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無彩色の願望  作者: 哀川
第四章 屍の器

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第二十九話 開幕

 夢を見た。


『あなたが好きです。わたしと付き合ってください』


 夢であり、過去でもあった。

 僕の人生のつまらない一欠片。一方的に想いを押し付け、相手の気持ちも確認せずに付き合えと言う彼女の身勝手に、僕は『そう』と返した。

 彼女は泣いた。

 彼女との記録──思い出はとうに時間に埋もれている。掘り返す気はない。その作業には意味がないから。

 しかし、その泣き顔は覚えている。

 暗く沈んだ過去の中で彼女の涙はあまりにも眩しすぎたのだ。


 ×


 何故このタイミングでここまで意味のない回想を夢として映したのかはともかく、僕はクリアな状態で目を覚ました。

 ……教会内は意外と清潔だった。他の廃墟との相対的評価になるのだが、放棄されてからそれ以上汚すことも壊すこともしない努力がたしかに見えた。それはこの場に居ることの痕跡を残すと言うことに他ならないが、あえて痕跡を消すよりも跡は着かないのかもしれない。

 ともかく、こうして身廊脇の長椅子で目を覚ましたわけだが、冷静に考えれば命知らずの行為だったかもしれない。寝てる間に殺されてたらどうしたんだ。取り返しのつかない失敗に終わっていたかもしれないのに。


「そんな失敗、ゴドーもびっくりだろうな」


 しかし、冷静な頭は手に入れた。教祖との戦闘に支障がでることはないだろう。


 証拠に。

 内陣の祭壇に足を組んで座る教祖が居ることに気づいても、僕は焦ることなく冷静でいられた。


「君──」


 教祖は不愉快そうに目を鋭くさせて指を立てる。


「『ゴドーを待ちながら』を言っているのですか?」

「……? ええ、そうですけど」

「ゴドーは存在しません。『より上手く失敗せよ』……それはベケットの言葉だ。アイルランドの作家の」

「あ、そうでしたか」


 だいぶ前にみちるに聞いた話だったから記憶が曖昧だ。ちなみに『ゴドーを待ちながら』も最初は『後藤町ながら』と聞き取って、後藤さんの旅行日記なのかと物語を聞く前まで勘違いしていた。それくらいの教養のなさだ。


「君は教養がないのだな」

「…………自覚はありますが。でも、己の欲望を満たす殺人を良しとするあなたには言われたくないですね」

「ふむ。欲望──か」

「だって、それ以外にないでしょ? 幽霊を解放すれば見逃すだなんて無理な条件を押し付けて、いたぶって、結局は殺す。欲望としか捉えようがない」

「例外はあるが、しかし君がそう捉えたというのならそれでいい。価値観は人の数だけあるのだから」


 例外──そんな僕の見ていない過去を持ち出されたところで、説得力など微塵もない。

 極悪人が法律を守っていれば善良に見える錯覚などない。


「価値観ってのは多数決でしょ。少数意見の尊重だなんて子供じみたこと言わないでくださいよ。少数ってのは、異物として認識されるのが普通なんだ」

「その通り。故に小さな変化に適応できず大ごとに捉えてしまうのだ」

「人殺しに適応しろって方が無理な話だ」

「できているじゃないか。君が」

「…………」

「目を見ればわかる。君は世界に関心がない。その目をした者は皆死んでいった。世界に文句の一つも溢さずに静かに死んだのだ。断言しよう。君も彼らと同じ、周囲の人間が死んでも心が揺らぐことはない。ここの床を生首で埋め尽くしていたとしても、君は先ほどまでのように寝ていたのではないのかね?」

