異世界三種の神器【鑑定】編
前回書き忘れましたが、書き手目線で話を展開することが多いです。
そのせいで今回は少々暴走ぎみです。もうしわけない。
「さて、次の三種の神器、【鑑定】について語ろうかの。」
「これはなろうの定番中の定番だよな。」
「ファンタジー部門の作品をランダムに選べば、十個のうち五、六個は類似するスキルを持っとるじゃろうの。」
「そんなに多いか……? とはいえ【異世界言語】と違って主軸に置かれる作品も多いよな。鑑定チートで異世界無双、みたいな作品は定期的に見る気がする。」
「【異世界言語】と違って【鑑定】は能動的に発動するスキルじゃしの。」
「それ、そんなに意味あるか?」
「当然じゃろう。分かりやすく『鑑定!』と叫ぶのは勿論、そうでない場合でも主人公によるアクションが起きるのじゃ。【異世界言語】とは比べ物にならんくらい目立つわい。
その上、鑑定はある意味最も読者にその凄さが分かりやすいスキルでもあるのじゃぞ?」
「え、どこが?」
「主人公と読者が得られる情報が完全に一致するのじゃよ。」
「???」
「数字にせよ文字にせよ、鑑定の結果は目で見える形で表示される。例えばーーーレベルが見えるとしようか。鑑定を使って相手のレベルを見たとして、相手がレベル100だと分かったとする。」
「うん、それで?」
「まだ分からんか。この鑑定で得られる情報は作中の人物と読者でなんの乖離もないじゃろう?」
「いや、それはそうだけど。別に凄くもなんともなくね?」
「そうじゃな。この事自体がなにか大きな効果を持つわけではない。じゃがーーーいや、そうじゃな。少し話を変えよう。お主、世界で一番有名な【鑑定】は何か知っておるか?」
「は? 世界で一番有名なやつ? そんなん知らねえ……ってか誰にも分からねえだろ。」
「まあ、そうじゃな。確実にこれだと断言できるわけではないが……おそらくこれが一番だろうと言えるものはある。」
「なんなんだよ、それ。」
「スカ○ターじゃ。」
「スカ○ター!? ドラゴ○ボールの!?」
「いかにも。」
「いや納得できねえよ! 鑑定と全然別もんじゃねえか!」
「ふむ、具体的にどこがじゃ。」
「え、いやまず外付けのアイテムだし、戦闘力しか測れないし、ええと、他にはーーー。」
「確かに外部デバイスであることは認めよう。スキルという形ではないな。そこは違う。
だが、戦闘力しか測れないというのは鑑定足り得ない理由にはならんな。戦闘力をレベルに置き換えれば分かりやすいのではないか? 相手を見てレベルが分かるーーー十分に鑑定じゃろう。」
「ええ、いや、ううん? ま、まあ、百歩譲ってそこは認めたとしてもよ。今の話に関係ないだろ?」
「おおありじゃ。スカ○ターと言えばあのセリフーーーそう、『私の戦闘力は53万です』というやつじゃ。」
「いや、あれはスカ○ター使ってないただの自己申告……。」
「うるさい。ともかく! この53万という数字を聞いたときどう思った?」
「そりゃケタ違いにつえぇ、とかそんな感じのことを思ったけどよ。」
「そこ! そこじゃよ! 登場人物と同じことを思えたじゃろう!?」
「あー、あー。それが読者と作中人物の得られる情報が一致ってやつ?」
「まさしく! 言葉として作中人物も受け取るゆえに、読者が共感しやすい状況を作り出すーーーそれこそ、【鑑定】の持つ力ということじゃ!」
「よくわからんが、なんかこいつがやけに興奮してるってことはよく分かった。」
「で、なんでそんなに興奮してんだよ。」
「うむ。【鑑定】スキルの在り方について色々と言いたいことがあるからじゃ。」
「なにそれ。さっきまで熱く語ってたじゃねえか。」
「まだまだ語り足りんーーーそう、先程お主が言っておった鑑定で無双チートというやつじゃ。」
「それがなにか?」
「我に言わせればあれは邪道じゃ。」
「そうなのか? よく見る設定だぞ?」
「よく見る設定、になるほどそのイメージが浸透してるのが問題なのじゃ。
そもそも、鑑定での無双とはどんなパターンがある?」
「んー、なんか曰く付きの強い武器を探し当てたり、相手の魔法を解析したりとか、嘘を見破ったり罠にかけられるのを予め防いだりとか? なんか思ってたより無双って感じしないな……?」
「我がパッと思いつくのは鑑定で薬草探し、強い奴隷の発掘、および人材の最適化、宝くじ無双、鑑定内容の鑑定から世界の真実にたどり着くパターン、エトセトラエトセトラ……。」
