそれぞれのキャラを書き分ける必要があるわけで。奇抜な設定を抜きにして魅力的なキャラを多数登場させなければいけない、というのはまあまあキツい。」
「設定さえ盛ればキャラ描写薄くてもなんとかなる、って思ってる奴がここにも一人いるもんな。」
「というわけで、デスゲームは非常に難しくかつ流行から完全に遅れているため、今のなろうで見かけることは本当に稀じゃ。というか、ここ数年新作を見かけた覚えがない。」
「へー。よし、じゃあまた、神様がパパッと書いてくれよ。」
「無理じゃって。」
「というわけで、今回は【VRMMO】のデスゲームについて取り上げたぞい。」
「なんで非デスゲームについて触れなかったんだ?」
「ここまで書いて力尽きたからじゃ……。なので、今日書いたことは実は非デスゲームについても適用されることなんじゃが……。」
「ゲームって部分は同じだもんな。」
「そうじゃな。異世界の設定がゲームみたいなものなので、わざわざゲームにする必要はあるのかと考える者も多いじゃろう。」
「普通、異世界ファンタジーの方が自由度高そうだもんな。」
「じゃが、ゲームだからこそ書けるストーリーというのは確実にある。むしろ、異世界ファンタジーを適当にデスゲームに落とし込めば一気にその輝きは劣化してしまうじゃろうて。
良くも悪くもプレイヤー間が平等であるがゆえに、共闘、敵対、理不尽に対して詳細に書かなければならず、それを通した主人公のリアルな……等身大の心象を物語を通して伝えなければ面白くならんからの。」
「また、えらく難しそうな……。」
「ま、だからこそ廃れたジャンルの一つなのじゃろうて。この令和の世に、またデスゲームを見れる日は来るのかのう……。」
「なんか感傷的になってんな……。まあ、今日はこんなところで。ではまた。」
「というわけで明日は【VRMMO】非デスゲームへんじゃ。」
「デスゲームと非デスゲームに分けられる、とか言っときながらデスゲームと異世界ファンタジーと比べてばっかだったからな。」
「まあ、そこに触れると都合上どうしても非デスゲームの方に偏りがちじゃからの……。」
「そういえば、ゲームの世界に転生ってパターンもVRものに分類されることあるよな。」
「ただの異世界ファンタジーじゃのにの……。ジャンルの知名度の低さのせいでごちゃまぜに考えられとるのじゃ……。悲しい。」