第一章 突然の召喚
本日より新作開始いたします。
「キャー! 落ちるー!」
突然無くなった地面に、響き渡る私の悲鳴。
ついさっきまでいた黒い空間から投げ出された感覚に目をきつく瞑ったまま、何もない場所で空を掴む両手。
23年の短い人生が終わろうとしていた。
どんどん落ちていく体に、これはあの有名なテーマパークのタワーよりもスリリング過ぎるんじゃないかと、冷静に分析してる自分がいる。
いやいや、そんな場合じゃないだろ。
一人ツッコミを心の中でしつつ、成すすべもなく落ちていく自分の体に得も言われぬ恐怖が浮かんだ。
俗に言う走馬灯のような物も次々に浮かんでくる。
お母さん、お兄ちゃん。
思い浮かぶのは愛しい家族の事。
サヨナラも言えないまま、何処かも分からない場所で死ぬなんて嫌だ。
そう思っても、こんな高さから落ちたらひとたまりもないに決まってる。
誰でもいいから助けて! 信仰心なんてないから、神様なんかじゃ無くてもいい。
とにかく誰でもいいから助けてぇー!
他力本願をしながら私は急速落下を続けた。
バッジャーン!
大きな音と水しぶきとともに、硬い底にお尻をしたたかに打ち付ける。
「いったーい」
小さく悲鳴を上げながら目を開けた私が見た光景は信じられない景色。
「はぁ?」
こんな間抜けな感想が漏れたのは仕方が無いと思う。
だって、私の落ちた場所は見知らぬ噴水の中だったんだから。
噴水の中に座りんだまま周囲を見渡せば、中世のヨーロッパを彷彿とさせる街並が見えた。
そして、周囲には住人らしき人々がいて、これまた中世のヨーロッパの様な服装をしていた。
突然現れた私に驚く人々は、目を丸めたり、眉をしかめたりしてこちらを見てる。
「どうして噴水なのよー」
思わず上げた叫び声、更に集まった視線に恥ずかしさがこみ上げた。
待って待って、こんな異世界召喚ある?
森の中だとか、神殿の中だとか、そう言うの定番じゃないだろうか。
ラノベ好きな私から言わせてもらえば、街の中の噴水に落ちるとか無いわ。
「本当、無いわ」
びしょ濡れの右手で額を抑えて項垂れた。
確かに、召喚されて拒んだのは私だけど、これは無いわ。
はぁ、と大きな溜め息をついたその時、私に届いた優しい声は少ししわがれていた。