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【追放】編


「仁よ、お主をこの物語から追放する!」

「藪から棒になんなんだよ!」

「お主はこのたった二人しか登場せん物語の中において、適当に相槌を打つだけだったり、箸にも棒にもかからん意見しか出さんかったりとまるで役に立っとらん!

 ので! 今このときより物語から出ていってもらおう!」

「ふざけるんじゃねえ! お前一人で何ができるって」

「ふむ……うるさい奴には消えてもらおう。我は神じゃということを思い知らせてやったわ。ははは。」



「さて、ではこのように【追放】というものについて語っていこうではないか。」



「む……。いつもならここで適当な相槌が入るのじゃが。」



「ぬう、一人というのは難しいの。ただダラダラ話すだけでは読者もついてこんし……。」



「正直、一人でここで語るだけってのは、なんというか、その……寂しい、もんじゃの……。」




「す、すまぬ。仁! 帰ってきてくれ! 我にはお主が必要じゃ!」

「はっ! 必要ねえって言ったのは神様だろうが。今更謝ってももう遅えんだよ!」



 



「と、まあ、こんな感じが大体の追放物のテンプレじゃよな。ああ、今のやり取りは全部茶番じゃ。心配せんでもいい。」

「そんなこと気にする奴いねーよ……。」

「とはいえ、書いていて思ったが【追放】というジャンルは非常に優秀じゃの。」

「あ? 意外だな。」

「何がじゃ?」

「神様、結構逆張りとか好きだろ? なのに今流行ってる、【追放】について褒めるんだなぁ、と。」

「失礼な。確かに逆張りは大好きじゃし、ランキング上位に追放物が蔓延っているのには不満タラタラじゃが、【追放】というジャンルについては正直認めざるを得ない。」

「まじか。面白いやつもあるけど、結構読みたくねーって思うやつもあるけどな。」

「まあ、全部が全部良いわけではないかもしれんが。それは物語の常。好かれるものもあれば嫌われるものもある。じゃが、こと【追放】に関してはなろう読者はもともと好きなジャンルだったんじゃよ。」

「どういうことだ?」

「【追放】は【復讐】【成り上がり】の派生とも言えるものだからじゃ。復讐物、成り上がり物は何年か前から人気のジャンルの一つであろう?」

「そうだな。俺も結構好きだ。」

「追放物はそういった層に受け入れられやすい作風なんじゃよ。追放されるということは、主人公はそれまで属しておった組織に裏切られ、社会的地位なんかも底辺に落ちる場合が多い。そこから出会いを経て成長し、かつて追放した輩を見返すというわけじゃ。似とるじゃろ?」

「ああ、確かに? だが、それだけで別に面白い話ができるってわけじゃないだろ。構成が昔流行ったもんに似てるってだけじゃ、面白い話にはならねえぞ?」

「然り。だが、この構造こそが面白い物語を作り出すと言える。」

「どうしてだよ。」

「一言で表せるものではないのじゃが……強いてゆうならば、『最初に読者を引き込むためのシーンを作りやすく』、『物語を通しての敵が簡単に作れて』、『主人公が行動するためのモチベーションを作りやすく』、『最後に敵を倒して大団円という形に持っていきやすい』といったところかの。我が思いつく限りではな。」

「露骨に予防線を貼っていくスタイル。」

「うるさい。順番に説明していこうか。一つ目の冒頭で読者を引き込む、というのはこの話の最初の茶番でやったようなことじゃな。」

「最初に『お前を追放する!』って言うやつか。」

「そうとも。おそらくは悪役令嬢というジャンルからの輸入なのじゃが、最初に山場を作ることで読者にどうなるんだ? と思わせるためのテクニックじゃな。追放物以外でも、冒頭に未来の状況を少しだけ書いて引き込むという手法や異世界転生するときにトラックに轢かれるというテンプレなどで似たような効果が見込める。」

「なーる。」

「二つ目の敵が作れるというのと、三つ目の主人公のモチベーションというのは分かりやすいの。」

「ああ、追放した側は敵になるし、それに対して報復するってのも分かりやすいな。でも、そんなに大事か? この要素。」

「意外と大事じゃぞ。大抵面白くないと言われる物語は『主人公がなぜその行動を取るのか理解できない』からじゃ。」

「いや、文章力とか世界観の崩壊とか面白くない理由は他にもあると思うぜ……。」

「いや、案外ガバガバでも面白いと感じさせるものはある。勿論そこら辺がちゃんとしておるのに越したことはないがの。」

「それに主人公の奇妙な行動が面白い物語だってあるだろう? 主人公が個性出してナンボみたいなところもあるし。」

「うぐぐ……。と、とにかくじゃ! 不当に扱われたことへの復讐が共感しやすいモチベーションというのは事実じゃろう!?」

「そうだな。理解できない行動ではないな。」

「そうじゃろう、そうじゃろう。」

「だけど……うーん。」

「なんじゃ。なにか言いたいことでもあるのかの?」

「ある……けど、これは後のコーナーにまわそう。」

「なんか、今日はお主の方がメタ発言多い気がするの……。」

「気の所為気の所為。」

「まあよい。最後の大団円にもっていきやすいというのも、ラスボスが分かりやすいからというわけじゃが。」

「追放→ざまぁ→スカッとってのはいい感じにオチがつくよな。」

「そうじゃな。うむうむ、【追放】とはなかなかに素晴らしいジャンルだと、ここまで擁護してきたわけじゃが。」

「ああ。」

「ここからはこき下ろしにかかろうと思う。」

「いえー、待ってました!」





「この【追放】というジャンルが流行ってからかなり長いわけじゃが。」

「一年以上は続いている印象だよな。正直、何が火付け役だったかも覚えてないくらいだ。」

「普通なろうの流行は数か月か半年くらいで切り替わる印象なんじゃがのう。大抵はたけのこのように大量に出現して、新しく生えてきた目新しいジャンルに軒並み刈られるというのが常なのじゃが。」