「流石にない」


 過大評価もいいところだ。いや、過大評価という表現がただしいのか分からないけれど。僕だって生首だらけの部屋で睡眠は多分できない。


「……そもそも、勝手を言い過ぎですよ。僕があなたの言う《彼ら》に同じなら、僕はどうして他人の為にここに居るんですか?」

「気の迷いだ」

「は?」


 知性のカケラも含まれない解答に言葉が詰まる。

 この男なら偉人の言葉なり小説の引用──或いは聖書まで持ち出してきそうな雰囲気があったのだが。


「個を確立したままで迷うことなど誰にでもある。朱に交われば赤くなる──否。泥中の蓮が世の常だ。人は個を失うことをもっとも恐れるのだからな。──君に合わせて言うならば『恐る』ではなく『嫌う』か。君は泣けない。信頼に足る友が生命活動を停止したとしても、その友が君を殺そうとしても、絶対に泣けない。

 ならば何故ここにいるのか? 気の迷い。それ以外にないだろう。雄大な景色を見れば心が晴れるように、他人に魅せられれば揺らぐこともある。それだけだが」

「…………」

「しかし、他人に起こる出来事は所詮カメラ越しに映る別世界でしかない。そうだろう?」


 目の一つ(二つだが)を見ただけでよくも知ったようなことが言える。心理学者にでもなったつもりかよ。

 ──その反論を口に出すことはなかった。

 多分、彼の言葉が僕を客観視させる鏡の役割を果たしていたから。この人は僕という人間に合わせて言葉を使っていたのだ。

 よし。分かった。そこまで言うなら認めよう。僕はどうせまだ壊れている。しかし、そんな人間が『気の迷い』を起こした事実は動くことがない。この事実が微量ながら僕を変化させるキッカケの一つとなるのなら、この気持ちを手放すには惜しすぎる。

 東条さんだってそう言うに決まってる。


「言い訳終わり」


 僕は教祖を睨む。

 普段と変わらぬ目つきで、睨む。


「いちいちうるせえよ。殺すなら僕の見えないところでやれ。僕の知らない人達を殺せ。それなら文句はない。死ねとは思うけど、僕があんたを殺したいって思うことはない」

「要不要のベクトルの問題だな。蝋園刀太、道隠みちかくしりんな、想圏、そして風荻吉野。彼らは私に必要な存在だった。それを君達は破壊した。私にとって君の知る者は不要だ。だから破壊する。何故納得できない?」


 この人からしてみれば、僕が話の通じない人間に見えるのだろうか。ここまで狂われてたら、何が正気で何が狂気なのか曖昧になってくる。

 と──僕は未来を視る。

 分裂した視界ではみずきちゃんが居た。どこかの部屋だ。少なくとも病室ではない。彼女は悩むような仕草をした後にはっきりと言った。


『大の大人が正当化の為に口達者になってて気持ち悪い』


 現実に帰る。

 愉快だ。素直にそう思えた。僕が生きてみずきちゃんに今回の話を語る未来も、それに対する彼女の感想も。愉快を極めていた。

 席を立つ。身廊を歩き、教祖の三メートル手前まで歩く。


「僕はあなたと契約ありきの殺し合いがしたくてここに来たんですよ」

「ふん?」

「僕が勝ったら、僕の知る人に手を出すな。未来永劫だ。あなたの意思が、あなたの振り撒いた意思が干渉することを許さない。僕が負けたら器殺しに協力します。あなた達が犯した罪も全て背負う。そして、最終的に器である僕自身も自殺する。『僕の味方の干渉』はなしだ。あなたは何人だろうと連れてきて構わない」

「…………愚か者か? 君は……」

「まあね。まったくフェアな条件じゃない。おまけにこの怪我だ、すぐに傷口が開く。あなたはメリットを得ることができ、僕はデメリットを消すだけ。誰もが思う──藍歌姫乃は救いようのない愚か者だ、と。ならば、そんな僕から逃げる人はもっと愚かに見えるでしょうね。まあ、人を巧みに遣って《教祖》にまでなった人が、まさかこんな愚か者から逃げることはないだろうけど」

