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第1章 この町と始まり
その町では18人の人間が消えた。
マスコミが大きく取り上げた。
警察は触発され、大規模で捜査した。
手掛かりは何もでなかった。
そして、諦めた。
継続はしているらしい。
10年前の話だ。
もう誰も知らない。
だが、私は真相を知りたい。
この町に引っ越して2年になる。
今までに調べられた内容はこんな感じだ。
この町は、都市の中心部から少し離れていた。
山を切り開いて出来た新興住宅地。
そこからこの町は始まった。
高速道路、新幹線の駅がある。
企業の工場がこの町のまた更に奥に造られた。
それでこの町は活気付いた。
ある程度は。
今は何処にでもある田舎町。
目立ったものはない。城があるとか、名産品があるとか。
この町があるのは企業あってだ、
なんとか捻り出して、強いてゆうなれば。
この町と工場地帯の間にある山だ。
なんでも古事記に出てくる山だそうだ。
ヤマトタケルが何かしらした場所だそうだ。
興味が無かったので調べていない。
とにかく、何もない町だ。
あの事件は短い期間で起きた。
二ヶ月だ。
どんどん消えた、当時を知る住人が言っていた。
最初に消えたのは、小学六年生の男児だ。
鍵っ子で、彼には弟がいた。
弟の面倒をよくみる、穏やかな優しい少年。
当日も弟と学校から帰宅後、母親の作り置きの夕飯を弟と食べ、入浴する。入浴中に母親が帰宅。
三人で当時人気だったバラエティ番組を見る。
弟が寝てしまい母親がベッドに寝かせに行く。
一緒に寝ると着いてきたが、やっぱりアイスが食べたいと部屋から出る。母親はアイスがもう無い事を言う為すぐに後追い部屋から出る。
が、もうそこには少年はいなかった。
冷蔵庫を見た形跡も他の部屋にもいなかった。
まさかアイスを買いに外に出たのかと思い、玄関に行くが鍵も閉まっているし靴もある。
少しして父親が帰宅。警察に連絡を入れる。
その少年の母親が話した内容。
後を追って部屋から出たのは少年が出た後すぐ。
時間にすると2、3秒。
その後家中を探している最中、耳鳴りと気怠さを感じた。これは不安から精神的なものかも。
父親の話。
帰宅すると妻が放心状態で玄関にいた。
どうした、と聞くと我に返ったように今までの経緯を話し出した。
妻の話し方が冗談には聞こえず直ぐに警察に連絡。
その後自身も家の中をくまなく探す。
耳鳴りがきつかったのを覚えている。
マスコミは神隠しだと報道しはじめた。
母親が話している事が本当だと正にその神隠しだ。僅か数秒の間で、密室で、なんの痕跡も無く消える。
気になるのは、探している最中二人が耳鳴りがしたと言った事。
当時の二人は精神状態が正常ではなかったのか?
我が子が消えた、なんて事が起こればパニックになるだろう。
警察もこの両親を調べに調べ上げただろう。
私も調べたが、何処にでもある幸せな一般的な家族だ。何か黒い部分が無いかと粗探ししたが見つからなかった。
ではこの家族になんらかの恨みを持つものは?
探してみよう。
そこから手掛かりが見つかるかもしれない。
それが共通点を見出すかもしれない。
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