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第一章 突然の召喚

うちの会社の社長はすっごくいい人で、元彼が会社に来ないようにしてやるから、退職するのは辞めろ、って言ってくれたんだけどね。

まぁ、私の一身上の都合ですよ。

元彼に対しての気持ちが冷めたと言っても、やっぱり色んな思い出のある場所にいるのも辛いものがあるしね。


「皆さん、本当に長い間ありがとうございました」

皆から貰った花束やら贈り物を両手で抱え頭を下げる。

送別会の行われていたお洒落はレストランの店先に、神妙な顔をした会社の皆が立ち並んでた。

高校を卒業してすぐに入社して、五年もの間沢山お世話になったこの会社の人達が私は大好きだ。

「落ち着いたら戻ってこいよ。うちはいつだって歓迎するからな」

私の肩をポンポンと叩いたのは社長。

「・・・はい、ありがとうございます」

社長の優しい言葉に胸が一杯になって、思わず涙ぐむ。

「先輩。これ、私からの餞別です。私だと思って身代わりに大切にしてください。」

萌衣が目を潤ませて差し出したのは、30センチぐらいの黄色いクマ。

有名なテーマパークで、蜂蜜を食べてるあいつだ。

それにしても身代わりって、萌衣。

「ありがと。大切にするね。萌衣、仕事頑張るんだよ」

「・・・っ、は、はい」

萌衣が泣き笑いする。


「じゃあ。帰ります。皆さん、本当にありがとうございました」

泣きそうになるのを我慢してもう一度そう言うと私は会社の皆に背を向け歩き出す。

背中にかけられる沢山の声に、今にも涙が漏れ落ちそうで振り返る事は出来なかったけれど、名残惜しさに貰った餞別を抱きかかえる手が震えた。

自分で決めたサヨナラだというのに胸が苦しくなって、それを気づかせない様に私はしっかりとした足取りで皆に見送られた。


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