第七章 途中下車して、獣人の街へ
おはようございます。
評価、誤字報告ありがとうございます。
「・・・」
どう返せばいいんだろうか。
今の私は、サンタークさんに返す言葉を持っていない。
「お嬢さんの悲しさも寂しさも貴方にしか分からない。けれど、それに固執して思いを見失う事だけはせんでおくれ」
お嬢さんには幸せになる権利があるんじゃからの、と朗らかに微笑んだサンタークさん。
「・・・心に、心に留め置いておきます」
そう返すのが、今の私には精一杯だった。
サンタークさんに目礼して、私は彼に背を向けた。
彼が私に伝えたい事は、嫌ってほど分かってる。
だけど・・・だけど、まだ。
私は私の思いを許すつもりにはなれなかった。
ジェイさんの優しさも温かさも知ってる。
だけど、その反面、私を番と求めていた癖に、放蕩していた彼を心の奥底で、信じ切れない自分が居る。
私に会う前の事だと言われてしまえば、それまでだけど。
ジェイさんが18歳で番を求め召喚を決めたのなら、貫いて欲しかったと思ってしまうのは、私の我が儘なんだろうか。
それに、あちらの都合で突然家族と引き離されたこの憤りを、解消する術を今の私は持ち合わせてはいないんだよ。
アヒームの案内で、磨かれた綺麗な床を進む。
時折擦れ違うのは、アヒームと同じ白い法衣を着た神官達。
その中に私を攫った連中はいない。
不躾な視線を向けてくる連中がいない事に、ホッとしながらも彼らがどうなったのか気になった。
出会い頭に再び攫われるなんて事になっても嫌だしね。
「私を攫った人達は今どうしてるんですか?」
「今回の件でやっと彼らを拘束する事が出来ました。ヴィオ様にはご迷惑をおかけして申し訳ないのですが」
申し訳なさそうに目を伏せたアヒーム。
「今回の件って言う事は、今まで問題を起こしても捕まえる事が出来ずにいたってことですか?」
「はい。身内の恥を晒すようですが、彼らは狡賢く立ち回り、中々尻尾を掴ませなかったのです」
「まぁ・・・悪人によくありがちな事ですね」
悪い奴ほど悪知恵が回るんだよね。
「有りがちですか?」
「はい。悪人ほど逃げるのが上手いんですよね」
「我々も彼らの悪事を晒そうと努力はしてきたのですが、全てが後手に回り・・・」
「今後は、体制を整えて彼らの様な人達が現れないように気をつけてくださいね」
巻き込まれちゃ、もう困るからね。
「はい。もちろん、その様に」
胸元に手を当て誓うような仕草をしたアヒームの瞳は、強い意志が籠もってるように見えた。




