3.初めてのお仕事
あの後。ぐっすりと眠ったミオは、朝早くに起きてしまった。
案内された部屋は、凄く広かった。一人では勿体ないぐらい豪華だ。
着替えでも済ましておこうと思い、ベッドの上にのっていた仕事着を手に取る。昨日、シルベットが別れ際に渡してくれたのだ。
仕事着は、黒のワンピースに白色のエプロン。エプロンには、フリルもついており。ワンピースはスカートにボリュームがあり可愛い。服はちゃんと子供用のサイズになっていた。
コンコンッ
「ミオ。起きていますか?」
部屋のドアをノックする音が聞こえた後、ドアが開き。シルベットが入ってきた。
「おはようございます。」
「おはよーごじゃいましゅ!」
落ちないように慎重にベッドから降り、少し頭を下げて挨拶をする。
「よく眠れたみたいですね」
「あい!」
「では、今日から魔王様の身の回りのお世話をお願いします。」
「あい! がんばりましゅ!!」
(何をすれば良いんだろうか?)
「では、まず最初に起こしてきてください。部屋は、隣の部屋になります」
(隣だったの!? 魔王様の部屋の隣の部屋に居ても良いんだろうか?)
「さぁ。いってらっしゃい」
そんな事を考えている間に、シルベットに魔王の部屋の前まで連れてこられてしまった。
「起こしてきたら、次は食事ですからね。」っと、言い残しシルベットは何処かに行ってしまった。
ぐぅ~……。
(……お腹空いた。よし! 早く起こして、ご飯だ!)
つま先立ちをしながら、ドアを押し開ける。
魔王の部屋は、ミオが案内された部屋よりも凄く豪華だった。
高そうな置物や、沢山の本。
「……しゅご~い」
驚きのあまり、つい声が出てしまった。
元々。本を読むのが好きなので、こんなに沢山の本を見ると読みたくなってしまうのだ。
(あっ! 早く起こして、ご飯食べに行かないと!!)
ベッドの近くに行くと、魔王様がうつ伏せで寝ていた。
(な、何で、裸で寝ているの!?)
黒の髪の毛がベッドの上に広がり、紅い瞳は閉じている。
一見。女性にも見えるが魔王様の体は、ほどよい筋肉もついており。つい見とれてしまう。
(違う、違う!! 見とれている場合じゃない!)
「まおうしゃま~。起きて~」
魔王様の顔をジーッと見ながら言うが、全然起きる気配はない。
ぐぅ~……きゅるきゅる。
お腹の空きは、限界に達していた。
「むー……。おなかしゅいた~」
(もう、起きない魔王様が悪いんだからね!?)
口を尖らせると、魔王が寝ている寝台に上る。
「まおうしゃま~。起きて~! おなかしゅいた~!!」
ペチペチペチペチ……。
そう言いながら、魔王の頬をペチペチと叩く。
「……んっ。ミオ、何をしている」
(あっ、やっと起きた!!)
まだ寝ぼけているのか、眠そうな目で此方を見ている。
「まおうしゃまが起きないから~。」
「だからと言って、頬を叩くな。」
欠伸をしながら、のそりと起き上がる。
「おはよーごじゃいます! まおうしゃま」
「おはよう。昨日、名前教えたのに呼ばないのか?」
「……クラウドしゃま」
ミオは、魔王の名前を呼ぶ時。凄く見られていたので、恥ずかしそうにしている。ミオが名前を呼ぶと、魔王様……クラウド様は嬉しそうに笑った。
「ま……クラウドしゃま、ご飯なの!」
名前を呼んだだけなのに、嬉しそうにしているクラウドに頬が熱くなる。
誤魔化すように話題を変えると、クラウドは呆れたような顔になった。
「……もしや、お腹空いて頬を叩いてたのか?」
「あい! クラウドしゃま、しゅご~い!」
(何で分かったの!? 心の中でも読めちゃうの!? )
そう思い、キラキラとした目で見る。
「ミオが分かりやす過ぎるのだ。」
クラウドはそう言いながら笑うと、ミオの頭を撫でた。
(そんなに分かりやすいかな? 表情を引き締めないと!)
そう思いながら、ミオは頬をむにむにする。
「……ミオ、先に行ってなさい。」
「……? クラウドしゃまと一緒にいくぅ~」
(ミオちゃんは、侍女だからね! 先に行くわけにはいかないのだ!)
「そうか。では、外に出ていなさい」
「なんで~?」
「今から着替えるが、ここにいるのかい? それとも、手伝ってくれるのか?」
疑問に思い。クラウドを見ると、ニヤリと笑いながらそんな事を言われた。
「おしょとでまってる!!」
そう言い残すと、逃げるように部屋を後にする。
後ろでは、クラウドがクスクスと楽しそうに笑っているのが聞こえた。
(今。私は子供の姿だけれど、クラウド様が裸になるんでしょ!? 恥ずかしすぎる!!クラウド様も楽しそうに笑って!私をからかっているんだ!)
暫くすると、部屋のドアが開きクラウドが出てきた。
「待たせたな、ミオ。行こうか」
そう言うと、ミオをヒョイっと抱き上げる。
「クラウドしゃま、歩くのー!」
「歩いても良いが、良いのか? 歩くのが、遅くなりご飯が遅くなってしまうぞ?」
確かに。大人と子供の歩幅は違うから、ご飯が遅くなってしまう……。
お腹は、先程から凄い音で鳴っているのだ。
「よち! クラウドしゃま、こにょまま行くのー!」
「クククッ。そうか、では急がなければな」
ミオは、クラウドに抱き抱えられながら向かう事にしたのだった。