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今日から学校と仕事、始まります。②莞

そんな可能性を入れろって?

作者: 孤独

ビーーーーッ


テープは貼られる。集合ポストにドアポスト。大家さん、管理者さんも楽じゃない。


「まったく……家賃払えっつーの」


そんなお部屋に荷物が届く。部屋の前で作業している大家さんに声をかける。


「あり?ここに曽根さんって人、いないんですか?大家さんですよね?」


つい先日まで柄の悪い人が住んでいた。


「あー。曽根くんの事かい?悪いんだけど、出てってもらったんだよ」


詳しい話を聞く気はない。

電気やガスのメーターがピタリと止まり、集合ポストには溜まりに溜まったチラシの山。言っちゃあなんだが、そーいう人を抱えるアパートなのは分かる。


「荷物どーしましょ?転居先とか分かりますか?近ければそっちに行きますけど」

「いんや。悪いけど、送った人に返してくれないか?ここにはもういないからさ」

「ですね……了解っす」


転居の行き違いもあれば、知らないふりして事情を察してやるのも仕事である。

送料と差出人が可哀想だが、まぁしゃあない。

その荷物は今日中に、差し出された方の元へ戻るようになった。


◇         ◇


プルルルルルル


翌朝、電話が鳴る。それは間違いなく、待っていたと言えるコール。


『なんで荷物を返してるんだよ!!俺は住んでるんだぞ!!』

「ですから、管理人さんに確認とりましたし。ドアポストも集合ポストも、テープ貼られて、電気のメーターとか止められてましたでしょ?」


住民が転居してくる前に荷物がやってきてしまう事も、珍しい事ではない。契約をしていても、引っ越し作業が間に合わないなどの理由だ。

配達員は現地に行くが、メーターや集合ポスト、管理人さんに確認をする。また、電話をしてみるといった手も使うわけだが、繋がらない事もある。確認がとれない場合は、荷物を何日か保管して様子をみるか。あるいは、不在票を入れて再配依頼をしてもらうという感じだ。

通常ならそうであるのだが、そんな可能性を入れろってレベルの事がある。

言い分は分からないでもないが、じゃあそのために、周りがどれだけ大変な思いをしているか感じて欲しい。


『俺は住んでるんだよ!!俺がいつアパートから出ると言った!?確認しに来たのか!?おい!!』


そりゃそうだ。だが、誰だって普通。そんな事を直接確認しているわけがない。それを知っているだろう。

電話の相手に、別の意味で頭を抱える。


「確かにご本人様と確認はしておりませんが、管理人さんから住んでいませんと確認がとれておりまして」

『管理人がいつ!俺の許可なくそんな事言ったんだよ!?』

「許可もなにも、私は内情詳しくないですけど。賃貸アパートですよね?管理会社がお住まいの方をチェックしているものですよ?いないと言われたら、返しますよ」


これからご入居される方を把握していない場合もあるが、退室された方については反応よく、ポストやドアを締めてくれている。これで配達員や電気、ガス、水道のライフラインを支える方々も、住んでいるか住んでいないか分かる。


『俺の家に俺の荷物なんだぞ!!なに勝手な事してんだ!?』

「家は大家さんのものですし、荷物は差し出された方の物ですよ。あなたの物は一切ありません」

『!!さっきからテメェよ!口応えしてんじゃねぇよ!』

「これ以上、長引いたら警察に相談しますよ?もう荷物を返したんで、またちゃんとした住所に送ってもらうよう言ってください。送料は知りませんけど」

『覚えてろよ!テメェ!!パパに言いつけてやるからな!俺のパパは』

「またのご利用お願いします」


ガチャッ


「ま、こんなもんでしょ」


適度に処理を終わらせる管理者であり、上司のかがみ

誰がどうこう言ったって、その処理は正当であるという一点張りしかない。確かに電気、水道、ガスを止められても、住んでいられる……そーいう人間がいた時代の方がまだまだ長いのだから。

分からなくはない。

そんな99.9%を外した異常事態に対応できないのはオカシイ。ただ、100%を目指せば目指すほど、ムダとコストは嵩むもの。


「あーっ!森橋くん、決着ついたから安心して」

「あ、ありがとうございます!?さねさん、ありがとうございます!!」


喧嘩腰の電話相手とのやり取りは大変なものだ。まだこちらのミスなら、心の中は反省一色で済むのだが。どーいう理由でそーなのか?という難題は、いつもキツイ。マニュアルなんてないからだ。


「じゃ、仕事をしようか」

「ちょっと待てよ、さね……」

「はい?なんですか、山口部長……」


人間関係が図鑑のように全て載っている事はあるだろうか?


「なんでさっきの電話で、お前。”山口部長”って名乗ってんだ、コラ……?」

「いやーっ、こーいう案件は上司の中でも上司の名で話した方が、すぐ済むじゃないですか。嫌いとかじゃないですから」



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