「……第三陣営の介入があった場合は?」

「? そんなの無視でいいでしょう。僕とあなた達の殺し合いです。天変地異が起きようとも本質は変わらない」


 教祖は鉄仮面のままで僕を見る。

 もしここで拒否されたなら、後先考えずにこの人を殺すしかない。その行為には未来への絶対的安全が確約されないから、避けるべきではあるのだが……。

 いや、逃げることにして対策機関に通報ってのもいいか。逃げ切れるのかは分からないけど。


「……面白い。実に……否、非常に面白い。君が勝った場合の要求に『君自身への不干渉』が含まれていないが、それはいいのかね?」

「あ。確かにそうですね。そこも一応含んでもらって……、呑むんですか? 契約を」

「うむ。君のような人間の《本気》を見るのは初めてだ。どんな人生を歩めば関心と無関心を両立できると言うのか──それが知りたい。好奇心だよ」

「好奇心……」


 それは今回馴染みのあるワードだ。


「いいんですか? 僕が言うのもなんですけど、好奇心は人を殺すって言いますよ」

「『好奇心は猫をも殺す』だ。どこまで適当なのだ、君は」

「……、……」

「例え死ぬとしてもだ。考えずにはいられないのだよ。君のような無関心の一欠片でもあったなら──器に殺された娘に、器に取り込まれて自殺に巻き込まれた妻に、無関心でいられたのなら、別のわたしが生きていたのではないかとね」

「娘に、妻……」


 なるほど。もしもそれが真実だと言うのなら、たしかに狂うには十分だ。

 同情はしない。だが、共感はできる。『それ』を失う苦痛も、それがもたらす懊悩も、理解よりも深い過去にある。

 過ぎてしまえば所詮は過去。壊れた後では振り返ったところで痛みはしない──が。

 しかし、そんな話を持ち出された以上、僕としては尚のことこの人を否定したい気持ちで溢れてしまう。

 僕が正気であり続けたのなら、あなたみたいな人殺しになっていたかもしれないと?

 ふざけるな。

 そんな可能性を映す鏡など僕が壊してやる。

 僕が一歩詰めると、教祖は「待て」と手を出して静止を促す。


「勝敗はどう決める? 殺し合いとは言うが、実際に殺してしまう訳にはいかない」

「ああ……そうですね。抵抗不可能な程度の傷を負ったら。こんなところでどうです?」

「ふむ。現実的なところではあるが、しかし、君にその線引きができるのか? わたしはここで死ぬ訳にはいかない──故に『引き際』というものが理解できる。君はどうだ? 君に『引き際』が存在するか? 死ぬまで抵抗をやめない可能性すら、わたしには見えてしまうのだが?」

「あります。存在します。問題ないです」


 即答できた。

 それは、彼女が──白瀬九織が言い訳を用意してくれていたから。


「だって、まだ応えてない」

「……そうか」


 分かったような分かっていないような、曖昧な頷きだった。

 教祖は祭壇から立ち上がり、右親指の肉を噛みちぎって、床に血をこぼす。


「どうした。来い」


 ……手順知らないんだよなあ。こんだけ勝手なこと言った後でそんなこと言い出せない。

 とりあえず、僕は教祖から一メートルのところまで近づいた。今なら不意打ちで死ねるし、逆に殺せる可能性だってある。無意味な可能性だ。

 僕はナイフを取り出して右手首を斬り、教祖の血に重ねる。

 と、教祖は唱えた。


「契約をここに。生の象徴は二つ。喜劇と悲劇に刻まれし名の束縛を絶対とする。詐術には蔵、型には珊瑚の鎖。逸脱を赦さぬ結界にてその魂を十七の柱に分断。繋ぎ止めよ。血色の枷に、永遠を」


 教祖は右手を突き出したまま、片目を瞑って僕を見たまま沈黙する。やけに短い詠唱だからまだ続くものだと思っていたのだが、なるほど、これは僕が手順を踏む番ということか。

