第五章 取り残された村と黒の騎士団
新章突入いたします。
今日の依頼をこなし、街へと戻る為に森の小道を駆け抜ける。
鬱蒼と生い茂る木々のせいか、まだ日も暮れていないと言うのに、ここは薄暗い。
茂みを揺らすのは、小動物の類だろう。
早足になるのは、待ち人がいるから。
今までの生活の中で、こんな気持ちを持ったのは、きっと初めてだろうな。
無理だと分かっていても、今の穏やかな生活が続けばと願わずには居られない。
「誰だ!」
突然感じた気配に足を止める。
己に向かってくる殺気はない。
だか、こちらを見る視線を感じた。
鳥の囀りが聞こえ空を見上げれば、よく知る青い小鳥が俺に向って飛んできた。
小鳥は側までやってくると、軽く羽ばたいたあと俺の肩に止まった。
指先を伸ばし喉元をそっと撫でる、反応し小さく囀った小鳥から目を逸らし、気配の揺れる一点へと目を向けた。
「使役獣をご機嫌伺いに使う理由はなんだ?」
低い声でそう言えば、雑草林が揺れ1人の黒い隊服を着込んだ男が姿を現した。
「ジェラール様に姿隠しは相変わらず通用しないですね。お久しぶりです」
「それが分かっていて隠れん坊か、マケイン」
「ちょっとしたお遊びですよ」
「チッ、何のようだ?」
「実はアドラシル村に魔獣が現れ、孤立しております。状況は現在最も最悪かと」
「分かっているなら、騎士団を派遣して殲滅せよ」
「そうしたいのは山々なんですが、東が少々きな臭く。騎士団の多くはそちらに派兵され、こちらにまで手が回らない状態なのです」
「イルダンシアか? あの国も懲りぬな」
「ええ、本当に」
腹立たしげに頷いたマケイン。
「人が足りぬなら、俺直属の近衛を出動させろ。それとギルドへの援助要請を」
「そう言われると思い皆を連れてきました」
俺の言葉にニヤリと口角を上げたマケインは指笛を吹く。
風が揺れ、砂埃が舞い上がる。
次の瞬間には、数十名の黒い隊服を来た男達がマケインの後ろに片膝をついて頭を垂れていた。
「皇太子直属部隊、総勢30名揃い踏みいたしました」
マケインが俺に向って、片膝で跪く。
「ご苦労。皆、心してかかれ」
「「「「「はっ」」」」」
「先陣を切って乗り込め。俺も直ぐに追いつく」
「少しでも状況を把握し、事態の悪化を食い止めて置きましょう」
マケインの言葉が終わると同時に男達は来た時と同じ様にその場から掻き消える。
「ヴィオ、俺は俺に戻らなければならない時が来たのかも知れない」
愛しい彼女の泣き顔が浮かんだ。




