第2話 二度目の失敗
会議が終わるやいなや両手で前を押さえて会議室を飛び出した。
お察しの通りオシッコが漏れそうなのだ。
人目?そんなの気にしてる場合じゃない。
このままだとあの時みたいに絶対漏れる。
こんな格好で走るのは漏らすより全然マシだ。
この前は電車の中しかも深夜だったから知合いとかは多分いなかったと思うけど社内は絶対ダメだ。
こんな所でおもらしなんてしたら本当に全てが終わっちゃう。
前を押さえた情け無い格好で廊下を全力で疾走する私。
そんな私に驚いた顔だけですれ違う上司後輩他の部署の人間。
恥ずかしい、けど漏れるよりマシ。
間に合って!
「っ!!」
一瞬何が起こったかわからなかった。
エレベーターホール。
トイレまであと少しの場所。
まるで雨の日のコンビニの床だった。
踏み込んだ足と共に身体が宙に舞う。
気がつけば私は仰向けで倒れていた。
「ちょっ、大丈夫!?」
駆け寄ってくるどこかの部署の人間。
モップを持った清掃員が遠くの方でバツ悪そうに立っているのが見えた。
あぁそうか、掃除してたから床が濡れて生暖かいんだ。
すごくお尻の下が生暖かい。
「え……オシッコもらしてない?」
「げ、マジだ漏らしてる」
「嘘、おもらし?」
ま、まさか……私
がばって起き上がると、お尻に温かい水たまりを作りながらベージュパンツの股間部分からオシッコがちょろちょろと漏れ出しながら染みを作っていた。
「ちが、違うの」
「やべえ、ガチおもらしだ」
ひとりがスマホで撮影を始めると他の人間もスマホを取り出す。
一斉に鳴るピッという電子音。
ピッ
ピピッ
ピピピッ
「ちょ、撮らないでっ!」
私は自分のおもらしを隠しながら手を振るが電子音は鳴りやまない。
「やめて!ダメ撮らないで!撮らないでよぉ!!!」
涙で周囲の風景が滲み前が霞む、
見えない。
電子音だけが大きく聞こえる。
ピピピピピピピピピピピピ
「……っ!?」
目を開けば見慣れた天井。
自分の部屋。
スマホが起床のアラーム音を鳴らしていた。
「夢だった……?」
心臓がバクバクと鳴っている。
とりあえず耳元のスマホのアラーム音を消す。
酷い悪夢だった。
身体が汗だくだ。
特にすごく下半身が冷たい。
……ちょっと待って
下半身が冷たい?
私は恐る恐る自分の手をお尻の下に伸ばす。
「……え」
手のひらにぐっしょりと濡れた感触。
「……まさか……そんな」
上半身を起こし勢いよく布団をめくり愕然とした。
私の下半身はぐっしょりと濡れお尻の下に大きな地図を作っていたのだ。
「……う、嘘」
嘘なわけがない。
もはや冷たくなった下半身からは物凄いオシッコの匂いがしていた。
昨晩は確かにオシッコを漏らして興奮していた。
しかし、今そんな気持ちは一切ない。
あるのは絶望に似た気持ち。
「おねしょしちゃったの……この年で?」
頭の中がぐるぐるする。
今起こっている事がまるで夢でも見ている様に理解できない。
しかし、この匂いも濡れた感触も現実だ。
「と、とにかく片づけないと」
そう、口に出して身体を動かす。
朝からオネショの後片付けをするって、これ程気分が落ちること無い。
誰かに慰めてもらいたくなる。
でも、そんな相手なんていない。
片づけながら自然と涙が出てきた。
ネットで調べながらなんとかオネショの後片付けと大量に増えた汚れ物の洗濯が終わる頃には時刻は昼過ぎになっていた。
泣く程に辛かったのにお腹は普通に空いていた。
冷蔵庫を開けるがピーマンと納豆くらいしかなかった。
お米も切らしていた。
「買いに行くしかないか……」
メイクはいつもと変えてナチュラルメイク、髪の毛は軽く結ぶ、適当なデニムを履き、上はブラウス着てカーディガンを羽織ると布片手に玄関へ。
ふと玄関にある姿見を見て、もう一度自室に戻り帽子を被る。
なんとなく顔を隠したかった。
そして車の鍵を手に取ると玄関扉を開け外へと出た。
外を歩きたくなかった。




