第一章 突然の召喚
もしかして目の錯覚かも。
自分の手を凝視したままぐっぱぐっぱと動かしてみると、小さい手が動いている。
そう言えば、なんだか視線も心無しか自分の目線が低い気もするし。
もしかして縮んだとか?
いやいや、落ちるまで普通だったよね、私。
「おや、何処か怪我したのかい」
いつまでも自分の手を見つめる私にお婆さんが心配そうな顔をした。
「あ、えっと、怪我はして無さそうなんですけど・・・」
なんて言えば良いのかな。
体が縮んでるんです、なんて唐突に言っても信じて貰えそうに無いよね。
「ならいいが。一先ず色々な事を考えるのは着替えて落ち着いてからにしてはどうだい?」
眉を下げたままの私に気付いたお婆さんは私の小さな手にしわしわの自分の手を優しく重ねてくれた。
その手の温かな温もりに、胸の奥がじわりとした。
お婆さんの手に導かれる様にして噴水から出ると、今まで事の成り行きを見守っていた街の住人らしき男性が、声を掛けてくれた。
年の頃は40ぐらいでガッチリとした強面の冒険者の様な格好をしたおじさんだ。
「噴水に落ちた荷物は俺が拾ってメリダの家まで運んでやるから、嬢ちゃんは先に行って着替えを済ませな」
このままじゃ風邪ひいちまうからよ、と優しく微笑んでくれた。
「えっ・・・あ、でも」
見ず知らずの人の突然の親切に戸惑ってしまう。
だって、海外とかだとそのまま持ち逃げとかあるしね。
ここの住人の顔は東洋人と言うよりは、西洋人に近く、どうしても外国を思い浮かべてしまう。
人の親切を疑ってしまうのは心苦しいんだけど、そこはほら、知らない人は安易に信じちゃ駄目だって小さい頃から教えられてきたしね。
どうしたものかと思案顔になった私を見て、周囲から声が上がった。