第五章 取り残された村と黒の騎士団
真っ直ぐに延びる街道をひた走る。
流れる景色は次第に様相を変えていく。
日が昇り周囲が明るくなっていくと、小麦色に輝く麦畑や、青々と実る葉野菜の畑が街道の両脇に現れた。
畑仕事をする住人達や、街道を行き交う人々もチラホラと現れ始める。
動きを取り取り戻した世界、私達は孤立した存在からその一部へと変貌を告げた。
あれほど、薄暗い明け方に孤独を感じた心は今はもうない。
太陽が高くなるにつれ、当然の様に気温が上昇していく。
自分のローブとジェイさんのマントに包まれた私も、ジワリと汗をかき始めた。
籠もる熱に体が体温を上げていく。
ぼんやりと意識が霞む。
暑い、このままだと不味いな。
そんな事を考えていると、馬の速度が落ちた。
「ヴィオ、少し休憩を取ろうか?」
「うん」
なんてナイスタイミングだ。
お尻も少し痛くなってきていたし、休憩はありがたい。
「あの先に小川がある。そこならシュネルに水を与える事も出来るし、俺達も少し休もう」
ジェイさんが指差しした先には、ゴツゴツとした岩場を露出した岩場があった。
そのずっと向こうには鬱蒼と茂る大きな森が広がっていた。
暑さでぼんやりしているうちに、さっきまで見ていた田園風景は無くなり、片側を岩山、もう片方は林になっていた。
いつの間にか山間に入っていたらしい。
「気付かなくて悪かった。ヴィオを連れた旅なのだからもっと注意をするべきだった」
小川について、私をシュネルが降ろしてくれたジェイさんが、暑さで真っ赤になった私の顔を見て焦ってる。
「大丈夫だよ。暑さを緩和して、少し休憩すれば元に戻るよ」
肩を竦めリュックを降ろし、ローブを脱いだ。
うわー涼しい。
小川の水面を渡る風が、私の体温を冷ましてくれる。
適当な岩に座って、リュックから水筒を取り出した。
とにかく、水分補給だよ。
「早く村に向かわねばと気持ちが急くばかりに、ヴィオを辛い目に合わせてしまった」
「え、そんな大袈裟な事じゃないよ」
ジェイさん、落ち込み過ぎだから。
ちょっとした脱水症状になりかけただけなのに。
早めに暑いって伝えたら、良かったかな。
反省は次に活かそう。
「とにかく水分補給をして休んでいてくれ。俺はシュネルに水を飲ませて来る」
「うん」
シュネルの綱を引いて小川に向かうジェイさんの背中は、悲壮感を漂わせ落ち込んでる。
いやいや、そこまで大変な事にはなってないからね。