 えっと、生の象徴が二つって言ってたし、まるまま繰り返す必要もないよな。


「──永遠を」


 唱えるというよりはただの復唱だが、直後に血が霧と化して消えたところを見るに無事契約は成立したのだろう。

 さてと。

 僕は早速教祖に飛びかかった。全く考えなし──と言うわけではない。この男に傷をつけることは自殺を意味する。

 ただ、この男に状況を組み立てるだけの余裕を与えたくない。それに──使い魔を呼び出してもらわなくては。

 ナイフが教祖の首の皮一枚を裂く。

 直後。


「マジか」


 素直に驚いた。驚愕と言うには大袈裟だが、それでも冷や汗を流すには十分だった。

 僕の足元──床が崩壊した。

 目にも追えぬ速さで僕の目の前に現れた使い魔の死体が僕の首の皮一枚を裂く。それまでは、何も驚くことはない。

 問題はその下、地下室に立つ異形だった。

 あまりにも艶かしい女の裸体。桃色の全身にツタが巻き付いており、口元から上部は紫色の花で咲き満ちていた。アレは──芍薬?


「魅せてくれ、少年。君に視えるこの世界、どう破壊する?」


 教祖の目に至極色が着く。

 ──そうだ。こいつ、魔眼を持っていたんだ。だけど井宮の探知には引っ掛からなかった。

 なんで?

 そんなどうでもいい疑問を頭に、僕は落下した。


 ×


 見るからにつまらなそうな男。

 桃春は彼を一瞥してそう決めつけた。殺したところで爽快感も何もないただの敵──


「よおオッサン。バスケで勝敗決めようぜ」


 そう言って投げたボールを、男が受け取ることはなかった。


「俺はオッサンじゃない。二十五だ。火駒番という……して、君達の名は?」

「名乗ったら回れ右してくれんのかよ? 桜内桃春だ。……それと」


 隣にやってきた九織を指差す。


「白瀬九織です。回れ右してください」


 案外ノリいいじゃん。桃春は満足気に笑う。


「するわけがないだろう」


 火駒番が答える。

 やっぱノリ悪いじゃん。桃春は舌打ちをして中指を立てた。


「さっさと殺すか」

「……平和的に解決できるなら、それに越したことはないけどね」

「ま、それって叶わぬ望みだろ?」


 彼は視線に殺意を込めていた。血を流す以外の選択肢など毛頭なかった。


「ボールを受け取らなかった時点であいつは終わってんのよ。殺すオア殺すの一択。そうと決まりゃ善は急げ──」


 言い切るよりも先、背後の出入り口が大きな音を立てて開いた。振り返ってみると、ダンサーの服装をした少女が立っていた。同年代か、少し下か。


「火駒番。いつも『誠意』は『愚の象徴』と言ってるだろう? どうしてあんたは殺す相手に名乗るんだい?」

「少女よ。俺達には安全装置が無くなった。『霊を解放すれば見逃す』という親切心はとうにない。そこでどうだろう──君達、自身の手で人生に決着をつけるというのは」

「ダメだよ。少女は自殺してはいけない。『若さ』は『正義』だ。自殺するのは老いてからでいい」

「俺としても君達のような娘を殺すのは胸が傷む。頼むから死んでくれ」

「ねえ、火駒番! 敵にばっか話しかける癖やめなよ! 『孤独』は『弱さ』の現れなんだからさ!」


 派手に壊れた奴が出てきたもんだ──ここまでイカれた奴だとかえって冷静になってしまう。桃春は腕を組み、改めて二人を見る。辛気臭そうな赤髪の男に、意気衝天としたツンツン頭の女。


「なあ、白瀬。あたしがあの女とやっていい? 相性良さそうだから」

「わかった。彼はわたしが引き受ける」


 白瀬九織は至って冷静に返事をした。彼女の過去の時間は既に耳にしている──それは人を変える時間だ。人間関係を持つことへのトラウマですら与えるだろう。痛めつけられたのは体だけではないはずだ。

