第四章 南の美魔女と魔法の修行
ヴィオとジェイを見守ってくれてありがとうございます。
まだまだ恋愛とは程遠いですが、この先も応援お願いいたします。
子連れのミリアムさんとロリータが帰った後もお客は続いた。
ジンさんの作るパンは、この街の人達にとても人気がある。
トレーに残るパンが殆ど無くなった頃、私を迎えにジェイさんがやって来た。
カランカラン、カウベルが鳴って冒険者姿のジェイさんが店に入ってくる。
「ヴィオ、迎えに来た」
「ジェイさん、おかえりなさい」
使用済みのトングを集める手を止め、彼の方を向いた。
仕事帰りだと言うのに、疲れた顔一つしてないジェイさんの顔は相変わらず美しい。
埃にまみれててもかっこいいんですよ、これが。
「ヴィオちゃん、今日もお疲れ様。もうあがっていいよ」
明日の仕込みをしていたジンさんが厨房から出てくる。
「はい。これを片付けたら帰ります」
持ったトレーには使用済みのトングを見せる。
明日の為に洗っておかなきゃね。
「それは僕がやるよ。ヴィオちゃんはこれを持っておかえり」
ジンさんは優しく微笑んで私の手からトレーを奪うと、紙袋に詰めたパンを持たせてくれた。
「いつもありがとうございます」
「ううん、こちらこそありがとう。ヴィオちゃんのおかげでお客は増えたし、店は前よりもずっと明るくなったよ」
「えへへ」
そう言ってもらえると嬉しいな。
「ヴィオは今日も頑張ったんだな」
照れ臭そうに微笑んだ私の頭を、ポンポンと撫でたジェイさん。
「うん」
胸の奥がくすぐったい様なそんな気持ちになる。
実年齢23歳だけど、ジェイさんに撫でてもらうのは好きだ。
「ジンさん、さようなら」
微笑ましそうに、私とジェイさんのやり取りを見ていたジンさんに向かって手を振る。
「うん、さようなら。また明日も頼むね」
「はーい」
ジンさんに向かって頷いた私の手を、ジェイさんが握り締める。
「帰るか」
「うん」
彼を見上げ微笑んだ。
夕暮れに包まれる大通りを2人並んで歩く。
足早に帰りを急ぐ人々とすれ違いながら、自宅を目指すのはもう何度目だろうか。
こんな穏やかな日々を過ごせる今が、とても大切だと思う。
仮染めの時間なのは分かってる。
だけど、出来るだけ長くこんな時間が続いたらいいのにと願わずにはいられない。
元婚約者の浮気を見て、感情任せに別れてから、色んな事が一気に通り過ぎてきた。
穏やかさとは縁遠い生活だったと思う。
だから、もう少しだけ、このぬるま湯につかっていたいと思ってしまうんだ。




