6.探検してみよう!②
良い匂いがしていたのは、シルビアから教えてもらった食堂だった。中は、ガヤガヤと賑わっており。中に居る魔族が多いのが分かる。
入口の所で、中を覗いてみる。
中ではミオと同じ様な格好をしている女性や、体格の良い男性など。一見。普通の人族に見えるが、皆頭に角が生えているのだ。
(人間である私が入っても大丈夫なのだろうか……。)
入口付近で、ミオは躊躇っていた。
悩んでいる間も、ミオを横目に魔族がどんどんと食堂に入っていく。
「後少しで、オークの塊肉が無くなるぞー!!」
(オーク? オークって、良くゲームとかにも出てくるあれ?)
気になったので下を向いていた顔を上げると、男性がお皿にのっているお肉を持ちながら叫んでいるのが見えた。
(あれって、昨日食べたお肉じゃないか!!)
ミオは、昨日食べた肉の塊を凄く気に入っていたのだ。
ミオがその光景を見ている間に、お肉をのせた皿はどんどんと減っていく。
(迷っている場合ではないわ!! 今行かなくては、後悔する!!)
そう思った瞬間、ミオは走り出していた。
「後、一皿だよー!!」
「あい! ミオたべましゅ!!」
お肉を取られまいと、小さな体を活かして男性の近くまで近づく。
男性とミオを挟んでいるカウンターが高い為、ミオは必死に跳びはねる。
「おっ!? このお嬢ちゃんが、魔王様の専属侍女か」
「あい! ミオでしゅ!!」
「ハハッ。そんなに跳びはねなくても、ちゃんと渡すぞ? ほらよ。落とすなよ?」
男性はそう言いながら、カウンター内から出てミオにお肉がのった皿を渡してくれた。
「俺は、此処で料理長をしているジーンだ。よろしくな? ミオ」
「あい! ジーンしゃん!」
ジーンはそう言うと、ミオの頭を撫で回す。
ジーンは、他の魔族より貫禄もあり。ミオも嬉しそうに頭を撫でてもらっていた。
「ほれ、ミオ。食べてこい」
「あい! ありあとー。ジーンしゃん」
ジーンにお礼を言うと、ミオは慎重にお肉がのったお皿を運ぶ。その光景を、食堂に居た魔族達は固唾を飲んで見守っていた。
後少しで、テーブルに着くというところでミオは躓いて転けてしまった。
ベシャンッ
持っていたお皿から、お肉が飛んで行く。
(さ、最後のお肉が!!)
「しゃ、しゃん秒ルールでしゅ!!」
ミオは直ぐ様立ち上がり。お肉を拾うと、口に入れようとしていた。
「こら! 落ちたやつだからやめとけ」
ジーンはそう言うと、ミオが持っていたお肉を取り上げた。
ミオは、それを悲しそうな表情で見ている。
「お、おにくぅ~!! うぇぇぇぇぇん!!」
ミオの目からは、ポロポロと涙が溢れ落ちる。
周りに居た魔族やジーンは、ミオが泣いている事に戸惑っていた。
「ミオ。今日はお肉無いが、明日沢山焼いてやるから。な?」
「ほんと~?」
ミオは、目に涙を溜めながらジーンを見る。
「あぁ、明日はもっと美味しいやつが食べれるぞ?」
ジーンの言葉を聞き、ミオの目から流れていた涙は止まり。変わりに、キラキラとした目でジーンを見ていた。
周りに居た魔族達も、ミオが泣き止んだ事に安堵した時だった。
「ミオ!! 泣き声が聞こえたが、どうした!!」
食堂に、魔王であるクラウドが来たのだ。
「クラウドしゃま~!!」
ミオがクラウドの所まで走っていくと、クラウドはミオを抱き上げた。
「何があった? 誰かに泣かされたのか?」
クラウドがそう問いかけながら、食堂に居た魔族達を睨み付ける。
魔族達は、驚愕した様な表情をしていた。
冷酷で、これまでの魔王の中でも最強と言われているクラウドが人族の子供を抱き上げ。心配しているのだ。
「あのね? おにくがね? 落ちちゃって、悲しかったの~」
「肉?」
先ほどまでミオが居た所に目を向けると、ジーンがお肉を持っていた。
「そうだったのか。いきなり泣き声が聞こえて、びっくりしたぞ?」
「ごめんなちゃい」
(心配して、クラウド様来てくれたのか……。)
「あのね! ジーンしゃんが、あちたおいちーおにくを焼いてくれるんだって!」
ミオが嬉しそうにしている様子を見ながら、クラウドは微笑んでいた。
「そうか。じゃぁ、今日の分の肉は私と食べるか」
「おにくたべれりゅの?」
「あぁ、お昼に肉があったぞ? 一緒に食べるか?」
「あい! おにくぅ~!!」
「ブフッ!!」
ミオが嬉しそうに、手を上げ。早く行こうと急かす。その様子を見ながら、クラウドは笑いを堪えるのに必死だった。
(クラウド様って、本当によく笑うな~)
「さて、戻るぞ?」
「あい! ジーンしゃん、ばいばーい!」
「「「(あの魔王様が笑っているだと!?)」」」
ジーンに手を振ると、ジーンは苦笑いしながら振り替えしてくれた。
ミオはクラウドに抱き抱えられながら、食堂を出ていく。
これまでの光景を見ていた魔族達は、クラウドが笑っている事にびっくりしており。気づいた時には、ミオ達は食堂から居なくなっていたのだった。