 しかし、彼女は凛々しく桃春の横に立っている。

 藍歌姫乃と羽澄楊絵の存在が今の彼女を強くする。

 旧友の存在はともかく、姫乃までもが彼女に影響を与えたことに、桃春は驚きを隠せなかった。

 似合わない。だが同時に嬉しくもあった。何故嬉しいのかを考えることはしない。そんなものは別人格の仕事だ。嬉しいと思ったのならそれでいい。そこまでで完結していい。


「なるべく狂気の声は聞かないようにしてくれ」


 九織が狂気を発現させる。

 三人は硬直した。そう──桃春自身も含めた三人だ。一度は目にしたはずの白い化物は、何度だって緊張感を与える。

 完全に狂気の存在感に呑み込まれた火駒番の元まで駆け、狂気は彼の首を掴み、グラウンドへと放り投げた。一方で九織は落ち着いた歩調で外に出ていく。

 そんな様子を「きゃはは」と桃春と少女は笑った。


「さ。あたしらもやるか。あんたダンサーなの? ダンスバトルでもすっか?」

「わたし、ダンスはまるでダメなの。運動神経は良いんだけど、『決められたリズム』で『決められた動き』を取るというのがどうしても性に合わないみたい」

「へー落ち着きないんだ。死ぬ直前も暴れ回んのかな?」

「あんたみたいなオンナも珍しいね。まるで……そう、『自分』は『正義』とでも言わんばかりの態度」

「オッサンを労らないメスガキのあんたこそここ最近じゃ珍しいだろ」


 少女は片眉を上げながらも笑みを作る。そのぎこちなさに対して桃春は純粋で返した。


「前戯は仕舞いだ」


 体育館の一帯を糸が巡る。


「それを言うなら『座興』でしょうが、この『エロ女』」


 少女は歩む。

 その先は桃春の領域だというのに、ゆっくりと、ゆらりゆらりとこちらに向かう。


「『糸』は『重い』よ」

「──!」


 刹那──張り巡らせた糸の全てが落下した。桃春の操作重量を遥かに超えたと感じた。

 素直に驚いたが、視覚から得た情報を逃すことはない。落下する糸こそゆっくりだったのだ。世界の事実に『糸』が『重い』なんてことはない。

 つまり、これは幻術と言霊を掛け合わせた黒の魔術──!


「決められたリズムが無理だなんてよく言えたもんだ……あんたのしていることは、超緻密な魔力操作あっての結果じゃないか」

「嘘はついてナンボでしょ? もしかして怒った? 『似合わず』に『繊細』だね」


 少女が拳を握る。


「わたしのは『熱い』よ」


 彼女の拳が赫くなる。まるで熱した鉄のようだ。彼女が何をしたのかは分析するまでもない。

 当たれば厄介だ。その事実は桃春に対してのみ適応される。世界から見たら彼女の拳など人の温度でしかなく、決して赫くなどないのだ。


「『ふとした時』には既に『遅い』」


 ふとした時には既に遅かった。

 少女はひと蹴りで間合いを詰めてきた。頭部を狙った裏拳が迫り来る──それを、桃春は腕で受けた。

 回避するよりも確実な反撃を狙った動きだった。多少の厄介など百も承知──だったのだが、それは予想外の怪力によって破綻させられる。

 重く、そしてなにより熱い拳に、桃春はステージまで弾き飛ばされた。


「この馬鹿力……!」


 受けた右腕が焼けたように熱い。折れてはいないが、火傷のせいで正確な状態が掴めない。ヒビくらい入っているか……?


「思ったより余裕のない人だね、あんた。『口だけ』じゃないところを見せてよ『エロ女』」


 二つの笑みが交差する。

 そこにははっきりとした明暗があった。

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