「恐ろしいことに【追放】というジャンルの中でメタを回してる感覚だよな。」

「そうじゃのう。追放されるのがパーティに始まり国、ギルド、実家などなど。」

「主人公も無能だったけど覚醒して一気に強くなるパターン、もとから有能だったパターン、地道に強くなるパターン、スローライフを満喫するパターンとか色々あるな。」

「まあ、先に言ったように【追放】というジャンルは出来が良い。始まってすぐにオチまで見えるというスピード感も相まって刈りきれんほどに出現しておるというわけじゃ。

 じゃが一番の問題はな、そのせいで出来のいい長編がドンドンと埋もれていったことなのじゃ。」

「ん? どっちにしろ【追放】というジャンルの中で長編は生まれるんじゃないのか? 追放が全部嫌いってわけじゃないんだろ?」

「うむ。確かに【追放】ものでも面白い長編はある。じゃがかなり少数なのじゃ。」

「それはまた、なんで。」

「ざまぁが起きるまでの異常なまでの高速化が原因なんじゃ。」

「高速化?」

「先に言ったように、ざまぁのシーンは物語上における重要なクライマックスになるべきじゃ。」

「明確にスカッとするシーンではあるからな。」

「それこそ早くとも一章の終わりとするくらいには大事な出来事のはず。なのに……。」

「なのに?」

「下手をすれば追放した次の話でパーティの崩壊が始まっとる場合なんてものもある。」

「はあ!?」

「ざまぁが話の終点ではなくただの通過点に成り下がったのじゃよ。」

「ああ……確かにあるな。幕間とかでサクッとざまぁが終わってるパターン。」

「まあ十分スカッとするんじゃが……そうなると、主人公のモチベーションという点ではどうなる? 復讐という動機が無くなって、つまらん人間しか残っとらんじゃろうが。」

「さっきやけに強調してたやつね。」

「そうじゃ。大体がなあなあで『もっと強くならないとなー』とか『とりあえず冒険者ランク上げるか。』なんて言い出すんじゃ。つまらん。信念がない。そんなことがさせたいのなら、そもそも追放なんざさせずに最初から強くなりたいと思っている主人公を出せば良いのじゃ。追放からの流れ作業で強くなるなど、むしろ中途半端なんじゃよ!」

「分かった分かった。そのへんにしとこうぜ。」

「それだけではない! 早すぎるざまぁはもう一つ、重大な過ちを犯したのじゃ!」

「ステイステイ、ちょっと落ち着こうぜ。」

「落ち着いてられるか! 速攻でざまぁを成立させるためにできたもの……それこそが実は主人公こそが有能だったムーブじゃ!」

「ああ、止まんねえよ、これ……。」

「言っておくが! 有能なのに気づかれないの辛いわーとか言っておる主人公は! ただの怠慢で! むしろ無能!

 追放のち即覚醒みたいな御都合主義感満載の設定ですら霞むレベルの気持ち悪さ! こっちも下手すればただの逆恨みじゃが、実は有能とか言っとる主人公のざまぁはタダの煽りじゃ! そもそもがこやつら、追放によってなんの被害も受け取らんじゃろうが! 『実は僕のおかげで強いって勘違いしてただけなんですよプークスクス!』って言いたいだけじゃろ! おまけに、そういう輩に限って自分は聖人君子ですよ、あのヒドいパーティでわざわざ耐え凌いできたんですよ、みたいな顔をしとるんじゃから、もう我慢ならん!」

「あー、終わった?」

「半分くらいは、の……。」

「どこにスイッチあるか分かんなくてこえーんだけど。」

「ちょっと感情が高ぶっただけじゃ。素材はいいのに雑な味付けしかしとらん作品が多くて多くて……。」「まあ、そんなに文句言うなら、自分で完璧な追放物書いてみろよ。」

「それができたら苦労はしとらんわい……。」

「まあ、おおっぴらに文句垂れるなら自分で書けって話なんだよな。」

「そう……、そうじゃな。」

「それでは、今日はこんなところで。ではまた。」




「とかなんとか言っておるから追放もの一本書いてきたぞい。」

「は?」

「4千字くらいの短編じゃがな。」

「なにやってんだよ、こいつ!」

「書いてみて思ったが、やはり書きやすいの。まあ、最後は訳わからん終わり方をしたような気もするが……。」

「あー、もー! とにかく! 次回予告だよ!」

「次はちょっと変わって【VRMMO】について語りたいの。」

「それ完全に神様の趣味だよな!?」

「そうじゃが?」

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