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悪役令嬢のアトリエ  作者: とうふ
6/30

真っ白なキャンバス5

庶民の考える限界の王族


 ガタガタと、慣れない馬車に揺られながら窓の外を覗き見る。

 とても立派で遊園地でしか見たことのないようなお城が遠くからもはっきりとわかった。


 そんな景色を見てシャロンは、あんなところに毎日住んでるなんて肩こりそうだな…と絶好調にメルヘンさの欠片もないことを考えていた。


 今日はいよいよアレクシス王子と直接顔を合わせる日だ。


 さて、このアレクシス王子というのがどういう人かという話だが、まずシャロンとしての情報から整理しようか。

 アレクシス・ティアニス。年齢はシャロンと同じ12歳。現国王と正妃様との間に生まれた正真正銘のこの国の後継者。

 なのだが正確にいうと彼は第二王子にあたる。ではなぜ彼が次期国王とされているのかというと、これは第一王子が魔法を生まれつき持たない病気を抱えていたことが起因する。

 のだが、その辺は今回は割合しよう。


 ではゲームのアレクシス王子がどういう人かというと、ジャンルは所謂俺様系。

 「俺以外の男を見る余裕なんて、無くしてあげようか」みたいな爆笑もののセリフをサラリと吐くメインヒーローだ。

 因みに前世の姉の最推しが彼なので、他キャラよりは慣れ親しんでいるが、それ以上のことは特に分からない。


 とはいえ、あれは16歳のアレクシス王子の話で、今現在どうかまでは実際に会ってみるまではなんとも言えない。

 現在は野畑を駆け回る短パン小僧説もワンチャンある。


 そんなことを考えている間に、馬車はそびえ立つ大きな門を潜り終えお城へ到着した。

 迷路のような廊下を、お迎えに来た召使さんに案内されてたどり着いたのは王様の謁見の間。

 流石に背筋がぴんと張り詰めてしまう。

 偉い人の部屋なんてものは、校長室以外入ったこともない。一気に階級が上がりすぎてて、段階を踏ませてほしい。


 大仰な扉が開かれて、視線を真っ直ぐ向ければ、そこには美しい装飾の玉座に腰掛ける現国王のお姿があった。


 「遠いところよくぞ参られたアルドリッチ公爵」


 「国王陛下、本日はお招きくださりありがとうございます」


 形式的な挨拶が父と王の間で交わされる。

 次はシャロンが挨拶をする番だ。

 散々教師から叩き込まれたカーツィーを国王陛下に披露し、顔を上げる。

 もちろん少女らしい微笑みもセットだ。


 「お目にかかれて光栄です陛下。

 シャロン・アルドリッチと申します」


 「初めましてシャロン令嬢。君の話しはいつも父上から聞いているよ。話よりずっと可愛らしいお嬢さんだ」


 さすが、乙女ゲームの攻略対象を息子に持つ男。口から砂糖みたいな言葉がスラスラ出てくる。

 あと親父はなんで国王相手に人の惚気話をしているんだ。

 正直ドン引きだったシャロンは、大和撫子に習って3歩ほど父親から離れた。


 「さて、私などより君の婚約者になる我が息子を紹介しなくてはね。アレクシス、来なさい」


 国王陛下の合図とともに軽い足音が舞い降りる。


 「はい、お呼びでしょうか陛下」


 とても12歳とは思えぬしっかりとした口ぶりの少年は、まさしく姿絵のとおりの麗しさだった。

 金糸の髪も、満月を思わせる瞳も、なんなら実物の方がずっと美しい。

 こんなにも端正な作りの人間がいるのかとついつい現実逃避をしてしまった。


 「こちらが婚約者のシャロン・アルドリッチご令嬢だ。お前もご挨拶なさい」


 国王に促され、大きな瞳がこちらを見て微笑む。

 それだけであたり一面花畑にでもなったのかと錯覚してしまうほどの破壊力。

 流石は乙女ゲームの攻略対象だ。


 「はじめまして、シャロン様。僕がアレクシス・ティアニスです。貴方の婚約者となりましたので、どうぞよろしくお願いします」


 そのまま流れるように跪いた彼が、シャロンの手をそっと取り軽い口づけを落とす。


 いやもう、お伽話の一場面すぎて、ここまできたらかえってワザとらしい。凄すぎて子供らしくなさすぎる。

 この年で絶対肩とかゴリゴリに硬いだろう。  

 オススメの整体とか教えるべきだろうか。


 そんな表向きは幼い2人のやりとりを満足げに眺めていた国王が続いて口を開く。


 「アレクシス、私はこれからアルドリッチ侯爵と話があるのでな、シャロン令嬢にこの城を案内して差し上げなさい」


 その言葉にシャロンはギョッとした。

 いわゆる後は若いもの同士で、というやつだが丸投げが早すぎやしないか。会ってまだ1分ですけども?


 「かしこまりました。ではシャロン様、お手をどうぞ」


 ところがアレクの方は心得だとばかりに自然な所作でエスコートを申し出た。


 王子様ってのはこの年でここまで完璧なものなのか!?


 圧倒されるシャロンを他所に、ほっそりとした白い手が差し出される。

 ここでこの手をはたき落すとかそういう選択肢はシャロンにはない。興味はあるけど。

 だがこれは、いきなり2人きりでいろいろな話ができるチャンスだ。

 ならば最大限利用して、記憶の手がかりを掴むしかないだろう。

 気を取り直して、軽く添える程度にシャロンは手のひらを重ね合わせる。


 「ええ、どうぞよろしくお願い致します、アレクシス様」


 かくして、なんとしても記憶を取り戻すという硬い決意を秘めたシャロンとアレクシスの王宮デートが幕を開けた。


現在この章までリメイクが終了しております!

次の王子様編もおいおいリメイクしていく予定です!

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