第五章 取り残された村と黒の騎士団
「あれーシュネルは顔馴染みの僕より、君の背に隠してる子の方が大切なの? ちょっと心外」
うっせぇわ。
イラッとする喋り方にムカムカとしてくる。
ブルル・・・シュネルは鼻先を男に向かって振り回す、シュネルの鼻水が飛んでるらしく男の顔は焦りに変わる。
その攻撃、確かに嫌かもしれないね。
「ちょ、ちょっと止めてよ。その子には何もしないって。僕、まだ命が惜しいしね。ちょっとお話したいなーと思っただけだよ」
焦ってる声もウザい。
まぁ、ようするに彼自身がウザいんだけどね。
メリダを敬えない奴は、私に敵認識されるんだよ。
早くどっか行けばいいのに。
もう、いっそうの事、これ以上近づけない様に盾を張ってやろうかな。
でも、ジェイさんが居ない間にあまり目立つ行動をするのもなぁ・・・。
この人、シュネルを知ってるみたいだけど、どうしてなのかな?
シュネルはレプリコートで借りた馬だよね。
不意に湧いた疑問に首を傾げていると、勢いよく走ってくる足音が聞こえた。
「キャスパー! 貴様何をしている!」
激しい怒りの籠もったジェイさんの声。
「うわっ、やべっ」
焦りを声に孕ませた茶髪男は一瞬にして顔色を失った。
この人、キャスパーって名前なんだ。
「何をしてると聞いている!」
すぐ側までやってきたジェイさんが、もう一度怒鳴り声を上げた。
「な、なんでもありません。ぼ、僕用事を思い出したので戻ります」
奔馬のような勢いで逃げていったキャスパー。
そんな勢いよく逃げるなら、初めからちょっかいをかけに来なきゃいいのにね。
「ヴィオ、大丈夫か?」
先程の怒鳴り声とは打って変わって、優しく話しかけてくれたジェイさん。
シュネルは、そろりと後ろに下がって私を見えるようにしてくれた。
本当、賢い馬だよね。
シュネル良い子。
「うん。シュネルが隠してくれたから大丈夫」
一言もあの人と話さなくて済んだのは、シュネルのおかげだ。
後で、彼女の大好きな角砂糖を差し入れようと思う。
「そうか。シュネルよくやった」
ホッとした顔になったジェイさんは、シュネルの鬣を撫でた。
「あの人、何者ですか? シュネルの事も前から知ってたみたいだったし」
「あれは気にしなくていい。ヴィオに何かしたらただではおかない」
優しく笑って私の頭を撫でたジェイさん、誤魔化された気がするけど、言いたくないなら仕方ないね。
私にも秘密があるように、彼にもあるんだろう。
感じた違和感の謎を解くのは、きっとまだ早い。