「恨み辛みがすごい。とはいえ、別にこう、邪道ってほど変なのはそうないと思うけどな。」
「別に全部が全部だめと言うわけではない。我が嫌なのはな、鑑定結果を利用するんではなくて、鑑定どおりに動かされることなんじゃよ。」
「は? まーた変なこと言い出したな……。」
「『鑑定で強いのが分かってたから仲間にした。』『鑑定で強い武器見つかったからこの武器使おう。』『鑑定で嘘だって分かったからドヤ顔で煽ろう』。
行動原理が鑑定になってしまってはな、主人公の行動が陳腐になるんじゃよ。まだ『可愛いからこの奴隷買っちゃお』みたいな主人公の方が好感が持てる。」
「分からん。別にいいと思うけどなぁ。」
「まあ、我の個人的主張であるのは事実。でもこうは思わんか。何が出るのか分かってるガチャを引くのは苦痛。」
「結末が分かりきってる物語はつまらない、と言いたいわけ?」
「まあ、そんな感じじゃ。」
「ふーん、神様は【鑑定】あんまり好きじゃないんだ。あんたけ語っておいて。」
「いや、むしろ鑑定そのものは大好きじゃ。なろうにおける最大の発明と言ってもいい。」
「おい。」
「自然な流れで世界観についての言及ができる上、お手軽便利ツールとしての活用も可能。個人名や種族名に自然な形でアクセスできるので話を回すのが一手も二手も早くなる。知らない知識について誰かに聞くという手段を用いずに知れるので会話ではなく主人公の思考という形で処理ができるのも楽じゃし、なによりも彼我の戦力差をスムーズに表せるのがとてもよい。」
「また長文だし……。なんで今回はこんなに饒舌なんだ。」
「まさしく【鑑定】はなろうにおける戦闘描写を一新したと言える多大な発明なんじゃぞ?」
「はいはい。分かった分かった。」
「そろそろまとめと行きたいところじゃが……」
「神様が好き勝手喋りすぎて話がとっ散らかったままなんだが。」
「まあ、とにかく【鑑定】はスゴイということじゃ。」
「雑ぅーー!」
「具体的に言えば、話の進行をスムーズにできる。」
「え、それだけ? こんだけのやり取りたった13文字に収まんの!?」
「勿論、細々とした効果はある。戦闘力の比較であったり、情報面でのアドバンテージであったりと。
じゃがな、本来これらは時間さえかければできることなんじゃよ。」
「そうか?」
「戦闘も実際にやってみれば実力差など判明するし、情報なども誰かに聞く等して手に入れられるはずじゃ。
【鑑定】の本質は、この調査・検証の時間を無くすことに過ぎん。」
「チート系の鑑定だと、鑑定がなければわからないことがあったりするけど。」
「だから我はそういう鑑定は嫌いなんじゃ。よいか、物語において主役は主人公であるべきなんじゃ。スキルが主役になってはならん。主人公をそこらのモブと入れ替えても成立する物語など下の下じゃ。『でもそれって主人公がすごいんじゃなくてスキルがすごいだけだよね?』という状態を作り出してはならんのじゃ。その点【鑑定】は主人公の選択に密接に関わってくる以上取り扱いに注意せんと、簡単に主人公がそこにいる必要がなくなってしまうのだから……」
「うを! また、急に暴走し始めた! と、とりあえず、今日はこの辺で! ではまた!」
「ふーっ! ふーっ!」
「ステイ、ステイ。おーけー、落ち着いたか?」
「ーーーふぅ、なんとか。」
「なんで鑑定についてはこんな饒舌に……。」
「まあ我的にも黒歴史みたいなものじゃし。」
「なにがあったんだし。」
「まあ、そのことについてはよい。それよりも、文字に起こして改めて思ったが文章書き殴りすぎでは? 読ませる気あるんかの、これ。」
「書いてるのお前だろ……。」
「我としては、正直まだ書き足りないくらいなんじゃがの。」
「おいおい、次回は【アイテムボックス】編だろ?」
「そうじゃが……この話が続くならまたどこかで第二回【鑑定】編やりたいの。」
「もうネタないだろ……?」
「まあ、似たようなこと書くだけにはなるかもしれんが……。だからこそじゃな。今日の話を読んで鑑定に関してこういった話は良かったとか、あの話はダメだったとか、そういう意見を募集したい。」
「え、それっていいのか? その、なろう的に。」
「バレなきゃ問題ないじゃろ。どうせこんな話にブクマや評価などつかん。つけようと思っても、つけるんじゃあないぞ。むしろ意見の一つでもくれた方が我的には嬉しい。」
「おいおい。」