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悪役令嬢のアトリエ  作者: とうふ
9/30

月の王子様3

今回はシャロン視点以外が入ります


 「ようは舐められているんだ」


 就寝準備を終えた後、1人自室で王子について考える。

 ベッドの上で胡座なんてかいてる姿をメイド長に見られたらまたぶっ倒れるだろうが、1人な時くらい別にいいよね。いいよ。


 そんなことより今はアレクの方だ。

 ああいう断り方はこの先一生OKが出ることなんてない。そういうの詳しいからな。

 しかしだからこそだ!

 最初の1回目で「あ、コイツチョロ甘〜!」などと思われると向こうはこの先一生つけ上がってくる。

 

(大体礼儀正しいのと、業務的なのは違う。

適当にあしらわれて嬉しいわけがない!)


 しかしまずは明日以降アレクに会いに行かなくてはいけない、というのが難関だ。

 仮にも王子様相手にそうそうアポイントは取れないだろう。

 かといって相手が会いにくるのを待っていたら、それこそいつになってしまうのか…。


 (やっぱアレしかないな。

 となると明日は早起きしなくっちゃいけないけど…起きれる自信なさすぎる…むしろ徹夜した方が早いかも)


 よっしゃ、徹夜するか!

 そう結論つけるやベッドから飛び出し、折角だからと夜の風景のスケッチを始めることにする。

 完全に前世の死に方に直結コースの思考回路だったが、咎める人は誰もいない。

 大きな窓の外は月明かりしかなく真っ暗だ。

 それでも前世のような街灯が無い分、星の輝きがはっきりと見えるから絵にするのは悪くない。

 火の灯ったカンテラを手繰り寄せて、床にぺたりと座り込む。

 寝静まったお屋敷の中で私が筆を走らせる音だけが、夜明けまで鳴り続けていった。


 




 ところも日付も変わって、ここは王城にある一室。

 アレクシス王子は今日も優雅に小鳥の鳴き声で目を覚ました。

 

 「おはようございます。今朝はアールグレイに致しました」


 専属メイドが慣れた手つきで運んできたモーニングティーを、彼のたおやかな手が持ち上げてその唇へと運ぶ。

 

 「今朝のもいい香りですね」


 褒め言葉を添えればメイドは嬉しそうに頬を緩めた。

 隣では専属執事が本日の日程を読み上げている。

 それらを頭に叩き込んだ後、寝巻きから着替えて髪の毛もしっかり整えていく。

 

 (今日はまずピアノの先生が来てレッスンがあるから、それまで少しだけのんびりできるかな…)


 一通りの準備を終えたアレクシス王子は、自室に用意された座り心地の良いソファに腰かけた。

 こうした時間は執事たちも下がらせて、彼1人だけのもの。

 どうしても常に人がいる状態が続くので、時には息抜きも必要なのだ。

 ふと外へ視線を向ければ、緑豊かな木々に綺麗な赤い小鳥が羽を休めているのが見える。

 可愛らしくて、人によく懐く従順な種だ。

 起きた時にいた他の小鳥達はもう既に飛びたったのか、取り残されてしまったらしい。

 窓の鍵を外してそっと手を近づければ、大人しく小鳥は彼の手にやってくる。


 「ふふ、僕はお前がすきだよ。どうせならみんな…お前のようならいいのにね…あの人もそうならいいのに…」


 節目がちな目と憂いを含んだ表情。

 小鳥を手にとまらせて窓辺に佇む姿は、息を呑むほどに麗しい。

 そうだ、いつだって彼は「王子」なのだ。


 「1人の時もとかそれ疲れないの…?」

 

 「まさか、常に完璧であることが王子として…え?」


 その瞬間、世界がガラッと音を立てて崩れる。

 ものすごい勢いで横を向くと、目の前に真っ赤な瞳があった。

 癖のある黒髪に猫のような釣り上がり気味な大きな瞳の少女が至近距離にいる。

 アレクシスの婚約者となったシャロン・アルドリッチ、その人だ。


 「な、なんでいる…んですか!?!?!?」

 

 「ボゲピラポッポーヴァアアギャァパッポン!!!!!!!!」


 王子と小鳥の悲鳴が同時に火を吹く。

 余談だがこの鳥は鳴き声が非常に奇怪で喧しいと有名なので、飼育はお勧めしない。

「チュチュッン」

「ピピピ」

「チチチッ」

「ホゲェェェエエ!!」

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